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50 【槍の勇者】の仲間

だいぶ間が空いてしまって申し訳ありません!

めちゃくちゃ仕事が忙しくて……これからはまた週1ペースで更新していきます!




「改めて、さっきはありがとう。お姉さん、助かっちゃったわ。ここはお姉さんがごちそうするから、遠慮なく食べてね」


 機嫌がよさそうにそう言うのは、俺たちが先ほどごろつきから助けた女性――ミラさんだ。

 俺たちは今、彼女と共にトレンタの大衆食堂にいた。目の前には出来立ての料理がずらっと並んでいる。


 彼女の正体を考えればすぐにでも離れるのが得策だ。

 ミラさんは――立ち絵(・・・)を作ってなかったからすぐに気づけなかったが――【槍の勇者】の仲間にして、ハーレムの一員なのだから。

 そう、俺の仲間たちをまとめて寝取ろうとする【槍の勇者】――ソーマの。


 ゲームの通りなら、ミラさんら【槍の勇者】のハーレムメンバーたちは、ソーマが俺の仲間を落とそうとしている時のような例外を除いて、常にソーマと一緒にいるはずだ。

 だとすると――。


「いいんですか?」

「いいのよ。きっとソーマくんもそうしろって言うわ」

「――っ!」


 遠慮がちなテッサ姉に答えたミラさんの口からその名前が出て、一瞬、動揺する。


 いるのか……?


【槍の勇者】もトレンタ(ここ)に。


 できればこんな序盤で【槍の勇者】と関わりたくはない。テッサ姉たちと出会わせたくない。

 まだ好感度も満足に上げきっていないのに、ソーマの毒牙に狙われたら……。


 最悪の想像が過って心臓がバクバクと鳴る。


 ミラさんの正体を知った時、しばらくトレンタを離れるという考えがすぐに頭を過ったが、さっき助けてくれたお礼に、と誘われて無碍にもできずに半ば無理やりのような形で連れてこられてしまった。

 まさかとは思うが、テッサ姉たちをソーマと引き合わせるために強引に俺たちを連れてきたのか?

 テッサ姉もエリスもマリー様もとびきりの美人だ。

 ソーマが欲しがるだろうと推測して、それで……。


 いや、落ち着け……。ソーマが近くにいるならミラさんがごろつきに襲われているのを黙って見過ごすわけがない。

 あの男は、独占欲の塊だ。自分以外の男が自分の女に言い寄っていたりしたら、すぐに割って入ってくるはずだ。

 それをしなかったということは、ソーマは近くにいないんだ。


「ソーマさん……っていうのは?」

「あら。ごめんなさい。まだ言ってなかったわね。わたし、冒険者をやっているの。ソーマくんは、わたしが組んでいるパーティーのリーダーの男の子よ。と~っても、カッコいいの!」


 エリスの問い掛けに、ミラさんは満面の笑みを浮かべて答えた。

 その表情は、どこからどう見ても恋する乙女の表情だ。

 心の底から【槍の勇者】のことを愛しているのが伝わってくる。


「ソーマくんはね、すごく強くて頼りになるんだけど、ちょっとだらしなくて、でもそこが普段のカッコよさとのギャップがあってとっても可愛いの! それに、わたしたちのこといつも大切にしてくれて、優しくしてくれて、とても大好きな男の子よ。それに、エッチもとても上手くて毎日のようにわたしのこと――って…………ご、ごめんなさい。わたしったら、ソーマくんのことになるとつい……」


 テッサ姉たちがぽかんとしているのを見て、我に返ったようだ。


「あ、いえ。ミラさんはよっぽどそのソーマさんのことが好きなんですね」

「ええ。大好き。彼のためなら、何だってしてあげちゃうわ」


 ソーマのことを想っているのだろう。ミラさんの表情は蕩けていた。

 言葉通り、きっと彼女はソーマのためならば何でもするだろうことが窺える。


「それにしても、ミラさんも冒険者だったんですね」

「そうなのよ。あら? も、っていうことは、もしかして……」

「はい。私たちも冒険者として旅をしているんです! ユーリがリーダーなんですよ。ミラさんにとってのソーマさんみたいに、ユーリもすごく強くて頼りになるんです!」

「へぇ。そうなのね……」


 テッサ姉の言葉に応じるように、ミラさんが俺のことを見る。


 ……何だ?

 何だか、探られるような視線だ。


 だが、それも一瞬のことで、ミラさんはテッサ姉に視線を戻して話を続ける。


「あなたたちも、男の子は1人だけなのかしら」

「そうですよ。ミラさんのパーティーもなんですか?」

「ええ。でも、わたしたちのパーティーは、女の子が5人なの」

「5人も!?」


 テッサ姉が驚きの声をあげる傍ら、エリスとマリー様も同じく驚いたような表情をしていた。


 5人……。

 ゲームでもソーマは出会う前から5人の女の子と旅をしていた。そこはゲーム通りか。

 そうなるとわからないのは、やはりなんでミラさんがトレンタにいるか、だ。


 俺が不思議に思っていると、


「……なんだかわたしたち、気が合いそうね」

「気が合う、ですか……?」


 ミラさんがさらに話を続けていく。


「ええ。だって……あなたたち、3人ともユーリくんのことが好きなのよね?」

「「「えっ!?」」」


 ミラさんの発言に、テッサ姉たちは3人揃って大きな声をあげた。

 その反応を見たミラさんはというと、我が意を得たりとばかりに微笑んでいた。


「隠さなくてもいいわよ。作ってるんでしょう? ユーリくんとのハーレム」

「な、なんでわかったんですか?」

「言ったじゃない。わたしたち、気が合いそうだって。見ててわかったのよ。あなたたちもわたしたちと同じ……1人の男の子を一途に愛しそうだなぁって」


 ミラさんの言葉を受けて、テッサ姉たちは互いに顔を見合わせる。


「わたしたちのパーティーもそうなの。ソーマくんをみんなで愛してあげてる。だから似てるあなたたちもそうじゃないかなぁって」

「えっと……はい」

「ユーリのこと、アタシたち3人とも好きで……」

「ユーリ様もわたくしたちのことを平等に愛してくださいますの」


 そして、3人は恥ずかしそうにミラさんにそう答えた。


「すごく仲がいいのね。うん、みんなでユーリくんを愛そうとしているのが見ててわかるわ。うらやましいわ(・・・・・・・)

「……?」


 何だ?

 今……何か違和感があったような。


 だが、その正体を探るよりも先に、ミラさんが言葉を続けていく。


「テッサちゃんたちと話してたら、わたしも早くソーマくんに会いたくなってきちゃった」

「そういえば、パーティーの仲間の人とははぐれちゃったんですよね」

「ええ。依頼を受けてモンスターと戦ってたんだけど……」

「トレンタの近くでですか?」


 テッサ姉がミラさんに問いかけた。それは俺が尋ねたかった質問でもある。


 果たして【槍の勇者】はトレンタの近くにいるのか。


 この返答次第では、俺たちはすぐにトレンタを離れなければならない。


「それが……少し変なの」

「変?」

「わたしはメヨソワにいたはずなのよ」

「メヨソワ!?」


 テッサ姉が驚くのも無理はない。


 メヨソワはこの大陸の東側に位置する国だ。

 トレンタは大陸の南。

 はぐれたと言うには無理がある距離だった。


「うん。一昨日までは確かにメヨソワにいたのよ。それで、昨日、討伐依頼を受けてインプを倒しに言ったはずなのに……変な魔法を使われて、気づいたらトレンタにいたの」

「変な魔法……それって!」

「ああ。突然変異だ」


 テッサ姉の言葉を俺が引き継ぐ。


「突然変異?」

「モンスターの中に、稀に強力な個体が生まれるそうなんです。それを突然変異って呼んでいて……私たちも以前に遭遇したことがあるんです」


 ゴブリンを統率して罠を使ってくるゴブリンジェネラル。

 洗脳魔法で人間やオークを操ったオークロード。


 おそらく、ミラさんたち――【槍の勇者】が戦ったのも、突然変異なのだろう。推測だが、そのインプの能力は……転移魔法。


 俺たちは突然変異モンスターのことをミラさんに説明した。


「そんなモンスターがいるなんて……そんな魔法をそのインプが使えるなら、人がいきなりいなくなったっていう被害も理由がわかるわ」

「気をつけてください、ミラさん。私たちも突然変異とは戦ったことがありますけど……ユーリがいなかったらどうなっていたか……」

「ありがとう、テッサちゃん。メヨソワに戻ったら、ソーマくんたちにも突然変異のことを伝えるわ。ソーマくんは強いから、きっとインプはもう倒してるかもしれないけれど」

「メヨソワに帰る手段はあるんですか?」


 テッサ姉と話しているミラさんに、俺は問いかける。


「ええ。メヨソワ行きの船のチケットをもう買ってあるの。この後、発つ予定よ。あの人たちに絡まれた時は困っちゃったけど、ユーリくんたちに助けてもらったおかげで、無事に帰れそうだわ。本当にありがとう」

「そうですか……」


 微笑む彼女の言葉に偽りはなさそうだ。


 本当にメヨソワに突然変異が現れて、そのインプの転移魔法でトレンタまで来てしまったのだろう。なら、ソーマはトレンタにはいない。


 少し安心しながら、俺たち……というか、主に女性陣たちはミラさんが発つまでの間、話を続けていった。

 そして、メヨソワ行きの船に乗るミラさんを見送る。


「ミラさん、お気をつけて」

「ええ。テッサちゃん、エリスちゃん、マリアンヌちゃん、ユーリくん。また縁があったら会いましょう。その時は、わたしの大好きなソーマくんを紹介するわ」

「…………はい」


 俺たちはいつか、必ず再会する。

 俺が【剣の勇者】で、ソーマが【槍の勇者】である以上。

 まぁ、しばらくは会いたくないが。


 それにしても、3人は――特にテッサ姉がミラさんと気が合ったようだ。大衆食堂での会話も弾んでいた。


 ゲームでは、確かにNTRハーレムルートが最後まで進んだ時に、ソーマの元々のパーティーメンバーといっしょに仲良くソーマに奉仕をするシーンがある。

 だから現実になったこの世界でも相性はいいのだろうけど……。


 テッサ姉たちとミラさんが話をしているところを見ていると、そんな場面のことが脳裏に過って、俺は落ち着かなくて仕方がなかった。

 俺にできることは、ソーマと出会うまでに少しでもテッサ姉たちの好感度を上げて寝取られを防ぐことだ。


 ミラさんの乗る船が小さくなっていくのを見ながら、俺は誓い直すのだった。


2か月ほどちゃんと更新できなくてすいません!

また温かい目で見ていただけると幸いです!


次回はまた来週の週末くらいに更新していく予定です。


【こぼれ話】

突然変異のインプは、ミラさんを転移させた瞬間、ソーマがキレて瞬殺してます。

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