33 ゴブリンジェネラル
評価・ブックマーク・感想、ありがとうございます!
21話、24~27話をけっこう大幅に改稿しましたので、お手数ですが、そちらも改めて読んでいただけますと幸いです。
詳しくは活動報告にて!
ユーリたちが待ち伏せていたゴブリンを倒したところを少し離れた木の上から見ている影があった。
その影――ゴブリンは素早く木から降りてリーダーに言われた通りに痕跡を残さないように慎重に、しかし素早く森の中を進む。
やがて、そのゴブリンは自分たちの巣にたどり着いた。
奥には、傍らに涙を流しながら震えている人間の女性を転がしている一匹の大柄なゴブリンがいた。
そのゴブリンこそ、まさしく突然変異モンスターの一種だった。
その名もゴブリンジェネラル。ゴブリンを軍隊のように統率するのに長けたモンスターだ。
ゴブリンジェネラルは人間の言葉を流暢に操り、戻ってきたゴブリンに問いかける。
「人間どもが来たか。どれほど来た?」
問われ、ゴブリンは指で丸を作った状態で3度、指を1本だけ立てた状態で1度、右手を掲げた。
「穴が3つもだと!」
ゴブリンが指で作った丸は穴――つまり、女を意味していた。自分たちの生殖器を突き入れる穴だ。
その穴が3つも来ているという報告に、ゴブリンジェネラルは興奮する。
当初の予定では、この穴を取り戻すためにやってきたそこそこ戦える人間どもを森に誘い込んで罠で一網打尽にし、その後に手薄となった街を襲撃し、穴を大量に手に入れるつもりだった。
最初に来るのは男ばかりだろうと思っていたが、まさか穴が3つも来ているとは。
「捕まえたか?」
その問いに、ゴブリンは首を横に振った。
「逃げられたか。追わせろ。穴はいくつあってもいい。必ず捕まえろ」
しかし、その問いにもゴブリンは首を横に振る。
「追えないだと? まさか……全滅したのか?」
今度は首を縦に振る。
その答えに、ゴブリンジェネラルは唖然とした。
罠に配置したゴブリンの数は100を超えている。その全てが全滅しただと?
「……逃げるか?」
手勢のゴブリンはまだまだいる。それこそ1000は下らない。
そして、ゴブリンジェネラルはその全てのゴブリンが一斉に襲ってきても勝てるほどの力を持っている。
だが、100以上のゴブリンを簡単に倒しきった人間たちを相手にして、勝てるという確証がなかった。
欲をかいて穴を狙った挙句、死んでしまっては元も子もない。
今回はこの穴だけで我慢して逃げることを視野に入れ始めた。
この切り替えの速さこそが、ゴブリンジェネラルが今まで生き残ってきた理由だった。
「せめて3つのうち1つくらいは手に入れたいものだが……」
逃走を視野に入れはしたが、それでもまだゴブリンジェネラルの頭は穴を捕まえるほうに傾いている。
「まぁ何匹殺されてもまた産ませればいいか。そいつらにちょっかいをかける。無理そうなら逃げるが、うまく捕まえられそうなら1つでも多く穴を捕まえるぞ。まずは――」
ゴブリンジェネラルは配下のゴブリンたちに次々と指示を出そうとして、
「誰を捕まえるって?」
巣の入口から人間の男の声がした。
* * *
時間は少し遡って、俺たちが待ち伏せていたゴブリンを全部倒した後。
「戦ってみた感じ、普通のゴブリンばかりだったみたいだな」
待ち伏せていたゴブリンたちを全て倒した俺たちは、状況の把握に努めていた。
「でも、ゴブリンがこんな風に罠を張ることなんてあるの?」
「……普通は考えられないわね」
テッサ姉の疑問に、エリスが答える。
ゴブリンは集団で行動することはあるが、罠を張るなんてことは聞いたことがない。
それは12年間ずっとゴブリンを倒し続けていた俺たちがよく知っていることだ。奴らはいつも本能に従う動物のような動きをしていた。
それがこんな、わざと痕跡を残して俺たちをおびき寄せ、待ち伏せで襲ってくるなんてことをしてくるのは、やはり突然変異モンスターの仕業なのだろうか。
『これはゴブリンジェネラルだな』
「わかるのか?」
『うむ。ゴブリンを統率するのはゴブリンリーダーでもできるが、罠まで張るとなるとその上位種――ゴブリンジェネラルがいるのだろう』
ジェネラル……将軍か。
ゴブリンを退治して連れ去られた人を助けるだけのはずが、予想外の強敵が現れたもんだ。
「そのゴブリンジェネラルってのは強いのか?」
『ノナリロで襲ってきた四天王とやらよりははるかに弱い』
そりゃそうか。突然変異とはいえ、四天王並みに強いモンスターがこんなところにいたら大変だ。
『ただ、先も言った通り、狡猾なモンスターだ。勝ち目がないと見れば逃げ出す可能性は大いにある』
「いちおう聞くけど、その場合って連れ去ってる女の人は……」
『連れていくだろうな』
ですよね……。
「それなら、早くゴブリンの巣を探そう。ゴブリンジェネラルが逃げ出す前にセレスさんを助けなきゃ。ただ、罠が仕掛けられてるかもしれないから、周りを警戒しながら――」
「どうしたの? ユーリ」
「なぁ、聖剣。ゴブリンジェネラルって、偵察みたいなことする?」
『そうだな。罠を張ってそれが成功したか確認する役割のモンスターを配置してもおかしくはない』
「……じゃあ、見つけられたかも。ゴブリンたちの巣」
「「「え!?」」」
実は俺にはスライムとゴブリンを倒していた12年間で現れたスキルがいくつかある。
そのうちの1つが、探知スキル――周囲の生き物の気配を探れるスキルだ。
スキルの練度によって探知できる範囲が広がり、精度も高くなる。
今の俺だと常に発動していると範囲内で何でもかんでも動いているものを拾ってしまって非常に疲れるので普段は使っていない。
森に入ってきた時も使ってはいなかった。
最初から使っていれば罠もすぐに見破れたな……。
ただ、待ち伏せていたゴブリンたちを倒してすぐに俺は探知スキルを発動させた。
周囲にまだゴブリンが残っていないか確認するためだ。
すると、ちょっと離れたところで、俺たちから遠ざかっていく反応を捉えた。
これがきっと、ゴブリンジェネラルに偵察を命じられたゴブリンだ。
俺たちはそのゴブリンを追うことにした。
その道中、行く手を阻むように多数のゴブリンが現れたが、レベル99が3人もいるパーティーなんだから手こずるわけもなく瞬殺していく。
「これ、私たちが行くのを邪魔しようとしてない?」
「ユーリ、大正解じゃん!」
「さすがですわ、ユーリ様」
3人に褒められるのをくすぐったく感じなら、とある場所でゴブリンが止まったのがわかった。
近くまで行くと、そこには洞窟のようなものがあり、探知スキルによるとその奥にひときわ大きな反応があった。きっとあれがゴブリンジェネラルのいる巣だ。
洞窟の入口まで近寄った時、奥から低い声が聞こえてきた。
「まぁ何匹殺されてもまた産ませればいいか。そいつらにちょっかいをかける。無理そうなら逃げるが、うまく捕まえられそうなら1つでも多く穴を捕まえるぞ。まずは――」
穴。
それがテッサ姉たちのことを指しているのはすぐにわかった。
ゴブリンジェネラルが人間の言葉を使うということはここまで来る途中で聖剣から伝えらえていた。
だから、それで驚きはしなかったが、大切な人たちを穴呼ばわりされ、俺は一気に頭がカッとなり、
「誰を捕まえるって?」
洞窟に飛び込み、唖然とするひときわ大きなゴブリンにそう言ってやった。
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次回は3日後(8/13)の午前7時に更新予定です。
果たしてゴブリンジェネラルは生き残ることができるのか!?
【こぼれ話】
この集団では、捕まえた女はまずゴブリンジェネラルが楽しみます。
ひとしきり楽しんだ後、普通のゴブリンたちにあてがわれます。




