4話扉の向こうで
美咲は懐中電灯を握り、古びた扉の前に立った。扉の表面は長年の風雨で削れ、ところどころひび割れが入っている。手を触れると、冷たさが指先を突き抜け、骨まで染み込むように感じられた。
「…本当に、行くんだよね…」
小さく自分に言い聞かせ、息を整える。扉を押すと、軋む音が小屋全体に響き、影が壁や天井を滑るように揺れる。薄暗い空間の奥から、微かなささやきが低く響く。
「…よく来た…でも、ここから先は覚悟がいる…」
美咲は一歩踏み込む。床の軋む音、影の揺れ、空気の冷たさ。すべてが彼女の心を揺さぶる。懐中電灯の光に照らされた壁には、古い文字や模様が浮かび上がり、時折光を反射して微かに震える。
部屋の奥には、箱がひとつ置かれていた。埃にまみれた箱は、かすかに冷気を発し、触れると手先がひんやりと震える。箱を開けると、古い写真や手紙、奇妙な装置がぎっしり詰まっていた。
写真には、過去の子どもたちと、微かに揺れる影が写っている。手紙には孤独と恐怖、助けを求める声、そして諦めの文字が綴られていた。美咲は手紙を読みながら、影の揺れを見つめる。影は微かに光を帯び、まるで彼女の反応を試しているかのようだ。
深呼吸をして、一歩ずつ箱の周囲を回り込む。影は壁に沿って蠢き、低く囁く声が耳元で重なる。美咲は恐怖を感じつつも、好奇心に突き動かされ、手紙と写真を慎重に整理する。
その瞬間、床の奥で小さな軋む音がし、影の一部が形を持ち始める。人の形にも見え、子どもたちの記憶と影が融合しているようだ。美咲の心臓は早鐘のように打ち、全身に冷たい汗が流れる。
「…何が起こるの…?」
囁きはますます低く、しかし明確な言葉を含むようになる。影は揺れながら、彼女を導くように動き、次の手がかりが存在する方向を示すかのようだ。
美咲は手紙と写真を抱え、懐中電灯をさらに奥に向ける。影は微かに光を帯び、通路の奥で待っている。
「…真実を、見せて…」
美咲の決意が声に乗ると、影は静かに揺れ、空気はさらに冷たく、緊張が最高潮に達する。
小屋の奥に広がる闇は、まだ誰も知らない、過去と影の世界だった――。




