死ぬための言霊
書くことについて
やけに長い時間、一人で過ごした。私はいつ殺されるだろう。私はいつ死ぬだろうと思いながら四半世紀を生きてきた。長い夜を何度も迎えた。光の射す時は、私は無に近い時間を過ごした。教育は当たり前に受けられる時代である。大人になるのは時間がいるだけで、皆同じように大人になった。だからなにか特別な出来事は夜の長い時間に訪れた。
それはしかし、死の言霊だった。私の近しい人でも、味方は一人としていなかった。毎日、死を思わなければ生きていけなかった。私は生まれた以上、なにかしてやりたい。誰かに少しでも影響を与えられれば、それでいい。生きた証をもって自分が生きたことを誇れるような人になっておきたかった。死ぬならばそれなりに自分が生きたことを誰かにわかってほしかったのだ。そうやって生きてこれたのだ。
それが少しずつ小説になったのは、やはりこの頃のことだ。生きたことを証明するために書く、そらが私の小説を書き始めた動機だ。
小説は人のことを書くこと。私の先生はそれを教えてもくれた。だから私は少しばかり生き方を理解できるようになった。私は生きている。それだけが今の私の生きる誇りになっている。