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11/50

11 始まりの日

評価・ブックマーク・感想など、ありがとうございます!

一喜一憂しながら受け取ってます!



 18歳になった俺は、騎士団の入団テストを受けるため、王都に来ていた。

 ノナリロ王国では、18歳になったら一人前とみなされて働き始める。4年前にはテッサ姉が街の教会でシスターになり、2年前には俺より一足先にエリスが騎士団に入団した。


 俺とテッサ姉とエリスのレベルが上がっていることと、告白イベントが一度起きていることを除けば、全てゲーム通りに進んでいる。


 ただ、ここに来るまでにもひと悶着あり、来る前から俺は疲れていた。

 というのも、俺が騎士団に入ると聞いてテッサ姉が嫌だと騒いだのだ。


 12年前から俺に甘々で、グレマートンの一件以降は溺愛と言っていいほど俺に執心するようになったテッサ姉は、俺がいるからという理由で街の教会勤めになってしまった。

 それなのに、俺が王都に出て騎士団に入ると言うのだから、そりゃあ騒ぐというものだ。


 しかもよりにもよって、王都の騎士団にはテッサ姉のライバルであるエリスがいる。

「お姉ちゃんを捨てるの!?」なんて大声で騒ぐもんだから、父さんも母さんも辟易していた。


 ゲームでは、騎士団に入って最初の任務で俺は聖剣を見つけて【剣の勇者】に選ばれるというストーリーだったはずだ。

 聖剣を見つけるには、まずは騎士団に入らなければどうしようもないから号泣するテッサ姉を振り切って王都に来たのだ。

 いちおうすぐに会えることになるってフォローはしておいたけど。


 ……そういえば、12年前、前世の記憶を思い出した時には考えもしなかったが、もし仮に俺が騎士団に入らずに街で一生を過ごしたらどうなるのだろうか。


【剣の勇者】は現れず、もう一人の勇者――【槍の勇者】だけで魔王に立ち向かうのだろうか。

 それとも、俺じゃない他の誰かが聖剣を見つけて【剣の勇者】になるのだろうか。


 その場合、【剣の勇者】のパーティーはどうなるのだろうか。

 俺が【剣の勇者】になった時と変わらず、テッサ姉とエリスがパーティーになるのだろうか。


 もしこの予想が当たってたら、テッサ姉とエリスは魔王を倒すまで、ずーっとそいつと一緒にいるってことだろ?

 一緒にいるうちに、そいつになびいたりでもしたら……。


 幸いにして、テッサ姉もエリスも俺への好感度がMAXに近い状態だから、そんなことそうそうないとは思うけど、NTRハーレムルートだとその状態でも寝取られるから油断はできない。


 やはり俺が【剣の勇者】になるしかない。

 そのためにも、この入団テストを無事に受からなければ。


 そしてゲーム……『俺の大切な仲間たちが寝取られるわけがない』は、この入団テストの場面から始まる。



 ついに、この時がやってきたのだ。




 * * *




「次!」


 俺の番がやってきた。

 騎士団はいくつもあるが、まずは一括で入団テストを受けて、それからどこの団に配属されるかが決まる。


 入団テストはゲームと同じで先輩の団員との模擬戦だ。

 先輩との模擬戦と言っても、こちらは見習い未満。普通にやって勝てるわけはないことはもちろん先輩たちもわかっている。

 だから、勝ち負けというよりも資質を見るというのがこの試験の意味だ。


 ゲームでは、俺は先輩に勝ってしまい、その実力を買われてエリスの隊に入れられるというのが今後の流れ。だというのに、


「来たわね、ユーリ」

「……なんでいるのさ、エリス」


 対戦相手として俺の目の前にいるのはエリスだった。


 2年前に街を出た時からすでにすごく綺麗だったが、この2年でさらに美しさに磨きがかかっている。健康的な魅力っていうのかな。力強さと健康さが溢れ出ていた。

 さすがに胸は、テッサ姉には敵わないけど……。


「おい、鬼神のエリスだぞ……」

「女なのにめちゃくちゃ強いって噂だぜ」

「この間の違法奴隷商を捕まえたのも鬼神の仕業だってよ」

「あーあ、あいつ死んだな」


 え、何その鬼神って!

 街を出てからの2年間で何したのさ、エリス!


「ユーリの相手はアタシよ。かかってきなさい」


 いきなりゲームと違うことが起きた。

 この場面ではいわゆるモブの先輩騎士と戦うはずだ。

 それなのに、エリスと戦うことになるなんて。


 ゲーム通りに進めるためには……え。俺、小隊長(エリス)に勝たなきゃいけないの?

 なんでハードル上がってるんだよ!


 ……だが、文句を言っても仕方ない。

 俺は模擬戦用の木剣を構える。


 なんだか懐かしい。

 2年前、エリスが王都に行くまでは毎日のようにこうして試合をしていたんだ。

 小隊長と戦うことになるなんてとは思ったが、久しぶりにエリスと戦えて、俺は少しワクワクしていた。


「この2年間、訓練サボってないわよね?」

「もちろん」

「そう……なら、今の実力を見せてちょうだい!」


 そう言ってエリスは一足飛びに間合いを詰めようとして、


「お待ちください、エリス隊長!」


 横やりが入った。


「アンバー副長……」

「こんな新兵の相手など、エリス隊長がするまでもありません。私が相手します」


 何だ何だ?

 割って入ってきたのは大柄な男だ。

 副長って……エリスの隊の?


 俺が戸惑っていると、アンバー副長と呼ばれた大柄な男が俺と対峙する。


「エリス隊長に代わり、私が相手しましょう。さぁ、かかってきなされ」


 エリスは大きく息を吐き、忠告する。


「アンバー副長。彼は強いわよ」

「私よりもですかな?」

「ええ」

「――っ!」


 エリスの端的な言葉に、アンバー副長は憤ったようだ。

 鬼気迫る表情で俺を睨む。


「いくぞ、小童!」


 そして木剣を構えて突進してきた!

 その体格にふさわしい、荒々しい勢いで突っ込んでくる。


 だが、油断、慢心、苛立ち……全部見えてるよ。


「ぬあああああああああああああああああ!」


 アンバー副長の渾身の一撃は、受けるまでもなかった。

 大ぶりで軌道が読みやすいテレフォンパンチみたいな一撃だ。

 俺はすっと避けて、すれ違いざまに隙だらけの体に一撃を与えた……


「ぐわああああああああああああああ」

「え?」


 ほんの軽く当てただけ。

 俺を見くびってほしくないという伝えるための一撃だ。


 ところが、アンバー副長はその一撃で吹っ飛んでしまった。

 そのまま壁にぶつかって目を回している。


 ……あれ? これって、もしかして例のアレ?



 俺、何かやっちゃいました? ってやつ?



「そこまで!」


 エリスがそう言い、俺のところまでやってくる。


「少しは手加減しなさい。レベルの差がどれだけあると思ってるの」

「……どれくらいあるの?」


 最弱のスライムとゴブリンを倒してただけだし、せいぜいレベル10台後半かなと思ってるけど。


「彼はレベル一桁。ユーリは99よ」

「……え?」




 どうやら俺たちは、スライムとゴブリンを倒し続けて知らない間にレベルマックスになっていたようだ。


よかったら、感想や評価などを入れて褒めてくださると嬉しいです!

次回は明日(7/18)の午前7時に更新予定です。


小説家になろうに投稿するならこれだろと書いてみたかったテンプレ展開です!

ここからしばらくの間、ユーリ無双が続きます。


【こぼれ話】

アンバー副長はエリスを慕っていて、模擬戦を何度も願い出ていますが、

(エリスはレベル差がわかっているので)断られ続けています。

それなのにエリスがあっさりとユーリと模擬戦をしようとしたのでムカついています。

そして彼の出番はここで終わりです。

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