挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ノーセーブ・ワールド 作者:天峯 蒼

第一章

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

10/14

第10話 観光オルトの町

「学校では友達ができた?楽しい?」

「うん!エリカちゃんに、リリアちゃんに、クラリスちゃんに…あ、来週は、学校で遠足もあるんだよ」

「レベッカは私と違って社交的だから心配はしてなかったけど、すぐに友達が作れて羨ましいな」

「そうなの?でも、昨日もお姉ちゃん夜遅くまで、友達とおしゃべりしてたよね」

「え、ああ…まあね。アハハ」

 まだ、7歳程のレベッカの純粋な問いに、レベッカの姉は笑って誤魔化していた。
 本当は、友達ではなく最近できた彼氏であり、気恥ずかしくてレベッカにも父にも教えていない。レベッカが姉に彼氏がいたのを知ったのは、動かなくった姉であるアンを見送る際に泣き伏せていた男性を見た時である。

(お姉ちゃん?そっか、これは…夢か)

 幼い頃の自分と姉が故郷の町を歩いて買い物をしている様子を、レベッカはぼんやりと眺めながら、自分が夢を見ている事に気づく。
 レベッカの姉であるアンは、レベッカより10歳の差が離れている。レベッカとアンの父は仕事で忙しく、母はレベッカを生んだ3年後に亡くなっている。
 そのため、レベッカとしては年の離れたアンは姉でもあると同時に、母親代わりのような存在もあった。
 アンにとっては母の忘れ形見でもあるレベッカをたいそう可愛がり、出来る限りのお世話を自分からしていた。家が裕福なのもあり、家事手伝いをしてくれる人もいたことから、アンはレベッカにゆとりを持って愛情を注ぐ事ができたとも言えるかもしれない。

(お姉ちゃん…)

 レベッカは、夕日に照らされた道を歩きながら、姉と手をつないで歩く幼い頃の自分を見ていたが、不意に場面が変わる。


「お、おね、おねえちゃん…どうして」

 この日は、父が珍しく1日中休みが取れた日。そのため、家族3人でレストランで食事を食べ、久しぶりの家族の会話を楽しんだ帰り道である。

 その浮ついた空間は、一瞬で恐怖が支配する空間へと変わった。

 路地がユラリと出てきた血走った眼をした男が、狂った怒声と共に、ナイフを振りかざして走って来たのだ。狙いは、久しぶりの家族との食事ではしゃぎ、二人の前を歩いていたレベッカに向けられた。
 突然襲い掛かってくる男に驚いたレベッカは、後ろに尻もちをつき、奇跡的に男のナイフの突きを回避することができた。

 ただ…それが悪かった。男が尻もちをついて動けなくなったレベッカ目掛けて、ナイフを振り下ろそうとした、瞬間にアンがレベッカを庇うように覆いかぶさってしまったのだ。

(私が…あの時に死んでいれば)

 結局どうなっていたのかは分からない。男は、姉のアンを刺した直後、父に取り押さえられ、周りにも人がいた事から、そのまま警察が来るまで確保することができた。

 もし、レベッカが尻もちをつかず刺されていたら、父の先を走っていたアンも差されていた可能性はある。

でも、無事だった可能性もある。

この事件は、父に対して恨みを持つものが、目の前で愛娘が死んでいく様を見せつけるための凶行だった。それでも、レベッカにとっては、目の前で血に沈んでいく姉を思い出すと、まるで自分が殺してしまったのではないかと錯覚してしまっていた。

 レベッカの目の前で広がる過去の惨劇。

「レ…レベッカ、大丈夫?」

 アンは、アスファルトに倒れた状況で、泣きながら顔を覗かせる幼いレベッカに血に染まった手で頬に触れながら言葉をかける。

「わ、わたし、私は大丈夫。だけどお姉ちゃん、ひっく。私のせいで」

 レベッカは差し出された手を両手で祈るように包み込む。

「そっか。よかった……」





(こっちに来てから始めてになるかな。この夢)

 目が覚めたレベッカは、寝ている間に流していた涙を拭いながら今日みた夢の事を思い返していた。
 脳裏に浮かぶのは、姉であるアンの最期の瞬間。
 痛みで苦しむのではなく、レベッカが無事だったことに安堵しながら微笑みながら、二度と開かなくなる瞼を閉じていった表情である。

(もう…あんな気持ちになりたくない)

 何もできない自分。

 心を塗りつぶす絶望感。

 病院の個室で姉の手を握りながら泣く父を黙って見てるしかない自分。
 その事件以降、より過保護になった父の下で、何とか身を守るためという理由で、柔道、キックボクシングなど習うことができた。
 もう守られない。今度こそ守って見せる。そう誓って心も体も強くなれるように努力をした。

 だけど…

「結局、なかなか上手く行かなかったな」

 父は過保護になったといっても、よりお金を稼ぎ使用人やボーディガードを増やし、本人は更に仕事にのめり込むようになってしまった。
 そのため、家族との繋がりは、より希薄なってしまった。

「心を開けるような友達もできなかったし」

 事件後のレベッカは、悪い事…イジメや悪口などに強い嫌悪感などを持つようになり、口を出す事が多くなった。実際に解決することもできた。しかし、結局レベッカの父親の影響が強かったことが解決に一番貢献した。

 そして、周りにいた友人も取り巻きのような者たちだった。そもそも、ボーディガードが送り迎えにいるのだから、目だって仕方がなかった。
 結局周りには、あまり親しい人友人関係を作ることをレベッカはできなかった。

 それどころか、取り巻きが自分に聞かせる他者の悪口だったり、自分と向き合わず仕事にのめり込む父、そしてレベッカの意思ではないが結果的に権力の笠に被っている自分に嫌気さえ感じてしまっていた。
 守りたいけど明確に守りたい思えるものが今一明確にすることができず、少しずつ姉のように守る立場になりたいという決意した自分を見失っていく事にレベッカは、恐怖を感じてしまっていた。

「だけど、不思議だよね。まだ、会って間もないのに、命を懸けても守りたいと思えちゃうんだから」

レベッカは、目を閉じながら一緒に行動を共にするメンバーを思い浮かべる。

(何が違うんだろう)

 命がけの世界に来たからか?
 でも、元の世界の取り巻きと一緒だからって、本当に命を懸けて守りたいと思うだろうか?
 少しの自分の気持ちを確認するように、目を瞑りながら自身に問いかけた。

(思わないだろうな。あの人達は、結局自分の事しか考えからかな)

 それに比べて、優もラウノもヒナも自分に近しい気持ちを抱えている…気がする。

 4人になって余裕があったのも事実だが、優と二人で初めてゴブリンと戦った際は、決して余裕という訳ではなかった。
 特に2体連続で戦う事になった際は、危険だったと言える。
 それでも、私同様に逃げるという選択を取るそぶりは優には感じなかった。

(ヒナちゃんも、怖がりながらもサポートしてくれたし、ラウノも何回か危ない目に合わせちゃったけど、軽口で済ましてくるし)

 だからこそ、守りたいと思うのかもしれない。

「集まるまで、もう少し時間あるしシャワー浴びようかな♪」







「ここが薬品系を売っているショップか」

 優達は、朝食を宿で軽く摂った後は、地図を確認しながらオルトにあるショップに足を運び、どのようなものが売っているのか確認することにしてみた。

「魔女が薬を売っているようなお店ですね」

 ヒナが言うように、店内の棚には様々な色をした液体が入った容器が置かれている。

「随分と種類があるよね。収納数に制限があることを考えると、何を持って行くのがシビアに考える必要があったりするのかな」

 空間に収納できる広さには制限がある…とカードから判断できる。
 システムカードで持ち物を確認できるが、その際にカードの右上に収納率5%といった数字記載されているのだ。そのため、手に入った持ち物全て収納することはできない。

「だね。ただ、どれくらいで限界になるか分からない事を考える、何とも言えないかな」

 ラウノがレベッカの言葉を肯定しながら、カードで容量のパーセンテージを確認する。

「とりあえず、何を売っているのか聞いてみよう」

 優は、カウンターにいる店員に近づき、何が売っているのか尋ねてみることにした。

「え~と、何を売っているのか教えて貰って良いですか」

「いらっしゃいませ。販売している薬品に関しては、こちらカードを置いて頂ければ、リストと値段を確認することができます。購入も、こちらの画面で実行することができますし、購入した薬品は、そのまま収納されます。収納が限界ですと、購入することができないので注意してください」

「な、なるほど…」

 店員の指示通りに、カードをカウンターに設置されているモニター横に設置すると、黒かった画面にリストが映し出された。

「これが所持金で、所持数、そして値段か。それにしても…少ないな」

「だね」

「じゃあ、棚に陳列されている薬品は…」

「ま、インテリアみたいなものだよ」

 両サイドで画面見るヒナとレベッカ、そして俺の後から見るラウノも同様に呆れ気味に肯定する。

「それにしても…高いな」

 前日食べた夕飯の全額で今所持している回復薬(小)の1つも購入できないのだ。
 4人の全所持金をはたいて、回復薬(小)が10個、または魔力回復薬(小)が5個である。
 最初の敵だからといっても、1週間倒した素材の大半を売りさばいた所持金だと考えると、所持制限だけではなく、ショップから購入できるアイテムの選定もシビアと言えるかもしれない。

「高い…ですね」

「薬品でこの金額だと、装備品を考えると…怖いね」

 両サイドの女子2人も、薬品の価格を見て驚いた口調で意見を述べる。

「でも、いざという時のために最低限の購入しておくべきかな。前衛なら回復薬、ヒナちゃんと、優なら魔力回復薬を。まあ、とりあえず1個ずつ持っているから、今は保留かな」

 ラウノの言う通り、お金をケチって準備を怠る訳には行かない。そして、残念ながら最低でも1個は回復薬を購入する必要がある。そう思いながら、横にいるレベッカの方に顔を向けると、気まずそうにしているレベッカと目が合う

「ご、ごめん。私は最初に貰った回復薬使っているんだよね」

「そうなんだ?優がいたら回復薬を使う必要はなかっただろうし、転移させられた際にゴブリンか何かに襲われたの?」

「いや…そうじゃないんだけど。ちょっとした不手際で…ですね。」

 レベッカは、若干顔を赤くさせながら、ゴニョゴニョと理由をはぐらしながら説明する。
 流石に、裸を見られて恥ずかしさで優を思いっきり殴り、回復薬を使うことになったといは乙女として言えないのだろう。
 なお、ラウノとヒナは、レベッカと違い、服を脱いだり、着たりする方法は、俺同様の考えだったらしく、特に水浴びをする時も特にどうやって脱げばよいのか聞かれる事は無った。

「そ、それじゃあ、とりあえず回復薬1個だけ購入してみないか?どのみち必要になるし」

 優としては、自分にも飛び火がきては困ることから、ラウノやヒナが詳しく理由を聞く前に話を進めることにした。
 また、裸を見た事を蒸し返されて、レベッカと気まずい空気になるのは避けたいのだ。
 そう思いながら、優は自分のシステムカードをカウンターから外して、レベッカに場所を譲る。
 レベッカは、顔を少し赤くしたまま、ジト目で優を睨みながら場所を代わるが、特に何も言及せずに優のしていたようにカードをはめ込みみ、モニターで回復薬を購入したのだった。

「え~と、それじゃあ次は武器や防具が売っているショップに行こうか」

 若干変な空気になったの悟ったのかラウノは、次に行く店を提案し、ヒナもコクコクと頷く。

「あ、しっかりと所持品に回復薬(小)が増えてる。武器や防具となると、最優先は優とヒナちゃんの武器かな?」

「う~ん、どうだろう。回復の効果に現状は問題ないから、レベッカやラウノの武具を考えても良いかもしれないけど」

「とりあえず、価格次第だし行ってみようか」







「予想していたけど、やっぱり高かったね」

 レベッカがため息を吐きながら、愚痴をこぼす。

「カードで装備の詳細が分かるから、比較しやすかったけど、明確に今の武器よりも性能が良い装備は、現状手がでないよ」

 ガントレットと弓共に売っていたが、どれでも全財産はたいても購入することはできなかった。

「でも、魔物を倒した際にも武具を落とすこともあるんですよね?」

 ヒナが二人の様子見ながら話しかける。

「みたいだけど、自分が装備できる武具が出る可能性を考えると、かなり厳しい気がするな」

 優は、そう言いながら武具が売っていたショップの品ぞろえを思い出す。
 十数種類は合ったことを考えると、なかなか手に入れるのは難しい気がする。ただ、装備できない武具を売れば、どれくらいで買取って貰えるかでも、難易度は違ってくるかもしれない。

「でも、良かったのか。俺とヒナちゃんだけ杖買って貰って?」

 優は、木製のロングワンド、ヒナはショートワンドを購入したのだ。もちろん、優とヒナに折半されたお金で済まなかったので、レベッカとラウノから援助して貰っている。
 そのため、現在の所持金は換金時の5分の1程になっている。
 それでも、数日は問題なく食事を食べる事はできるが、もともと見て回るだけだったことを考えると散財と言える。

「二人とも身を守れるものが一切ないから、万が一を考えると持って置くべきだよ」

「私もそう思う。魔物を後ろに行かせる気はないけど、不意打ちされたり、魔物の数が増えた場合は絶対の保証は出来ないしね」

「ま、安かったのもあるけどね」

 確かに、杖に関しては、一番安いのは、他の武具と比較すると非常に安かった。実際に、安いだけあって、装備しても気休め程度しか回復力は上がらない。
 おそらく、専用の武器が無い自分のような人のために安く、そして性能が低い武器も用意していたのだろう。
 それでも、やはり引け目を感じるが、既に買って貰っているし、これ以上気を使わせるのも悪く感じる。

「ありがとうな」

「あ、ありがとうございます」

 レベッカもラウノも、笑顔で「気にしくなくていいよ~」と返事をする。

(お金を貯めて、もっといい武具を購入する考えてもあっただろうに。いい奴ら…というお人好しだよな)

 そう思いながら、優は苦笑する。

(頑張らないとな)

 ヒナと一緒にレベッカとラウノの後ろを歩きながら改めて決意する。それじゃあ次はどうするかっと優が言おうとするが、後ろから声をかけられる。

「こんにちは!同じ転移者よね?」

 振り返ると、そこには女性が一人、そして大男が一人いた。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ