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14 最後のヒロイン

評価・ブックマーク・感想、誠にありがとうございます……!

おかげさまでブックマーク登録数が100を超えました!

これからも精進いたします。



「騎士団から報告は受けておる。魔王が復活し、そなたが聖剣に選ばれ、【剣の勇者】になったと……」

「はい、国王陛下。こちらが聖剣でございます」


 神殿での聖剣獲得イベントが終わり、俺は国王陛下に召喚されていた。これもゲーム通りだ。

 玉座に座る国王陛下の言葉に答える。


「おお……これが。ワシにもその聖剣を手に取らせてもらえるか?」

「はっ。しかし……」


 国王陛下の要望に、俺は言葉を濁らせる。

 というのも、俺が手放すと途端に聖剣の金色の煌めきが消え去ったからだ。


「なるほど……伝承の通り、【剣の勇者】以外には使えん代物のようじゃな」


 国王陛下は残念そうにつぶやいた。

 そう、選ばれた者以外が持っても力を発揮しない……それこそが聖剣の性質だった。それもまたゲーム通りだ。


「うぅむ……やはりこの剣は本物の聖剣……しかし、困ったことになった。よもや、かつて世界を闇に呑み込まんとした魔王が復活するとは」

「お父様。最近のモンスターたちが活性化していたのはまさか……」

「おそらくは魔王の復活の影響じゃろう」


 国王陛下の隣に立ち、話しているのはマリアンヌ姫。


『俺の大切な仲間たちが寝取られるわけがない』の最後のヒロインだ。


 彼女はまだ俺の仲間になっているわけではない。

 これから仲間になるイベントが起きる。


「復活した魔王は、かつてのように世界を闇に染めようとするじゃろう。しかし、希望はある! ユーリよ、そなたが持つその聖剣じゃ! その剣はかつて魔王を倒した2人の勇者のうち、【剣の勇者】様が使っていた聖剣! それがあれば必ずや魔王の野望を阻止できるはずじゃ!」

「はっ!」

「危険な旅となるだろう。国民……それも、騎士とはいえ、そなたのような若者にこのような使命を託すのは気が引けるが、聖剣を使えるのがそなただけとあっては、そなたに頼るしかない。許してほしい」

「拝命いたしました。私は必ずや、魔王を倒してみせます!」


 そして、ヒロインたちを寝取られから守ってみせる!


「伝承によれば、かつて魔王を倒した勇者たちには心を通じ合わせる仲間がいたそうじゃ。その仲間たちにはそれぞれ体のどこかに紋章が現れると……」


 国王陛下の言葉に、俺は心の中で「やっぱりな」とつぶやく。

 やはりこれもゲーム通りだ。


 ちなみに、勇者には【剣の勇者】の他にもう1人、聖槍を持って戦う【槍の勇者】がいる。

 この【槍の勇者】にも仲間の体に紋章が浮かび上がるのだが、【剣の勇者】とではその紋章のデザインは違うものという設定だ。

 おそらくこれもゲームから変わってはいないだろう。


 俺の仲間として【剣の勇者】の紋章が浮かび上がる者は全部で3人。

 テッサ姉とエリス。そしてそしてもう1人は――


「まずは仲間を探すのじゃ。紋章は勇者と近しい者に現れやすいと伝承にある。心当たりを――」

「……お父様。仲間ならすでに1人、ここにいますわ」

「……マリアンヌ?」


 国王陛下の言葉を遮り、マリアンヌ姫はドレスの裾を大きくまくり上げる。


 そうして露わになった左太ももの内側には、剣を模した紋章が浮かび上がっていた。


 やべっ! ガッツリ見ちゃったけど、不敬じゃないのか、これ。

 俺は慌てて目を伏せるが、マリアンヌ姫のまぶしい太ももとその奥に秘められていた白いレース地の三角形は目にばっちり焼き付けていた。


「なっ! こ、これは……!」

「……やっぱりですわ。わたくしが【剣の勇者】の仲間なのです」


 実はこの国王陛下との謁見は、旅の目的が提示されるイベントであると同時に、マリアンヌ姫の参入イベントでもあるのだ。

【剣の勇者】の紋章が浮かんだマリアンヌ姫は、世界を守るために俺と一緒に旅に出る……というのがゲームでの流れだった。


 テッサ姉とエリスはともかく、マリアンヌ姫はどうなんだろう。

 もちろん、ゲームではすぐに仲間になってくれたけど、常識的に考えてお姫様が魔王を倒す旅に出るか?

 そんなことを考えていると、


「ノナリロ王国第一王女のマリアンヌ=トゥ=ノナリロと申します。職業は賢者ですわ。【剣の勇者】のユーリ様。魔王を倒すため、わたくしも仲間にお加えいただけないでしょうか?」

「えっ……」


 すごく丁寧に頭を下げられてしまった。

 大きく開いたドレスの胸元からは、テッサ姉にも勝るとも劣らない谷間が覗いていた。

 って、違う!


「あ、あの……よろしいのですか? 魔王を倒す旅となると国王陛下も仰っている通り、大きな危険を伴います。それでも――」

「ええ、かまいませんわ」


 キッパリとそう言って、マリアンヌ姫は綺麗に微笑んだ。

 構わないって……。


「わたくしはユーリ様にならばこの命を預けられますわ」

「そんな、なんで……」


 俺とマリアンヌ姫は今日が初対面だ。

 実は小さい頃にどこかで会っていたとかそういうこともない。

 こんな展開、ゲームのご都合主義じゃなければあり得ないだろう。


 まさか、聖剣入手イベントでは回避できたが、ゲームの強制力が部分的に働いているのか!?

 そう思ったが、それは違った。


「実はユーリ様に謝罪しなければならないことがございます」


 謝罪しなければならないこと……?


「ユーリ様がこの部屋に入ってきたとき、わたくしは勝手にユーリ様のステータスを鑑定したのです」

「えっ!」


 そんなイベントはゲームではなかった。

 やはり現実になったことで少しストーリーが変わっているようだ。


 それにしても、鑑定したって言っても俺のレベルは99だから、よっぽど練度が高くないとわからないんじゃないか?

 姫様が高レベルだってなら話は別だけど、テッサ姉やエリスと違って、モンスターを倒したりしてないだろうし……。


「驚きました。レベル99だなんて」

「何!?」


 マリアンヌ姫の言葉に、国王陛下が驚愕の声を上げる。

 俺も息を呑んでいた。なんでわかったんだ!?


「わたくしは王女という立場上、国内外を問わず、多くの方と顔を合わせる機会がありました。そんな中で、お会いする方の人となりを観察する癖がつきまして、それが鑑定スキルの発現につながったのです。それが6歳の時のことです」


 確かマリアンヌ姫は主人公(ユーリ)よりも1つ年下の設定だから……11年前!?


「ノナリロ王国は小さな国です。そんなわたくしたちが他国と渡り合っていくためには、信頼できる味方がどうしても必要でした。相手がわたくしたちを陥れようとしていないか……それだけでもわかるようにと磨いていた鑑定スキルでしたが、こうして【剣の勇者】様の実力を知ることにつながろうとは夢にも思いませんでした」


 はー……そりゃ練度が高くなるわけだ。

 そのおかげで、俺とのレベル差を覆して、ステータスを見ることができたのだろう。


 でも、俺のレベルがわかったからって躊躇いなく【剣の勇者】の仲間になる理由にはならないような。

 あ、レベル99なら安心して守ってもらえるからとか?


「そうして鑑定したのも、お父様がわたくしを魔王討伐の褒賞とすると仰ったからです」


 はぁ!? ほ、褒賞!? って、よくある魔王を倒した褒美として姫との結婚をってやつか!?


「お父様のお考えもわかります……ですが、わたくしは【剣の勇者】に選ばれた方が不甲斐ない人物であるようならば、断固拒否しようと思っておりました」


 おぉ……なかなか強いお姫様だ。


「しかし、先ほど、ユーリ様のステータスを鑑定して、それは間違いだと痛感したのです。あなたならば世界を救える……いえ、あなたにしかこの世界を救えないと……! そう思った瞬間、この紋章は現れたのですわ。何せ――」



 勇者様に好意を抱く者にのみ、紋章は現れるのですから。



 マリアンヌ姫はそう言った。


 そう……各勇者の仲間の証である紋章は、ゲームで言う好感度の証でもある。

 さっき国王陛下は「近しい者」と仰ったが、正確な条件は勇者に対して一定以上の好意を持つ者だ。

 そこからさらに好感度が高くなっていけば、仲間たちに紋章を伝って聖剣の力を貸したり、さまざまな効果が現れる。


 俺がレベル99だから惚れたと考えるとチョロすぎだけど、好意って恋愛方面だけじゃない。尊敬とか憧れとかそういうのも好意の一種だ。

 口ぶりから察するに、おそらくマリアンヌ姫は俺を通じて希望を抱いたのだろう。

 ゲームでも最初は魔王に立ち向かう主人公の勇気に敬意を払っていたヒロインだったはずだ。


 そう考えると、これもゲーム通りではあるのか。

 しかし、レベル99じゃなかったらどうなってたんだ?


 ちなみにゲーム初期時のテッサ姉とエリスの主人公に対する感情は、それぞれ家族の愛情と友情だ。今は2人とも恋愛的な好意みたいだからゲームとは少し変わっているけど。


 もっとも、勇者に好意を抱けば誰にでも浮かび上がるというわけではなく、素質がある者のみという設定ではある。

 その素質ってやつは詳しく設定しなかったけど……。

 もしかしたらこの世界だったら、3人以外に仲間ができたりするのかな。


「ユーリ様。無礼なことを考えていたわたくしをどうかお許しください。そして、伝説の賢者様のように、わたくしを【剣の勇者】様の旅にご一緒させていただけませんか? あなたのような強き方であれば、わたくしもこの命を預けられますわ」


 そう言ったマリアンヌ姫を見て、それまで黙っていた国王陛下は口を開いた。


「ユーリよ」

「はっ」

「マリアンヌの言っていたことは真実じゃ。ワシは、そなたが魔王を倒した暁には、姫とこのノナリロ王国の王座を渡すつもりでおった」


 マジかよ……。


「しかし、マリアンヌがそなたの力に感銘を受け、さらには【剣の勇者】の紋章が出るとは予想だにしておらんかった……これも運命なのかもしれんな。ユーリよ。レベル99であるそなたであれば、安心して任せられる。我が娘を頼む。そして、魔王を倒してくれ!」

「は、はっ! 必ずや!」


 こうして、最後のヒロイン――マリアンヌ姫の参入イベントが終わった。

 魔王を倒したらマリアンヌ姫と結婚できるというオマケ付きで。


最後のヒロイン、マリアンヌ姫の参加です!

よかったら、感想などで好きなヒロインなど教えていただきつつ、

「ちゃんと書けて偉いね!」と褒めていただけると嬉しいです!


次回は明日(7/21)の午前7時に更新予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] チョロかろうとい一途に慕ってくれるヒロインは可愛いに決まってる。ヒロインたちは元々ゲームキャラなんでハーレムも受け入れてくれるでしょう(笑) 立場上姫様が正妻になるかも知れませんがヒロインた…
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