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一つ違いの姉妹

「あやな~。」

娘の渚が彩渚を呼ぶ。

「な。」

彩渚は1歳になったばかりで、ようやく音声を発することが出来るようになったレベルだ。

渚と呼ぶことは出来ず、「な。」と呼ぶのが精一杯だ。

だが一番最初に発した言葉の「な。」が、従妹の渚を呼んでいるのか、母親の渚を呼んでいるのかは不明だ。

だが見ている限りは両方ともらしく、彩渚にとって、従妹の渚も母親の渚も同じらしい。

どっちが反応しても、きゃっきゃと喜んでいる。


夏休みの朝の時間、渚と彩渚が布団のうえに並んで寝転がっている。

朝起きてから二人のそれぞれの母親である律子と、渚、なぎ姉貴からおっぱいを貰って満足した二人はオムツ交換のために俺のところに連れてこられた。

渚はご飯を食べるようになっているが、おっぱいは大好きだ。

二人の母親から貰えるだけ貰っている。

彩渚も離乳食を食べるが、おっぱいは大好物だ。

どっちかと言われたら、迷いなく母親に突撃している。

かくしてゲップが出るまで満足した二人は俺の前で転がった。

渚はトイレに行けるようになっているが、夜はオムツをして寝ている。

昼間も紙パンツをはいていることが多い。

彩渚は当然オムツ生活だ。

濡れて気持ちが悪くなると、なぜか俺のところにやってくる。

いっちょまえにもじもじシナを作りながら交換を強制してくる。

俺は一人ずつ丁寧に綺麗にしてオムツを交換した。

綺麗なオムツになった二人は気持ちがよいのかご機嫌で布団のうえをゴロゴロしていた。


そのうちに渚が起き上がって四つん這いになった。

渚は仰向けに寝ている彩渚の顔を覗き込んでチューをする。

彩渚は渚にチューをされて喜んでいる。

渚も彩渚にチューをして嬉しそうだ。

二人はしょっちゅうチューをしている。

二人の母親も二人に見境なしにチューをしている。

二人の母親にチューをされる渚も彩渚も喜んでいる。

なぎ姉貴と律子も時々チューをしている。

「律子が可愛くてな。ついチューをしてしまうんだ。内緒だぞ。」

俺に言って誰に内緒なんだよ、なぎ姉貴よ。

姉貴にとって俺はダチなんだろうか。

俺は律子の夫なんだがなあ。


チューに満足して寝転んだ渚がこんどは彩渚を抱き寄せる。

抱き寄せられた彩渚はよだれを流しながら渚に抱きついている。

抱きついてくる彩渚を渚は嬉しそうに抱きしめている。

抱き合っている二人は微笑ましくてとっても可愛い。

寝転がって抱き合っている二人に覆い被さるようにして俺は抱きしめた。

二人がきゃっきゃと声を上げる。

ふにゃふにゃした二人をムギューとすると、更に声が上がる。

本当に可愛い娘達だ。


客観的に19歳になった男の俺が、2歳と1歳の女児を抱きしめて愉悦に浸っている姿は、無条件で警察に通報されるレベルだろう。

だが誰も見ていない自宅での密室での出来事だ。

誰に遠慮するでもなく、心ゆくまで二人の腹に俺は顔をすりつけて遊んでいた。

別に二人も嫌がっているわけではなく声を上げて楽しそうに笑っていた。


たまたま通りすがった暁兄貴が冷めた眼で、おまえは頭は大丈夫かと真剣に言っていたが、兄貴も渚相手にデレデレしているじゃねえかと俺は言い返した。

だが、おまえとは違うわ、おまえは危ないレベルに足を突っ込んでいるわ、言い返された。

そんな兄弟の会話を聞いていたお袋からは、50歩100歩よね、と言われた。

俺は誰に何といわれようが渚と彩渚が可愛い。


渚が時計をみて、起き上がった。

渚はハイハイで移動することが多いが、ちゃんと歩けるようになっている。

起き上がった渚はテレビのリモコンを手に取った。

可愛い指でボタンをピッピと押していく。

2歳児がテレビを付けて、幼児番組がテレビの画面に映し出される。

時計を見て番組が始まる時間だと気がついたのだろう。

渚は賢い、将来は偉くなるに違いない、親ばかの俺だった。

渚は彩渚と並んで腹ばいになってテレビを食い入るように見ている。

そのうち番組の内容に合わせて、手を叩いて歌らしきものを歌って、楽しんでいる。

となりの彩渚も、よだれを垂らしながら笑って手を叩いている。

俺は画面を見ていて、笑う場面じゃないだろうよなと思っていた。

画面には悪い妖怪が子供をさらう場面が流れていた。

内容は理解していないんだろうと思いたい。

内容を理解していて笑って手を叩いているのなら、将来が心配だ。


テレビを見終わった二人は、再び布団の上で寝転がって遊び始めた。

抱き合ったり離れたり、チューしたり笑ったり、実に忙しく楽しく遊んでいた。

その二人を俺は何をすることなく飽きることなくずっと眺めていた。


「聡、何をしているんだ。」

姉貴が声を掛けてきた。

「渚と彩渚を見ている。」

「いや、それは分かるんだが、もう昼だぞ。ご飯に呼びに来たんだが、おまえは午前中は何をしていたんだ。」

「可愛い渚と彩渚を見ていた。」

まるっきり変質者の答えだった。

姉貴を見つけた、彩渚と渚は瞬く間に姉貴に接近していった。

「二人ともご飯だぞ。」

笑顔の姉貴は二人を軽々と右手と左手に抱き上げて連れて行ってしまった。

置いてけぼりを喰らった俺は、二人を取られて茫然としていた。


「聡、何をしているの。」

「渚と彩渚を姉貴に取られた。」

「バカなことを言ってないで、ご飯にしよ。」

律子が俺を呼びにきてくれた。

渚と彩渚がいなくなった部屋で一人ぽつねんといた俺を律子はひっぱって行ってくれた。


台所では、テーブル付きの幼児用の椅子に座った彩渚が眼の前に置かれたご飯を前によだれを垂らしていた。

彩渚がテーブルを可愛い手のひらでバンバン叩いている。

早く食べさせてくれと言う、ご飯の催促だ。

彩渚がよく食べるのは、やはり姉貴の娘だからだろうか。

ソフトボールをしていた時代の姉貴もよく食べていた。

その時代の姉貴は筋肉質の引き締まった体型をしていた。

アスリートとして理想的なバランスを保っていただろう。

だが、いまは適度に筋肉がおちてやわらかい女性らしい体型となり、身長の高さもあってすらっとした美人になっている。

対照的に、むかしから律子は小食だった。

姉貴にもっと食べろといつも言われていたが、おなか一杯だから、姉貴にあげると、姉貴に譲っていた。

律子は俺と付き合うようになってからは、俺にもよく譲ってくれた。

譲ってくれたというか、俺は残飯処理係にされていたような気もする。

美味しいものだったら俺も嬉しかったが、そうでないことも多かった。

「いやあ、美味しくないかなって思ったんだけどさ、でも一口食べてみたいじゃない。だから注文してみたの。思った通り不味かったから、聡にあげるわ。」

非道い律子だったが、律子が好きな俺は黙って残りを完食した。

姉貴が慰めの視線なのに、助かったという顔をしていたので、これまで残飯処理の役目を姉貴が果たしていたんだなと理解した俺だった。

律子によく似た娘の渚は、そういうところは母親に似るんじゃないよ、というのが、俺と姉貴の切なる願いだ。

その渚は、律子によく似ていて、小食で体型も小柄で可愛い。

スプーンをもっていくと、あーんと口を開けて食べてくれるが、もぐもぐをかなり長い間している。

次のあーんもだいぶたってからになる。

次のあーんまで、渚はたいてい、彩渚が一生懸命食べているのをニコニコと眺めている。

渚は自分で食べられるようになっているから、本来は食べさせる必要はない。

俺が可愛いから渚の口にご飯を運びたいだけだ。

渚の手にスプーンを握らせると、渚はゆっくりと自分でご飯を食べている。

彩渚が自分のご飯を食べてしまって悲しそうな顔をしていると、渚はおもむろに自分のスプーンで彩渚にあーんをし始める。

彩渚は眼を輝かせて喜んで、渚のご飯も食べ始める。

渚は自分の口と彩渚の口にスプーンを運んで、一緒にご飯を食べるのが大好きだ。

彩渚は自分と渚の分を含めて食べているので、成長速度が速い。

彩渚はご飯を分けてくれる渚が大好きだ。


お昼ご飯を食べた二人は満足して、うつらうつらとし始め、お昼寝タイムに突入する。

俺は二人を布団に並べて寝かせてタオルケットを掛ける。

二人とも可愛い寝顔で、口元が笑って幸せそうだ。

そしてその隣に俺も寝転がって一緒に昼寝タイムだ。

二人の寝息とぬくもりを感じながら俺も夢の世界に旅立った。

しばらくして気がつくと律子が俺の隣に寝ていた。

律子のお腹のなかには年末が予定日の二人目が居る。

可愛い律子は寝顔も一級品だ。

俺は律子を起こさないようにそっと抱きしめてキスをする。

律子から律子の匂いが立ち上っていて落ち着く。

俺は律子を抱きしめながら再び夢の世界に落ちていった。


次に眼が覚めると、渚の顔が俺の眼の前にあった。

渚の口からよだれが垂れて俺の顔にかかっている。

時間はおやつの時間だ。

彩渚も眼を覚まして、もの欲し気な顔をしている。

ひょっとして律子のおっぱいが飲みたいのか。

俺がどいてやると、彩渚は器用に転がってきて、横向きに寝ている律子の服の前ボタンを開けようとした。

上手くいかなったので、渚が手伝ってやっていた。

目指すものを露わにすることに成功すると、彩渚は笑顔でかぶりついていった。

渚は彩渚の背中側にちょこんと座り、身体を伸ばして彩渚が咥えているのとは反対側を咥えて、嬉しそうに飲み始めた。

二人の幼児に襲われているにも関わらず律子はすやすや寝ていた。

母親というのは強いもんだなあと、改めて関心した俺だった。


「それはどういう状況だ。」

姉貴が部屋にやってきて俺に尋ねた。

「律子が彩渚と渚におっぱいをあげている状況だな。」

俺は姉貴の質問に見たまま答えた。

渚と彩渚のおやつタイムに律子が襲われているシーンを見つけた姉貴が呆れたように聞いてきた。

そのうちに律子が眼を覚まして事態に気がついた。

「あれ、なにどうしたの。ありゃ、渚に彩渚。二人ともおっぱいのんでたの。いいよ、いいよ。好きなだけのみなさいよ。」

律子はおっぱいを飲んでいた二人を抱きしめて左右から吸い付かれていた。

律子からおっぱいが出なくなったら、二人は姉貴に突撃していった。

姉貴も嬉しそうに二人に左右から吸い付かれていた。

俺が眺めていると律子に言われた。

「聡も飲みたい?」

「いや、いらんから。」

いや律子のは飲んだことはあるんだが、さすがに美味しいと思えないんだよね。

赤ん坊と大人の味覚は違うと思う。

「本当に要らないのか?」

姉貴にも言われたが、遠慮しておいた。

律子ならともかく、姉貴にかぶりついたら誠兄貴に殴られるだろう。


おやつタイムが終了したら、渚と彩渚の二人はおもちゃを取り出して遊び始めた。

ぬいぐるみを沢山並べて、笑っている。

何をしているのか、俺にはよく分からない。

ぬいぐるみに話しかけて、ぬいぐるみの置き場所を変更している。

渚と彩渚の間でも意思疎通がなされているのかも不明だ。

だがそのうちに疲れてきたのか、二人とも音も立てずに布団の上に倒れて、すやすやと寝始めていた。

俺は再び二人にタオルケットを掛けて風邪をひかないようにした。

やはり寝顔を見ていると和んで幸せだ。

俺はひたすら二人の寝顔を眺め続けていた。


仕事から帰ってきた親父が部屋の入り口から俺の様子を見ていたらしい。

「聡はいったい何をしているんだ。」

親父がお袋に尋ねていた。

「渚と彩渚の世話をしているんでしょ。」

「朝も同じことをしていたじゃないか。」

「朝から今までずっと同じことをしていますよ。」

「あいつは一日何をしているんだ。」

「二人の世話をしていましたね。」

「大丈夫か。」

余計なお世話だ。

俺は渚と彩渚の相手が一日出来て嬉しいんだ。


家族全員が揃っての夕食になった。

渚と彩渚は隣り合わせて座っている。

二人を引き離すと、二人が半狂乱になって手が付けられなくなる。

だから仲良く並んで幼児用椅子に収まっている。

大人とは異なる幼児用の食事が二人の前に並べられる。

渚は自分でスプーンを手にとって、彩渚の口にあーんを開始した。

彩渚は喜んで渚の御飯を貰っている。

俺も彩渚のご飯を彩渚の口にスプーンであーんをする。

彩渚は、もぐもぐと渚と俺からご飯を貰ってモリモリと食べている。

渚が全然食べていないことに気がついた律子が自分の口の中のものを渚の口に運んでいる。

渚は嬉しそうに律子から口移しでご飯を貰っている。

俺がそれを何気なく眺めていたら姉貴に言われた。

「聡、口移しで食べさせて欲しいのか?」

ばかやろう、そんなことを姉貴にして欲しいわけがないだろうが。

「勘弁してくれ。俺を変態にするつもりか。」

「立派な幼児性愛の変態じゃねえか。」

暁兄貴に言われた。

「兄貴に言われたくねえわ。俺の娘に手を出すな。」

「それブーメランだぞ。俺も同じセリフをお前に言えるぞ。」

誠兄貴に言われた。

俺たち兄弟の不毛な口げんかを聞いていたお袋が言った。

「ああ、息子なんて意味ないわよね。やっぱり娘よね。」

いや、お袋よ。息子がいたから、律子や姉貴に渚と彩渚が我が家に来てくれたんだよ。

「お前ら、警察のやっかいにだけはなってくれるなよ。」

親父、そんな真面目に真剣に言わなくてもいいだろう。

特に俺に向ける視線が痛いんだがなんでだよ。


楽しい、個人的には、非常に楽しい、端から見たら幼児性愛の変態の食事は終わった。

俺は、彩渚にスプーンであーんをして貰ってご飯を食べたんだ。

彩渚は俺と渚からご飯を貰っていたので一番最初に満腹になりご馳走様をしていた。

その時点で俺がご飯を食べていないことに気がついた彩渚が気を使ってご飯を食べさせてくれたんだ。

だが俺に食べさせてくれている途中で、律子がデザートを食べましょうと彩渚に声を掛けてきたので、興味の対象が移動して放り出されたが。

可哀想に思ってくれた誠兄貴がスプーンを突きつけてきたので、さすがに要らねえよと自分で食べた。

その俺の姿が限りなく情けなく見えたのだろう。

デザートのタルトは律子がため息をツキながらも俺の口に運んでくれた。

親父とお袋が、律子に食べさせて貰って喜んでいる俺から眼を逸らせていた。


夕食が終わったら楽しいバスタイムだ。

幼児性愛者の俺は、渚と彩渚と一緒に風呂に入った。

彩渚は一歳で捕まり立ちは出来るが風呂場では滑って転ける可能性がある。

だから俺はがっちりと抱きしめて肌身離さないようにしていた。

渚も転けたら危ないから、しっかりと抱きしめていた。

俺に抱きしめられた渚と彩渚はどうすることも出来ず、大人しくしていた。

風呂桶に浸かった俺たちは、渚が並べだしたアヒルを眺めていた。

何処においてあったんだという数のアヒルが湯面一杯に並ぶ。

渚はひたすら無心にアヒルを並べて動かして沈めて浮き上がらせて遊んでいた。

彩渚はなぜかアヒルには手を出さない。

アヒルは渚のものというルールがあるんだろうか。

「そろそろあがる?」

律子が声を掛けてきた。

「二人とも身体流してないけど。」

「何をしていたの、聡。」

「三人で風呂に浸かって、渚がアヒルで遊ぶのを眺めていた。」

律子と後ろにいた姉貴に絶句された。

俺たちが風呂に入って既に一時間近くが経っていた。

彩渚も渚も顔が赤くなって身体は十分過ぎるほど温まっていた。

「夏場に何を考えているんだ、お前は。二人が脱水になったらどうするんだ。」

俺は姉貴に怒られた。

「俺はどうでもいいのかよ。」

俺が文句を言うと、姉貴に無言で殴られた。

二人の娘は、二人の母親に手早く身体を綺麗に洗われて、風呂場から立ち去った。

立ち去る時に、渚が湯面のアヒルを切なそうに見つめていたのが印象に残った。

俺は一人で大量のアヒルを片付けた。


布団には、パジャマを着た渚と彩渚が並んで居た。

赤かった顔はずいぶんと白くなっている。

俺を見つけた二人はきゃっきゃと笑ってくれた。

俺は笑顔の二人を抱きしめて頬ずりをした。

渚と彩渚の可愛い手が俺の頭をなで回す。

俺はいつもの絵本を取り出した。

渚と彩渚は絵本の読み聞かせが大好きだ。

だが、渚の趣味は偏っている。

いろいろな絵本を読んでみたが、アヒルの話が一番気に入っているようだ。

アヒルの冒険談で、ひたすら延々と冒険するだけで、終わりがない。

まるでお風呂場で遊んでいるときの光景と同じだ。

それを俺は渚と彩渚が寝るまで読み続ける。

彩渚は2-3回読むうちに寝てしまう。

だが渚は10回を越えても不思議そうな顔をして、もう1回ということがある。

俺が疲れて寝てしまうか、渚が寝るのが先か、勝負だ。

律子は俺が絵本を読んでいるときには姉貴と一緒に早々に寝てしまう。

渚が寝てくれないと、俺も寝ることが出来ず、寝不足になる。

渚は次の日は昼まで寝ているが、俺は朝には起きないと律子に怒られる。

理不尽だが、渚の寝顔が可愛くて、まあいいかとなってしまう。

俺の一日の繰り返し。


誤字脱字、文脈不整合等があれば御指摘下さい。

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