8話 闇に潜む影
通路の奥、光の届かない闇の中で美咲は足を止めた。冷気が全身を刺し、息が白く立つ。手に抱えた箱の重みが肩に食い込み、鼓動は耳まで響くように早まる。影は壁や床、天井を伝い、まるで生き物のように美咲の動きに合わせて揺れる。
足元には古びた写真や手紙、忘れ去られた道具が散乱し、懐中電灯の光で照らすたび、影が揺れ動き、囁きが耳元で低く響いた。囁きは悲しみ、怒り、恐怖、そして諦めが入り混じった声となり、過去の記憶を引きずり出す。
壁の刻印や文字は微かに光を放ち、影と共鳴して揺れ続ける。床板の軋む音、砂利や落ち葉の細かい音、微かな風が織りなす空気のざわめきが、恐怖を増幅させる。
美咲は箱を抱えながら、手紙や写真を一枚ずつ確認する。写真の中の笑顔は影に覆われ、まるで囁きと融合して生きているように見える。影は床や壁を這い、時折人の形を帯びて迫り、彼女の心拍をさらに高める。
冷気は肩から指先まで伝わり、息をするたび胸に重くのしかかる。美咲は震える手で箱を抱き直し、恐怖を押し殺しながら奥へ進む。影は揺れ、囁きは低く、しかし導くように変化する。その場所全体が生きているかのように、冷気、影、囁き、過去の記憶が絡み合い、美咲を深い闇の核心へ誘う――。




