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廃人と深夜のコンビニと天使みたいな女

時刻は朝の3時を回ろうとしていた。

暗い部屋の中でただカチカチと寂しげな音だけが響いていた。

パソコンの画面に照らされた少年の顔はまるでヴァンパイアのようだった。肌は不健康に青白く、目の下にはクマが浮かんでいる。今にも気絶しそうな顔で淡々とソシャゲをこなす少年の姿を一言で表すとするなら、そう。彼はまさしく、「廃人」だった。


「腹減った…」


ボソッと独り言ちると、おもむろに立ち上がり財布を持って部屋を出た。


顔はヴァンパイアのそれだったが、足取りはゾンビだった。ふらふらと歩く彼のシルエットだけを写したのなら酔っ払った大学生に見えなくもない。


家を出て3分もしないうちに人工的な光に照らされたコンビニが見えてくる。誰かが使っているのを見たことがない外食スペースを通り過ぎ、自動ドアを通る。小気味の良い入店音が鳴り、身長が2メートルあるのではないかという巨人のような金髪の店員が気怠げに「らっしゃーせー」とラーメン屋かのような掛け声をあげる。


「ファ●チキください」


「ここセ●ンっす」


「あー…んじゃから●げクンで」


「わざとっすよね」


違う、ただ頭が回ってないだけなのだ。


「まぁ似たようなもんで大丈夫です…」


「な●チキでいいすかね」


テキパキと品を用意し始める金髪店員とそれを見る少年以外に店内に人はいなかった。



ドガーン、と遠くで音がした。爆発音のような音だ。それを気に留めた様子もなく二人はコンビニの中で気まずい空気を保っていた。

ドガーン、今度は近くで音がした。それでも気にする気力など両者ともに残っていなかった。

ドガーン、コンビニの向かい側の家が爆ぜた。


「え?」


流石に無視するわけには行かず、少年は外に出て状況を観察した。

5キロほど上空で何かが戦っている。それの衝撃波や何らかの飛来物で何かが爆発しているのだろう。


「白いドレスに…翼?顔も可愛い、天使みたいだ」


繰り返すが、戦闘が行われているのは5キロ上空だ。


「もう片方はゴリラに、こっちも大きな羽が生えてるけど、ゴキブリみたい…気持ち悪い」


上空でにらみ合う二人を観察しブツブツと喋る少年に、いつの間にか横にいた金髪店員は問いかける。


「いや上空のなにを見てるんですか、俺には二つの点しか見えないっすよ。なんかにらみあってるっぽい…?」


「あー、今は確かになんか牽制しあってるっぽいです。雰囲気的にそろそろゴリラの方がしかけそうですが…」


少年の観察通り、天使の方へと猛突進するゴリラ、その巨体に見合わない速度で天使に右フックを喰らわせようとする。だが、紙一重のところで天使は攻撃を躱し、手から光る何かを放った。至近距離で放たれた故にゴリラは避けきれず、その体に直撃した。空に、花火ができた。


跡形もなく吹き飛んだ羽ゴリラを無視し、天使は急降下を始めた。自由落下の速さで落ちていく彼女だがその表情は冷徹。無表情を極めていた。


「今、天使の方がゴリラを殺してその後僕たちの目の前まで落下しています」


「いや、それ俺たちやばくないすか?次はお前たちだ!みたいな言われません?」


「まぁそうなったら終わりですよ。おそらく彼女の移動スピード尋常じゃないですから、彼女が本気で殺しにくるのなら僕たちは逃げられません」


「そんなぁ…」


冷静に状況を分析する子供とそれに絶望する大人。そこそこシュールな光景であった。


自由落下していた天使は少年たちの目の前まで落ちると地面スレスレで止まった。足をつかずに、ギリギリのところで浮かんでいるのだ。

彼女は少年の瞳と、その奥にある物をジッと見つめ、その冷徹な表情を一切崩さずに手を差し伸べた。


「あなたのことを探していた。来て、くれる?」


事なかれ主義の少年にとってこのような非日常は特に望んだものでもなく、怪しい誘いを受けたいわけでもなかった。だが、本能は真逆のことを伝えていた。

少年は本能のまま、その手を掴む事しかできなかった。


深夜のコンビニってなんだかワクワクしますよね

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