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29/72

29 ワクワク


指輪のサイズはどの指でもいけそうなほどの大きさだが、大きすぎては落ちてしまうし、はたしてどの指がピッタリだろう。試しに指輪を小指に通してみると、その瞬間ぞくぞくぞくと指先から心臓まで、電流でもない、鳥肌でもない、何かが皮膚の内側で走る。


「ん……ッ」


決して心地よくはない感覚。どちらかというと気持ちの悪い感覚だったように思う。


本当にこの指輪はつけて良かったんだろうか。

まさか呪いの指輪ではないよね。


小指に通した指輪へと視線を落とすと、つい先ほどまで小指に通すには大きかったはずの指輪が、丁度良いサイズにぴったりと収まっていた。私は瞬きを繰り返す。


ああ、ファンタジーの世界って本当になんでもありなんだなぁ…。指輪がサイズを合わせてくれるだなんて。


念のためステータスを確認してみたところ、一番下に装備品効果という項目が付け足され、そこに「+錬金(指輪効果)」と書かれている。ああ、先ほど肌に走った感覚は身体にスキルを植え付けるためのものだったのか。


「すごい、これで私にも錬金が…!」


錬金ってどういう風に行うのかさっぱりだけど。


「……おめでとう。…とはいえ、今日で全てを覚えるというのは大変だろう。錬金の使い方はまた後日に。」


「あ、はい。…あの、すいません、何から何まで…。」


いや、本当に。今日出会ったばかりの人物にどれだけ助けられたか。肉体的レベルは上がってなくとも知識レベルは10レベルくらい上がってるんじゃなかろうか。


「いいや、気にするな。…何か質問はあるか?」


「あ、それじゃあ一つだけ。錬金のことではないんですが、ステータスってモンスター相手にも視れるんですか?」


「あぁ、もちろん」


「そうですか……」


少しだけ引っかかることがある。

シルフィードは私の能力値のなかで料理が高いからといって"観察する者"を授けてくれたのだが、私やルイさんのステータスを視る限り料理に役立ちそうな項目はない。

一体何をもって料理に役立つと考えたのだろうか。


「どうしたんだ?」


「シルフィードが料理スキルが高いからと加護をくれたのが引っかかってて。もしかしてモンスターでステータスを視たときに項目って変わりますか?」


一番に考えられることはステータスだろう。

観察する者でステータスを丸裸にして、其処に何か調理で役立つような――例えばこの材料は美味しいだとか、ピリ辛だとか、食べると耐性がつくだとか。そういう解説的なものが入っていれば、確かに料理に役立つのだが。


「あぁ、まぁ…変わるといっても耐性とか、そういったものが出る程度だが、…気になるのであれば自分の目で視てみたらいいんじゃないか?」


ああ、そうだった。今日はポポルゴもあの黒狼もいるじゃないか。


調理場に引っかけた解体用の手袋を取って指先から腕にかけて通すと、アイテムボックスから黒狼とポポルゴを取り出す。まぁ、すでに解体されているので、正確には「黒狼とポポルゴだったもの」なのだが。ポポルゴは表面に触れると痺れを引き起こす特性を持っているため、取り出すことに少し手間取ってしまったが手袋のお陰で手が痺れることはなく、取り出されたものたちは調理台の上に置かれた。

これも痺れ耐性なんかがついたら手袋なしに出来たりするんだろうか。


「ステータスオープン」


ポポルゴに向けて、本日何度目かの言葉。

ずらりと並べられた文字列は私やルイさんで見ることの出来たステータスとあまり大差がないようにも思えたが、下の方に記載された文字を見て、私がひそかに抱いていた予想が確定へと変わる。


「うん……うん、うん。なるほど、シルフィードさんが言っていた意味がなんとなく分かりましたよ!」


「…?そうか?」


「はい!ルイさん、今日はぜひ料理研究に付き合ってください!」


そういって私は同業のルイさんに向けて口角を吊り上げる。

ルイさんは不思議そうな表情を浮かべていたが、ポポルゴの活用法、そして黒狼の調理法を思いついた私はやる気が満ち溢れている。早く料理がしたい。


ああ、新しい料理ってどうしてこうもワクワクするんだろう。



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