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09 討伐

「これで、最後だ!エアースラッシュ!」


「アース・クエイク!」


がなるようにして吐き出した言葉と共に鋭い風の刃がキノコ型モンスターポポルゴの身を裂いて、

サイゴドンが振り下ろした大斧が地割れを起こしながら衝撃波となってポポルゴの集団目掛けて真っ直ぐに飛んでいくとポポルゴは四方に弾け飛んでゆく。


ポポルゴの討伐を終えて、ようやく森に静けさが戻り辺りを見渡せばポポルゴだったものが随分と散乱していることが分かる。これが食用になれば持ち帰ることが出来るのだろうが、食すと舌への痺れを引き起こすポポルゴを持ち帰ったところで迷惑がられてしまうのが関の山。幸いなことにポポルゴは放置したところで土に還るため回収作業は行わずにぜぇぜぇと肩で息をする疲労困憊な新人兵士たちに視線を向けると、足で息絶えたポポルゴを退かしてから後ろにお尻から倒れた。


「だーっ!やっと最後の一匹!」


「つ…つかれた…」


「ま、まさかこんなに多いだなんて…」


ポポルゴが繁殖していると聞いていたが、その数は噂以上のものだった。


おかげで討伐には随分と時間がかかってしまい、気づけば終了の予定時刻をとうに超えて昼を過ぎていた。時刻は14時。五名ほどの人数で手分けをして、そして休憩を挟んでたとはいえ六時間近くかかってしまった。

新人兵士が騎士団長よりも先に尻をついて倒れるほど疲労困憊になるのも無理はない。

なぜポポルゴがこんなにも異常繁殖をしているのか。生態系が変化しているのかは気にはなるものの新人兵士たちの様子を見るに今回はこれが限界なようだ。

早いところ食事を取らねば騒ぎを聞きつけた新たなモンスターに狙われてしまうだろうしな。


「…ふむ、じゃあここらで昼飯を食べるとするか。」


サイゴドンはそう切り出すとサイゴドンを除いた新人兵士のうち五名中三名が両手を上げて喜んだが、残りの二名ときたら非常に微妙な表情を浮かべて、「昼飯…」と呟くだけであった。

最後の間がなんとも不穏にさせるもので、思わず


「……昼飯を用意するよう伝えていたはずだが、持ってきていないのか?」


と眉間に皺を寄せながら問いかけると、新人兵士は両手を前に突き出してやたらと慌てた様子で「いや、あの、ええと」と歯切れの悪い言葉を並べた後、観念したように


「い、いえ!あることにはあるんですが…その、現地で調理しようと思っていたので…。」


と呟いた。


「つまり持ってきたものは調理前のものか。」


「……はい。」


「クラン、お前もか。」


「……はい、」


「ちなみに何を持ってきたんだ?」


「干し肉と芋と人参です」


「………クランは、」


「お、俺は…肉も討伐出来るかと思って…道中拾ったリンゴだけ」


ああ、頭が痛い。何故弁当を持ってこいといって現地で調理するという発想になっているのだ。楽観的すぎる。いっそのこと怒鳴って叱りつけてやりたいが、呆れてそれすらする気にはならないとサイゴドンは眉間に皺を寄せたままため息を吐くに留めると、手を二人に向けて差し出した。


「お前たちの持ってきたものを寄越せ。私の弁当と交換だ。」


「で、ですが」


「ちゃんとしたものを食べなければ身体の回復も出来ないだろう。私はお前たちよりも体力があるから大丈夫だ。それに私は別に食べないわけではない、お前たちの持っているものを交換というだけだ。」



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