表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あんなタイトル  作者: 櫻木サヱ
消えた記憶の扉

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/40

4話扉の向こうで

美咲は懐中電灯を握り、古びた扉の前に立った。扉の表面は長年の風雨で削れ、ところどころひび割れが入っている。手を触れると、冷たさが指先を突き抜け、骨まで染み込むように感じられた。


「…本当に、行くんだよね…」


小さく自分に言い聞かせ、息を整える。扉を押すと、軋む音が小屋全体に響き、影が壁や天井を滑るように揺れる。薄暗い空間の奥から、微かなささやきが低く響く。

「…よく来た…でも、ここから先は覚悟がいる…」


美咲は一歩踏み込む。床の軋む音、影の揺れ、空気の冷たさ。すべてが彼女の心を揺さぶる。懐中電灯の光に照らされた壁には、古い文字や模様が浮かび上がり、時折光を反射して微かに震える。


部屋の奥には、箱がひとつ置かれていた。埃にまみれた箱は、かすかに冷気を発し、触れると手先がひんやりと震える。箱を開けると、古い写真や手紙、奇妙な装置がぎっしり詰まっていた。


写真には、過去の子どもたちと、微かに揺れる影が写っている。手紙には孤独と恐怖、助けを求める声、そして諦めの文字が綴られていた。美咲は手紙を読みながら、影の揺れを見つめる。影は微かに光を帯び、まるで彼女の反応を試しているかのようだ。


深呼吸をして、一歩ずつ箱の周囲を回り込む。影は壁に沿って蠢き、低く囁く声が耳元で重なる。美咲は恐怖を感じつつも、好奇心に突き動かされ、手紙と写真を慎重に整理する。


その瞬間、床の奥で小さな軋む音がし、影の一部が形を持ち始める。人の形にも見え、子どもたちの記憶と影が融合しているようだ。美咲の心臓は早鐘のように打ち、全身に冷たい汗が流れる。


「…何が起こるの…?」


囁きはますます低く、しかし明確な言葉を含むようになる。影は揺れながら、彼女を導くように動き、次の手がかりが存在する方向を示すかのようだ。


美咲は手紙と写真を抱え、懐中電灯をさらに奥に向ける。影は微かに光を帯び、通路の奥で待っている。


「…真実を、見せて…」


美咲の決意が声に乗ると、影は静かに揺れ、空気はさらに冷たく、緊張が最高潮に達する。

小屋の奥に広がる闇は、まだ誰も知らない、過去と影の世界だった――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ