イジメ
「あ、君が今日三年三組に転校してくる西君かい?」
「そうです」
「そうかそうか。でもちょっと待ってて。」
そう言って三年三組担任の野宮先生はくるりと生徒のほうを向く。
「では、終業式終わったんで教室移動してください」
先生、終業式じゃなくて始業式です。
「じゃぁ西君も教室に行こうか。」
先生はくるりと後ろ(廊下側)を向く。
先ほどからこの先生の背中にセロテープで貼られている、
『蹴ってください』
『僕は校長とデキてます』
と書かれた紙を誰が貼ったのかが気になってしょうがない。
三年三組だろうか?
だとしたら絶対三年三組には行きたくない。
そんな事を考えていると、先生が歩いたまま喋りだす。
「しかし君ィ、僕のクラスに入ってくるとは、中々幸せだねぇ」
「・・・・・・・」
先生、背中に悪戯されてますよ。
「思いやりと優しさで満ち溢れていると言うか・・・・・・」
「天使だねぇ、天使!」
淡々と自分のクラスメイトを誉める先生。
色んな意味で涙が出てくる。
すると、先生がいきなり立ち止まった。
「っと、ここだね。ちょっと待ってて」
横を向くと、三年三組とドアに書かれた教室が俺の視界に入ってきた。
・・・・・・何故ドアに?
中から先生の話す声が聞こえた。
「では、転校生を紹介します」
クラスがざわめく。
先生がこっちを向いて挑発に近い手招きをしてくるのがうざったいので中に入ると、
そこには恐るべき物の数々が目に入ってきた。
窓際にある花瓶には枯れ果て折れた小さな木の枝、
教卓の左右にある机の上に置いてあるPS3、PS2、wii。
教卓の上には豆電球がギッシリ詰まった瓶が無数にあり、
なぜか天井にはバスや地下鉄の極普通の吊革がぶら下がっている。
・・・・・・なんだ、これは。
呆然としている俺に先生が囁く。
「ほれ、自己紹介。」
・・・・・忘れていたが、今は頭を整理したい。
「えーと、函館から来ました、仮名を西と申します。」
「男?」
なぜか立ち上がった男子が言う。
「女?」
なぜか立ち上がった女子が言う。
性別も見分けられないのか、ここの人間は。
「えーと、性別ですか?なら男です。」
男子が劇的に崩れ落ちる。
が、一部のキモオタ(見るからに)だけが立っていた。
「男の娘だ!」
・・・・・なんだそりゃ?
「・・・・・・は?」
「好きな物は、ナンデスカ?」
廃墟・・・・・とは、流石に言えないか。
「蜜柑です」
立っていたはずの馬鹿が、一瞬にして崩れ落ちた。
廃墟って言えばよかったかな?