天国と地獄とミョルニルと
トールがミョルニルを持ったとしても、ヨルムンガンドは楽には倒せない。
ましてや私が今手にしているのはミョルニルでもなんでもないただの金槌であり、しかも相手はヨルムンガンドではない、『天国』である。
私がガンガンと近所迷惑極まりない音を立てているにもかかわらず、この壁はビクともしない。
ダンダン苛々してきた。
苛々しすぎたからか、奇跡が起きた。
もはや苛々の塊としか呼べない私の最後の一撃が、壁を少し崩した。
私が屈むと、そこは私がほぼしゃがんでも通れるほどの穴だった。
私は歓喜した。
涙腺が崩壊しそうになりながらその穴をくぐると、そこは正に『天国』であって『天国』以外の何物でもなかった。
しかし、私の予想は大きく外されていた。
そこはまだ真新しかった。
中央の唯一の階昇手段と思われる螺旋階段は全くキレイだったし、教室も全く荒れていなかった。
・・・・・螺旋階段?
そもそも何故『立ち入り禁止』なんだ?
ぜんぜん危ない気配は無いし。
「・・・・・・・!」
ここで、私の脳裏を突然負の感情が走った。
「まさかこの校舎、『廃校舎』じゃなくてまだ『出来ていない校舎』だったんじゃぁ無いのか!?」
・・・・・・どうしよう。
もしも私の空けた穴でこの学校が崩れてしまったら。
とんでもない。
とその時、
「・・・・・あのーう」
後ろからの突然の声に私は失禁するかと思ったが、
「はいっ!!??」
見よ、この紳士的な返し。
「あっ・・・・・っと・・・・・・」
そこには、散々私の純粋なハートにナイフを突き刺した美少女がいた。