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9話 深淵の囁き
通路の奥、光の届かない深い闇で、美咲は息を整えながら足を進める。冷気が肌を刺し、指先まで冷たさが浸透する。手に抱えた箱の重みが肩に食い込み、鼓動は耳まで響くほど早い。影は床や壁、天井を這い、時折人の形を帯びて揺れ、美咲の動きに反応する。
床や壁のひび割れ、古びた手紙や写真、散乱した道具を一つ一つ確認するたび、影は揺れ、囁きが低く響き渡る。囁きは悲しみ・怒り・恐怖・諦めが混ざり合い、過去の記憶を引きずり出すように耳元で繰り返される。
壁に刻まれた文字や模様は微かに光を放ち、影と共鳴して揺れる。床板の軋む音、砂利や落ち葉の細かな音、微かな風のざわめき…すべてが恐怖を増幅させ、心拍を早める。
美咲は箱を抱え、手紙や写真を一枚ずつ確認しながら、奥へ奥へと進む。写真の中の微笑みは温かく見えるはずなのに、影に覆われ、囁きと絡み合い、生きているかのように見える。
影は揺れ続け、時折人の形を帯びて美咲を追う。囁きは低く、導くように響き、冷気は全身を包む。美咲は震える手で箱を抱き直し、恐怖を押し殺しながら、一歩一歩深淵の核心へ踏み出す。
闇の中で、影と囁き、過去の記憶と冷気が絡み合い、美咲は真実に近づきつつある――。




