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34 何もない!

*


早朝、日が昇る前にソラリア村を発った私たちが王都アメストリアにたどり着いたのは夕刻時。馬でも一日かかると言われていたが巨大化したリュウのお陰で随分と早く辿り着くことが出来た。

この後はロキータのいる山を目指すということで、アメストリアには寄らずにその場を後にするルイさんの背を見送ると、王都アメストリアを囲む堅固な城壁を見上げる。

なんて高い、そしてなんて堅固な城壁だろう。

見上げるのも首が痛くなるほどの高い城壁。まさに要塞と呼んでも過言ではないだろう。


防衛意識の高いアメストリアに入るためにはどうやら門の前で手続きをする必要があるようで、これから手続きを行いアメストリアに入っていくであろう人々で出来た長い列の最後尾に並ぶ。


「わあ……冒険者に、商人かな。」


鎧を纏った恰幅の良い男たちに、大きな荷物を背負った男性、獣人。並んだ人々の恰好は様々ではあるが、武器は持たず、ペットの犬を連れている私は少しばかり浮いた格好のようで男たちの視線がなんとも居心地が悪い。

とはいえ一人、また一人と手続きを終えた人々は入り口の奥を進んでいき、ついに私の番になると、私は入口の前に立つ門兵に向けて頭を下げると、門兵は私をジロリと一瞥した後、


「それでは身分証を出して」


と呟いた。


「み…身分証、ですか?」


「ないのか?」


異世界転移した者が持っている筈もなく、狼狽していると門兵は眉間に皺を寄せて問いかける。


「それじゃあ何をしにきたんだ」


「あの、ほ、包丁を買いにきました!」


「……わざわざ?街でもなくこの王都に?」


「は、はい」


「…………怪しい。」


・本人証明書なし

・商人ギルドの証明書なし

・理由:包丁を買いたい。


確かに怪しい。私が彼と同じ立場でも怪しいと言ったと思う。しかし、しかしだ。こればっかりは本当なのだから仕方が無いじゃない。怪訝そうな門兵に向けて「本当なんです」と真剣に見つめてみるも、こんな言い訳日常茶飯事なのだろう。門兵の怪訝そうな顔が和らぐ事はなく、門兵はもう一度私のつま先から頭までを、まるで危険人物ではないかとばかりに見つめた。


「…それじゃあどうしてわざわざ王都にきて包丁を買い?包丁を大量に仕入れて売るということか?」


「いえ!私はその、料理人でお弁当屋さんを開いていて…」


「弁当屋?あぁ、じゃあ、商人ギルドカードがあるだろう」


訝し気だった門兵がお弁当屋という言葉を聞いて表情を和らげたたことに、何か解決の糸口が見えたように思えた。

しかし次に続く私の知らない新しい"商人ギルドカード"という単語に言葉が詰まる。


「へ、え?」


多分、私はいま思い切り間抜けな表情をしていたと思う。

門兵は私の言葉を聞いた後、暫くの間を明けて「………ないのか?」と問いかける。


「は、はい…。」


「うむ、怪しい!」


「えええええ…」


門兵の一人が判定を下した途端に、奥で控えていたのか門兵たちが物騒な武器を片手にわらわらと出てきては私を囲む。嫌でも伝わってくる緊迫した空気に、足元にいたリュウがウウウッと唸ると門兵は各々に持った武器を構える。


「あ、あの、私は……私は……」


やばいやばいやばいやばい。

これは何か言わないと、本当に捕まってしまう。

殺されることはないだろうけれど、それにしたって捕まるのは嫌だ。しかし動揺で、喉に小骨が引っかかったみたいに言葉が出ずに狼狽していると、取り囲む門兵の男たちをかき分けるようにして一人の少女が現れて、私に怪しいと判定を下した門兵を見上げた。


「ちょっと、ハンクス。一体どうしたの?」


「ミア、退きなさい。その女は怪しい女だ。証明書も持たず、このアメストリアに包丁を買いに来たと言うんだ。」


「ほ、包丁?」


ミアと呼ばれる少女は、そうなの?と私を見つめる。

私は何度も盾に首を振ると、少女はサイドテールを揺らしてふうんと鼻を鳴らす。


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