表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

コメディ系な話

数十分後に婚約破棄&冤罪を食らうっぽいので、野次馬と手を組んでみた

 一応、公の場でめっちゃコケにされていること自体がざまぁのつもりでしたが……


「ざまぁどこよ?」と、思われる方もいるみたいなので、高位貴族の嫡男が馬鹿だと広く知られるとこうなるかも? という部分を追記しました。(´ε`;)ゞ


 誤字直しました。ありがとうございました。


「レシウス伯爵令嬢ディアンヌ! 今ここで、貴様との婚約を破棄するっ!?」


 高らかに宣言する声が、辺りに響き渡った。


 公爵のうつけ息子と有名な馬鹿が、公衆の面前でやらかした。


 事前の情報通りの展開。


「おおー、マジでやりやがったよあのお花畑」

「では、手筈通りに」

「オッケー。んじゃぁ、気ぃ入れてやるしかないねぃ」

「行きますか」

「口調変えねーと」

「へいへい、手加減は無しってな」

「野次ってやんぜ」


 と、二人は約束通り、野次馬(・・・)になるべく人集りの方へと向かった。


―-✃―――-✃―――-✃―-―-


「レシウス伯爵令嬢ディアンヌ! 今ここで、貴様との婚約を破棄するっ!?」


 胸を張った、高らかな婚約破棄宣言が辺りへ響き渡る。


 今日は午後の授業が無く、代わりに数ヶ月に一度の全体集会の日。


 講堂に全学年の生徒が集合する。そんな、講堂へ向かう途中の道での愚かな宣言。


 きっと、『衆人環視の前で婚約破棄する俺、かっこいい!』とでも思っているんでしょうね。キモっ!


「婚約破棄、了承致しました。つきましては、理由をお伺いしても?」


 でも実は・・・よっしゃっ、やったっ! な気分なんだけど、努めて冷静に。


「ふっ、知れたこと! 貴様は、わたしの愛するこの可憐な」


「よっ、まさかの自分からの不貞の告白!」

「憎いねこの色男!」


 ドヤ顔して、なんぞ花畑なことを言い掛けた言葉が、飛んで来た核心的な野次に遮られる。


「なっ!? だ、誰だ今のはっ!?」

「ただの野次でしょう。人通りが多い場所でこのようなお話をされるものですから、(はや)されもしますわ。それで、なんでしたか?」

「だから、貴様がわたしの愛するか弱いっ」


「婚約者を蔑ろにして育てた不誠実な真実の愛!」

「女泣かせたぁこのことだね!」

「そして、婚約者がいる男に擦り寄るか弱い女!」

「か弱いだぁ? 図太ぇ神経した厚顔女の間違いじゃぁねぇのかい!」


 再び飛ぶ野次に、ドッと沸き起こる笑い声。


「ふっ、不敬だぞっ!? それに、わたし達のこの愛はみんなに祝福されているんだっ!!」


「流行りの演目がただ見の特等席で観れるとあっちゃあ、そりゃぁ馬鹿を(あお)って(おだ)てて高見の見物にしけ込むってもんでさぁ! 皆さん随分といいご趣味なこって!」

「豚も煽てりゃ木に登る!」

「道化たぁこのことだね!」


「ぶ、豚に道化だとっ!?!?」

「あら、野次の言葉になにか心当たりでも?」

「なっ!? そ、そんなことはっ……」

「それで、わたくしがなんでしょうか? 学園入学時より婚約者に蔑ろにされ、近付くなと命令されていたので、どこぞの女性と四六時中べったりとくっ付いていた方々に、わたくし自ら近付いた覚えはないのですが。そのわたくしが、なんでしょうか?」


「され妻!」


「なっ、こんな女と結婚はしていないっ!?」


「あいや、しまった! まだ婚約者だった!」

「よっ、憐れ寝取られお嬢様!」


「寝取っ……っ!? なっ、なにを言ってっ!?」


「学園中で盛ってんなぁ周知の、いやさ、羞恥のことでさぁ!」

「あんだけべったりしてりゃあ、邪推の一つもされるってもんだぜぃ!」

「よっ、厚顔無恥で傍若無人なふてぇカップル!」

「不逞で不貞、恥知らずのご両人!」


 飛ぶ野次に、婚約破棄をかました男に寄り添っていた女の顔が蒼白に変わる。


「なっ……か、彼女を侮辱することは許さんぞっ!?」

「そうですわね、女性の大切な名誉に関わることですものねぇ? ええ、そうですわ! 不貞の疑惑を晴らすためにも、教会で調べて頂けば宜しいかと思いますわ!」


 パチンと両手を合わせ、さも名案という風に提案すれば、浮気男も蒼白な顔でしどろもどろになって黙る。


「どうされました? 教会で、(しっか)りと調べて頂けば、彼女の名誉は守られますわ。まさか、愛している方の名誉に関わることを、蔑ろになど致しませんわよね? こんなに高らかに愛を宣言しておられるというのに!」

「そ、それは……」


 ざわざわとする物見高い見物人達。


「では、わたくし個人としては、婚約破棄を承りました。両家へのご連絡は任せましたわ、元婚約者様。慰謝料の請求などは、後日連絡が届くかと。それでは、わたくしは傷心の為これで失礼致します。ごきげんよう、皆様」


 と、浮気男とその相手の女を置いて(きびす)を返す。


「これぞ、冤罪被せからの理不尽断罪婚約破棄!」

「からのぉ、断罪返しってぇやつかい!」

「お後が宜しいようで!」


 最後の野次が飛び、野次馬は三々五々に散って……ではなく、全校集会の為に講堂へ向かって行った。


 そして、わたくしは講堂へは向かわずに踵を返し――――









 裏門で待っていた二人へ頭を下げる。


「見事な野次でしたわ。お陰で助かりました」

「いえいえ、お誉めに(あずか)り光栄です」

「それで、成功報酬はわたくしの身柄、でしたわね」


 覚悟を決めて、相対した二人へ問い掛ける。


 元婚約者様こと、先程の浮気自爆男がわたくしへ冤罪を掛けて断罪し、恋人との新しい婚約をするだの寝言を宣っているのを偶然聞いたのは、つい数十分前のこと。


 あんな馬鹿げた茶番の断罪劇で・・・「婚約破棄ができる、これから新しく婚約を結び直せば堂々と二人過ごせる」、という風なことを中庭で、イチャイチャしながら語っているのを見てしまった。


 午後の全体集会をブッチして早退しようと思ったけど、それも大した時間稼ぎにはならない。


 しかも、公衆の面前で婚約破棄を宣われたところで、貴族の婚約は基本的に政略だ。


 うちの親なら・・・ああやって公の場でわたくしが罵倒されたとしても、家に利益があるのならば、あの元婚約者の浮気自爆男へと平気な顔で嫁がせるくらいはする。あの男の家は公爵家で、伯爵家のうちより格上。


 あの男が愚か者で、わたくしが有能だからと結ばれた、あの男のお守りをさせる為の婚約。


 そして、あのクソ男に『俺のことが好きだからと、両親に媚を売ってまで結婚させた女』などと屈辱的な勘違いをされたまま、虐げられる生活が待っている・・・


 まぁ、普通に考えて地獄の結婚生活と言えるだろう。


 修道院へ逃げるか、どうするか? と、真剣に悩んでいるときだった。


「そこの、思い詰めた顔で悩んでいるお嬢様。悩みがあるのなら、お聞きしますよ? ちなみに、我が帝国には神殿がありまして。よく、行き場の無い女性が他国から避難(・・)して来ることもあるのです。更に言うと、我が国の皇帝陛下は女性や子供の保護に非常に寛容ですよ」


 と、声を掛けられた。


 直接的な言葉ではないけど、あからさまな、亡命のお誘いと言える。


 それで思わず、ついさっき聞いた元婚約者の計画を話してしまった。


 すると、あれよあれよという間に、「それならこういうのはどうです?」となって、あの野次作戦と相なったというワケだ。


 わたくしから彼らへ保護を求めた、という(てい)での亡命。


 わたくしの無罪を周知させる。その成功報酬として、わたくしの身柄。


「はい。ですが、事前にご説明したように、決して無体なことは致しません」

「我らが皇帝陛下と皇妹殿下、そして皇兄殿下でもある宰相閣下は女性の不当な扱いや人権問題などには大変厳しいもので。気軽に、留学するというくらいの心持ちで我が帝国へいらしてください」

「無論、あなたの意志決定が最優先されるとのことなので。もし、残念ながら我が帝国へお越し頂けないのであれば、恒久的な友情をお願いしたく存じます」


 恒久的な友情、ね。


 そして、行くもやめるも・・・


「わたくしが決めてもいいだなんて・・・そんなこと、初めて言われましたわ」


 女は家長へ従い、家へ利益を(もたら)さなくてはならない。そうでなければ家を、爵位を継ぐことのできない女にはなんの価値も無い。それがこの国に根付く常識ですもの。


 恋愛は、結婚後に跡取りとなる子供とそのスペアを産んでから。不倫や三角どころか、多角関係などはざら。そういう不道徳も当たり前。けれど近年は、それらの不貞行為が刃傷沙汰や暴力事件、育児放棄、子供に対する虐待を呼んでいるのでは? と、問題になって来ている。


 そう言った反発からか、娯楽の一環として婚約破棄や悪役令嬢が出て来て、愛の無い婚約や結婚は悪だと説いている書物もあるけど。あくまでそれは、物語の中だけのこと。


 爵位の無い富裕層ならいざ知らず、実際に貴族として事を起こすのは愚か者のすること。


 皆、周囲の声に踊る道化を煽り、馬鹿な言動を取る……取らせるのを愉しく観劇していただけ。


 そんな馬鹿に、衆人環視の中で婚約破棄という滑稽な見世物にされたとしても――――互いの家の当主が頷かなければ、『学生時代に少々羽目を外しただけだ』と、何事も無かったように婚姻を結ばされることは目に見えている。


 わたくしとあの馬鹿の関係が破綻していようとも、婚姻さえ結べば両家へ利益があるのだから、と。


 そんな結婚生活、普通に針の(むしろ)に決まっている。絶対楽しくない。


 あの馬鹿がことを起こすと、楽しげに語っているとき。


 わたくしは瞬時に思った。逃げよう、と。


 修道院か外国か、今すぐ学園を早退して行動しようと思っていたところに、


「手をお貸ししましょうか?」


 そう声を掛けて来たのがこの二人だった。


 だから、わたくしは――――


 渡りに船だと、この二人手を取ることにした。


 だって、取らなければ確実に訪れるであろう、地獄の結婚生活なんてごめんだったから。


 それなら、一人で帝国へ渡ることの方がマシ。


 人買いや、騙されているのでは? と、思わないでもなかったけど・・・


「ああ、実はわたしは神官の資格を持っていまして。お疑いでしたら、あなたを保護(・・)するに当たって、騙していないことを神へ宣誓しますよ」


 と、そうまで言われて簡単な宣誓まで聞かされたなら、騙されてもいいかという気分になった。


 まぁ、ぶっちゃけ・・・幼少期より通常の国の国家予算を遥かに超える程の個人資産を稼ぎ出し、天才・鬼才という称賛をほしいままにし、争うことなく二人の異母兄を押し退け、即位してから僅かたったの数年で幾つもの国を属国にし、大国を帝国へと成長させた立役者の美少年皇帝ネロ陛下とその異母兄の美少年宰相、シエロ皇兄殿下に興味津々というのもあったけど。


 少年皇帝であるネロ陛下が、清廉で慈悲深いことは大変有名だ。()の皇帝の属国になった途端、それまでの暮らしが嘘だったかのように民の暮らしが豊かになったとは、よく聞く話。


 まぁ、興味津々とは言え・・・さすがに、年齢が二桁になったばかりのお子様美少年達にそういう(・・・・)意味(・・)での興味は全く無いけど。


 わたくしは、彼らの作る国に興味がある。


 この国とは違って、帝国は女性が活躍することのできる国だ。彼らが、数年でそう変えた。


 だから、わたくしはこの二人の手を取り――――


 帝国へ渡ると、決意した。


 それにしても、この丁寧に喋る二人が先程のやや下品な野次を飛ばしたのよね? 声が同じだったし。


 あの野次には、ちょっと驚いたわ。


 あれが素なのかしら・・・?


 まぁ、それはおいといて。


 公爵家も、これから没落まっしぐらでしょうね。なにせ、嫡男であるあの……浮気自爆男が、公衆の面前で自分より爵位の低い貴族子女達に踊らされ、道化になって見世物として嗤われていたことが証明されてしまったもの。


 元婚約者(あの道化)がいる公爵家なら、簡単に操れる……と。侮られることは必至。


 そうして侮られた貴族は、海千山千の狸や狐に、上昇志向の強い下位貴族や商人達に、寄って(たか)って財産も土地も、どんどん(むし)り取られることでしょう。


 ふふっ、これからどうなって行くのかしら?


 なんて、もうわたくしには関係の無いことね。


 だって、わたくしは今日から自由なんだもの♪


―-✃―――-✃―――-✃―-―-


「やー、うちの皇帝陛下と宰相閣下。慈悲深いっちゃあ慈悲深いけどさー……」

「あの二人、やり口はめっちゃエグいですよね……」

「そーそー。あちこち地方行脚(あんぎゃ)して来いって、どさ回りさせられると思ったらなー」


「『人助けをして来なさい。理不尽な目に遭っている人を。特に……有能()つ、ちゃんと話の通じる女性をうちに保護して丁重にもてなすのよ!』ですからね」


「んで、助けた有能な女性に、カウンセリングがてら国の内情をあれこれ聞いてー、問題のありそうなとこから切り崩してー、どんどん支配下に置く、と。『困っている人を助けて、うちの利にもなる。これぞまさしくウィンウィンな関係よ!』って高笑いしてたけど」


保護(・・)という名目ではありますが、実質的にはスカウトですよね、これ」

「もうさー、ネロ様とシエロ様の二人で、いつか大陸制覇とかいっそのこと、世界征服できんじゃね?」

「皇帝陛下と宰相閣下にその気があるのかは不明ですが・・・あり得そうですね」

「わー、我らが偉大なるネロ皇帝陛下、シエロ宰相閣下ばんざーい!」

「ふざけてないで、彼女の保護が終わったら、次の国へ留学(・・)しますよ」

「へーい」


 ――おしまい――


 読んでくださり、ありがとうございました。


 というワケで、『数十分後に婚約破棄&冤罪を食らうっぽいので、野次馬と手を組んでみた』終わりました。


 婚約破棄の場面で野次馬は野次らないのかな? と、思ったのがきっかけでできた話です。


 そして、思いっ切り野次ったらあんな感じに……(笑)


 主人公令嬢は全部放っぽって帝国に亡命したのでアレですが、残されたお花畑二人はこの後、すっごく大変なことになると思います。(((*≧艸≦)ププッ


 誤字報告を頂いた『我が国の皇帝陛下は女性や子供の保護に非常に寛容ですよ』という部分についてですが、皇帝が他国の人の保護という名目での亡命に【積極的】だというと、政治的にちょっとまずいので、【寛容】という表現にしています。


 ちなみに、年齢二桁になったばかりの美少年なネロ皇帝陛下とシエロ宰相閣下は、『腐ったお姉様。伏してお願い奉りやがるから、是非とも助けろくださいっ!?』の主役の姉弟というか兄弟のことです。


 こうして兄弟は、大陸制覇を成し遂げた……的な手段の一環。(笑)


 『腐ったお姉様~』の方を読んでなくても大丈夫ですが、興味のある方は上の『コメディ系な短編』のリンクから飛べるので、覗いてやってください。(*>ω<*)


 あと、どうでもいいのですが、『王弟殿下』、『皇弟殿下』は割とよく見ますが『皇兄殿下』はなかなか見ない単語だな、と書いてて思いました。(੭ ᐕ))?


 まぁ、深く考えると……下が王位に就くなら、上を排除しているから、となるのでしょうが。帝国なら、余計にそうなるか……と。( ̄~ ̄;)


 あ、『腐ったお姉様~』のシエロとネロの兄弟は仲良いです。(笑)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ぶっちゃけると一番のざまぁ受けたの、上位者への媚び諂いのために馬鹿のお守りに娘の一生を捧げる選択した主人公父(伯爵)だよなぁ、と。 まぁ貴族社会の政略結婚ってそんなもの、と言えばそうだし、…
[一言] 面白かったです! 俄然興味が湧いたので“腐ったお姉様”行ってきます!(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ