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6/50

6 テッサの涙

ブックマーク・評価などありがとうございます!

おかげさまで総合PTが200を超えました……嬉しいです。

また、前話の後書きにこぼれ話を追加しています。

更新直後に読んでいた方は、よければご覧ください。



「はぁ、はぁ……」


 グレマートンから逃げ出した俺たちは、10分くらい走り続けて王都の広場で立ち止まった。


 ここまで来れば大丈夫かな。

 グレマートンも、人混みにまぎれた俺たちをわざわざ探そうとはしないだろう。

 そう判断した俺は、空いていたベンチにテッサ姉といっしょに座る。


 もちろん、わざわざ探し出そうとするほどテッサ姉を気に入ったなら別だけど、さっきの感じだとたまたま美少女が目に入ったから手に入れようとしただけだろう。

 そんな手間をかけてまでっていう雰囲気ではなかった。


 それよりも気になるのが、グレマートンが(ユーリ)のことを知っていたっぽいことだ。


 ゲームでそんな設定作ったか? いや、そんなはずはない。

 それどころか、エリスの寝取られルートが進行する段になって初めて主人公はグレマートンと会う設定のはずだ。


 何だ……? どういうことだ?

 なんでグレマートンは俺を知っているんだ?

 現実になったことでゲームとの変化が生じたのか?


 それにしたって、これってどんな変化だよ。

 料理や裁縫なんかのスキルがあったり、錬金術が価値の低いスキルだって思われてたりするのは、ゲームから現実になったことによるものだってわかるけど、今回の変化はいったい何なんだ!? まったく意味がわからない。


 もしかしたら、ゲームが現実になった以上の変化が、この世界に起きているのか……?


 なんて考えていると、テッサ姉とつないでいた手がギュッと握られた。


「いっ――」

 痛い、と言おうとして言えなかった。


 テッサ姉がひどく怯えた表情で震えていたからだ。

 目には今にもあふれ出しそうなほどの涙がたまっている。


「あり、がとう、ユーリ……。わ、私……すごく怖かった…………」

「テッサ姉……」


 そりゃあ、怖いよな。中身は大人の俺だって怖かったんだ。

 まだ10歳のテッサ姉はもっと怖かったはずだ。

 あんな汚い大人の自分勝手な視線に晒されたら、もう泣いていてもおかしくない。


 その涙の堰を止めているのは、きっとお姉ちゃんとしての責任感なんだろう。

 弟が怖がってるはずだからお姉ちゃんの私は落ち着いてなきゃ、という――。


「ユーリはすごいね……あんな怖い大人に立ち向かって…………」


 だから、俺はこう言った。


「言ったじゃん。俺はテッサ姉をずっと守るって」


 安心してもらうために。


「これから、どんなことが起きても絶対にテッサ姉を守るよ……だから…………」


 怖かったら泣いていいよ。

 そう言おうとしたけど、出来なかった。


「大丈夫だから、安心して」


 代わりに出た言葉はそんなものだった。


「うん……うん…………ありがとう、ユーリ…………」


 そこまでがテッサ姉の限界だったみたいだ。

 テッサ姉は俺に抱きついて、堰を切ったように泣き出した。


 それから俺は、母さんに見つかるまで、泣き続けるテッサ姉の背中をずっと撫でてあげていた。




 * * *




「まったくもう……待ち合わせ場所に2人ともいないし、ようやく見つけたと思ったらテッサは泣いてるし、またユーリがわがまま言ってお姉ちゃんを泣かしたのかと思ったよ」

「そんなことないよ……」


 王都からの帰り道、母さんの小言を聞く。

 わがままはスキル屋さんで言っちゃったけど、それとテッサ姉が泣いてたのは別の理由だ。


 テッサ姉はというと、母さんの姿を見てもっと安心したのか、母さんに抱きついてまた泣き出してしまった。今は隣で真っ赤な顔で縮こまっている。


 いつも一緒にいる3人組……俺とエリスとテッサ姉の中で、テッサ姉が一番年上だ。

 そんな彼女が一番年下の俺の前で大泣きしてしまって、恥ずかしいのだろう。

 何も恥ずかしいことなんてないのに……。

 なんて考えていると、隣を歩くテッサ姉が俺の服を引っ張ってきた。そして小声で、


「私が泣いちゃったこと、エリスには内緒にしてね」

「うん、わかった。俺とテッサ姉の秘密だね!」

「秘密……うん、そうね。私とユーリだけの秘密ね」


 そう言ってテッサ姉は微笑んだ。可愛い。


 ゲームではお姉さんキャラらしく優しい言動のキャラだったから、泣いちゃったことを気にするような子供っぽい姿は新鮮で、こういうのも良いなと思った。


 ちなみに母さんにはテッサ姉が泣いた理由……俺たちに起きたことを話していない。

 テッサ姉が言わないでと言ったからだ。


 母さんを心配させたくないという気持ちだろうとは思う。

 でも、もしかしたらこの話をすることで、母さんたちが自分を本当に売るんじゃないかと心配しているのかもしれない。

 テッサ姉は俺たちとは血が繋がってないから……。


 でも、そんなのは杞憂だと思う。

 血が繋がってようがいまいが、俺たちは家族だ。

 それに、母さんが「それじゃあテッサを売りましょう」なんて言ったら、俺はテッサ姉を連れて家出してやる。


「あとね、ユーリ……ちょっと目、つむって」

「……? うん……」


 言われた通り目をつむる。そしたら、



 ――ちゅっ



 やわらかい感触が、俺の頬に触れた。


「え、テッサ姉!?」

「約束通り、守ってくれたね。かっこよかったよ」


 そう言って笑うテッサ姉は、すごく綺麗で、俺は絶対にこの笑顔を曇らせちゃいけないんだと改めて誓うのだった。


「あらあら。お母さんが心配してたのに、あんたたちは仲良くなっちゃってまぁ」


 そんな俺たちを母さんがからかってくる。そして、


「そうそう、テッサ。これ、買っておいたよ」

「あ、お母さんありがとう」


 母さんは取り出した包みをテッサ姉に渡した。

 そういえばテッサ姉も王都に欲しいものがあるんだったな。結局何だっだろう。

 俺は興味本位で聞いてみた。


「ねぇねぇ、それ何なの?」

「え、これ……?」


 しかし聞かれたテッサ姉はまた真っ赤になってしまう。

 慌てて母さんに助け舟を求めるが、母さんはどこ吹く風だ。

 ややあって、テッサ姉がこそっと教えてくれる。


「……新しい下着。ちっちゃくなっちゃったから」


 これには俺も真っ赤になってしまう。




 母さんはというと、このやりとりを見て大爆笑していた。このババア……!


よかったら、感想などで「テッサ姉可愛く書けてて偉い!」とか褒めてくださると嬉しいです!


【こぼれ話】

ちっちゃくなったのは上のほうの下着です。成長期!

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