流れるそして留まる
ベージュの紙の箱が規則正しく等しい間隔を空けてたくさん並んでいる。彼は始まったと思った。デカいコンクリート造の建屋の中に、広々とした空間がある。壁と天井は真っ白に塗装されているが、床は作られたような緑だ。その中にブリキ色の骨組みで15のレーンが作られ、その先は一つのコンベアに集約されている。コンベアの沿わされているく後ろの壁のど真ん中に丸い時計がぶら下がっている。そして、その時計の真ん中にある温度計は5℃を指している。
電気の音がごく小さくさり気なくビーっと鳴って、カラカラと何かが空回りするような音も聞こえる。それは空回りというよりは程よい加減で遊びが効いているという方が正しい。動力を伝えるベルトに負荷がかかっていない証拠だ。流れてくる箱はバーコードで区分されており、オートマチックに仕分けられるため、上三桁が行き先を表示し、後ろ六桁が品名と日付と小口番号を表している。特に上の三桁は見間違えて仕分けると後で大変なことになるため、数字には敏感にならなければならない。
流れる時間が少しずつ経過するに連れて、ジリジリとまた違った小さく些細なさり気ない音が付加されていく。コンベアはやがて、分岐に箱を運ぶ。上の三桁を読み込み、読み込まれなかったものはすべて通り過ぎるが、反応があればガコンと何かを折り曲げて叩いたような耳に響く音を立ててその箱をローラーコンベアへ押し流すのだ。
彼は興奮していた。もう3ヶ月この仕事をしている。仕分けのレールは最大で4箇所面倒を見れる。今日はその4箇所を見る日であるし、この仕分け作業に不思議なやりがいを感じ始めたからだ。仕分けられた箱は人力でさらにコードごとの札をつけられた鉄格子のキャリーへ投げ込まれる。テトリスのようにそれらの箱は鉄格子の中へ整理されていくのである。
一番厄介なのは餃子だ。餃子がたくさん流れてくると、箱の採寸からして格子の奥へ縦に積むしかなくなる。そうすると次に大きな箱が来た場合、キャリーに枝番をつけて別途用意しなければならなくなる。すると、その用意しているロスで、ローラーコンベア内に箱がどんどん投入されて、レーンが渋滞してしまうのである。