37 冒険者パーティー【猛き虎】
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キャラバンに限らず、街や国を移動する人たちの護衛は冒険者の間ではメジャーな依頼だ。
いくら騎士団が街の周りや街道をモンスターを退治しているとはいえ、絶対に安全というわけではない。
騎士団が見逃してしまったモンスターに運悪く遭遇してしまうことがある。
そんな時のために、モンスターの対処ができる冒険者を護衛として雇う。
もちろん、一般の人が護衛を雇うことはそうそうない。
モンスターに遭遇してもそれは偶発的なもの。荷物などを捨てて一目散に逃げれば問題ないからだ。馬が無事でさえいれば、モンスターから逃げるのは難しくない。
だから、基本的には今回俺たちが護衛する商人のように、荷物を守る必要がある人たちがお金を払ってでも冒険者を雇う。
また、警戒しなくてはいけないのはモンスターだけではない。
商人のキャラバンは野盗や山賊に狙われやすい。
奴らは荷物を奪うだけに飽き足らず、捕まえた人を奴隷として売り払うため、ある意味ではモンスターよりも恐れられていた。
これに対処するのも、雇われた冒険者たちだ。
そのため、安全のために予算が許す限り多くの冒険者を雇うというのが常識だった。
今回、キャラバン側は俺たちの他にもパーティーをもう1組雇っていた。
それが冒険者ワルドが率いるパーティー【猛き虎】だ。
「何かあの人たち、感じ悪くなかった?」
と、テッサ姉が言うのはその【猛き虎】のことだ。
責任者からの説明を受け、すでにキャラバンはアザーストを出発している。
俺たちは冒険者用の幌馬車に乗りながら話をしていた。
「同感。何なの、アイツら。人の体をジロジロ見てきてさ。見てるのバレバレなのよ」
「やっぱり、そうですわよね? わたくしも、胸をずっと見られて恥ずかしかったですわ……」
先ほど、リーダーのワルドという男と挨拶をした後、他のメンバーも俺たちのところにやってきたのだが、彼らの態度にテッサ姉たち――特にエリスはお冠だった。
まぁ、彼女たちが怒るのも無理はない。
俺から見てもハッキリわかるくらい、3人の体を見ていたからな。
爆乳と言っても差し支えないテッサ姉と、服の上からでも大きさがわかるマリー様はもちろん、エリスも2人は劣るが一般的には大きいサイズだ。
しかも美人なのだから、そういう目で見られるのは男としてはわかる。
さらに言うと、【猛き虎】は男ばかりのパーティーのようだから女性に飢えているだろうということもわかる。
だが、わかるからといって自分の恋人がそういう目で見られて気分がいいわけがない。
とはいえ、これから一緒に護衛をする相手だ。
迂闊に問題を起こすわけにもいかず、ひとまず先ほどは彼らの目線からかばうように3人の前に立ってはみたのだが、焼け石に水だった。
ありがたいことに、護衛用の馬車はパーティーごとに分けられている。
【猛き虎】と離れられてよかった。
これが一緒の馬車だったら、何をされるかわかったものじゃない。
「よぉ、嬢ちゃんたち。退屈だったらオレ様たちと一緒に楽しく過ごさねぇか?」
そうそう、こんな風に誘ってきたり――って!
「ワルド……さん! なんでここに!」
「チッ、男にゃ用はねぇ。引っ込んでな」
いきなり幌馬車の乗り込み口から顔を出してきたのは、【猛き虎】のリーダー・ワルドだった。
馬車の速度はあまり出ていない。人の足でも追いつける程度の速さだ。
だからか、ワルドは俺たちの馬車までちょっかいをかけにきたようだ。
「何よ、アンタ! アタシたちは馬車の中で待機だって説明受けたでしょ!」
「まだアザーストを出発して1日目だぜ。モンスターなんか出やしねぇよ」
エリスがきつく当たるが、ワルドはまったくこたえない。
それどころか、
「それよりよ、これからしばらく一緒に行動するんだ。オレ様たちの馬車で親睦でも深めねぇか?」
悪びれず、そんなことを言ってくる。
その「親睦を深める」がろくなことではないのは火を見るよりも明らかだ。
「気持ちいいことをた~っぷりしてやるぜ? オレ様たちも気持ちよくさせてもらうがな! ガハハハハ!」
「ふざけないでよ! 誰がアンタたちの馬車になんて行くもんですか! アタシたちはね、ユーリのものなの! 一昨日きなさい!」
「つれねぇなぁ。ま、強気な女もオレ様は好きだぜ」
「アンタね~~~~~~!」
今にも立ち上がってワルドに掴みかかりかねないエリス。
そんな彼女とワルドの間に、俺は割って入った。
「ワルドさん。自分たちの馬車に戻ってください」
「ああ? なんでお前の指図なんか聞かなきゃなんねぇんだよ」
「……戻ってください。さもないと、力ずくで戻ってもらいますよ」
これがチンピラ相手だったら、最初から俺も力ずくで黙らせていた。
ただ、相手は同じ依頼を受けている冒険者だ。
問題を起こすと依頼主に迷惑をかけかねないと思ってさっきは言葉だけで済ませた。
だけど、さすがにここまでエリスたちに無遠慮なセクハラを言われて見過ごせるわけがない。
「ほぉ~~~~~~。力ずくねぇ。セリフだけはいっちょ前じゃねぇか。それじゃあ勝負でもしようじゃねぇか」
「勝負?」
「この護衛依頼でどっちのパーティーの指示に従うかも決めなきゃならなかったからな、ちょうどいいぜ。馬車から降りな」
俺はワルドに言われた通り、馬車から降りようとする。ところが――
「待って、ユーリ。アタシがやる」
エリスが俺を制止した。
「ほう、嬢ちゃんが相手してくれるのか」
「ええ。好き勝手言われていい加減ムカついてたのよね。ボコボコにしてやるわ」
「オレ様は女だからって手加減しねぇぞ?」
「望むところよ。あとで手加減してたなんて言うんじゃないわよ?」
……エリス、かなりキレてるな。
こうなったエリスは止められないことを俺はこれまでの経験で知っていた。
俺たちは馬車から降りて、キャラバンから少し離れた場所でワルドと対峙する。
キャラバンの責任者が何かあったのかと尋ねてきたが、この依頼のリーダーを決めるとワルドが言ったら「なるほど、そういうこともあるんですね」と戻っていった。
責任者が去ると、ワルドはニヤリと笑って斧を構える。
「オレ様が勝ったら、嬢ちゃんたちはこれからずっとオレ様たちの馬車に乗ってもらうぜ。何ならオレ様たちのパーティーに永久に入るか?」
「お断りよ」
答えながら、エリスは剣を構えた。
エリスの言葉に、テッサ姉とマリー様も「そうよそうよ!」「そうですわ!」と同調する。
「いちおう言っといてやるぜ。オレ様のレベルは6だ!」
「ふーん、6ね……」
「今さらやめるっつっても遅いぞ! はじめだ!」
一方的に開始を宣言して、エリスに突っ込んでくるワルド。
勝負は一瞬で終わった。
「遅いわよ」
「ぎゃっ――!?」
エリスは剣でワルドの斧を弾き飛ばし、呆気に取られているワルドの背後に回って剣の腹で頭を叩く。
すると、カエルがつぶれたような声を出してワルドは気を失った。
「勝負ありね」
そう言って、エリスはスカッとしたような表情で笑った。
さすが俺と同じレベル99だ。
瞬殺だった。
その後、俺はワルドを【猛き虎】の使っている幌馬車に届けるのだった。
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次回は3日後(8/25)の午前7時に更新予定です。
ちょっとバトルを入れたので、次はいちゃいちゃです……!




