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ノーセーブ・ワールド 作者:天峯 蒼

第一章

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第一話 真っ白な空間

 つまらなくなった学校から帰宅して、いつも通り家族のような人達と特に会話をすることなく、学生服のままでベッドで横になって目を閉じた優だが、気が付いた見渡す限り白の空間が広がっていた。

「ここは…何処?」

 存在しているのは、優がいつの間にか座っている白い椅子、そして目の前に浮かぶ光輝く謎物体(球体型)である。

 突然の事態に目をパチパチと瞬きをしながら、茫然としていると、突然ノイズのようなものが頭の中に響きだし、そしてプツンと何かかが切り替わる。

『おはようございます。あなたは、終わりゆく世界から次の世界へ行ける挑戦権を得ることができました』

「…?」

(これは、頭の中に直接話しかけられている…のか?)

(終り行く世界?)

(次の世界?)

 目の前の光輝く宙に浮かぶ丸い物体が、頭の中に話しかけてる本人なのは何となく分かるが、話の内容がぶっ飛びすぎているせいか思考が上手く働かない。

『突然の事で困惑している、または単なる夢だと思ってしまっている人も多いと思います。あなたの疑問に一つずつ答え、少しでも不安を和らげたいのですが、残念ながら挑戦権を与えるべき人数が非常に多い事から、事前に私が録音した音声データーの再生でによる一方的な説明で済まさせて頂きます。あなたのこれからの旅路を考えると大変な失礼になることは承知しています。そのため、先に謝罪させて頂きます。申し訳ございません』

 どうやら今直接語りかけられている内容は全て録音したデーターを再生しているだけらしい。そして、声色から心から謝罪しているような…気がする。

「え~と、それじゃあ俺から話ても反応が無いってこと?」

『それでは、これから何故あなたがこの空間に呼ばれたのか、何を成して貰うのか説明させて頂きたいと思います』

 完全スルー

 やはり録音データーで、俺は聞き手に専念しろということなのか。
 今の状況に不思議と混乱しない…とうよりも、夢の中で意味不明な出来事が起きてもあわてたり、混乱するよりも、妙な納得を感じながら進む事の方が多いのだから落ち着いているのは当たり前か。

(まあ、聞くしかないしな。ただ、夢の事なんて考えたり、夢と気づいても目を覚まさない時点で現実である事も考慮した方が良いのかな)

『まず最初にあなたに伝えないといけないのは、間も無くあなたの住む世界は寿命により言葉通り消滅することです』



※※



 身長よりも長い深い青色の髪をまとめるわけでもなく、美しく綺麗に流している女性が、たった一人、深い悲しみの表情をしながら、果ての無い空を青い空を水面を通して眺めていた。
 ここは、地球が存在する世界を管理している場所になる。ただ、地球と同じ世界に属している訳ではない。

 神域と呼ばれる別世界である。

 その世界は、彼女の住まう神殿とわずかばかりの大地、そして後は全て透き通る水によって覆われている。どこともなく水が湧き出て、溢れかえった水は浮かぶ大地の下を滝のごとく落下していく。

 そして、ここに唯一住まう神であるアウラは、自身が示した基準に合致した選ばれた子供達に伝えるべき情報を録音機器に吹き込んでいる最中である。

「あなたが生きる世界は多様な世界を生み出すための原初として役割を担って生み出されました」

 前置きの説明と謝罪を終えた。アウラがこれから伝える内容を子供達はどのように捉えるのかはアウラにも分からない。
 しかし、納得させることはできなくても、これから自分が選んだ愛しい子供達が進み行く道を示せれるように言葉を選びながら説明して行く必要がある。

「そして、原初の世界から生み出された世界、そしてあなたが住まう原初の世界自体を一つに戻し、新たな世界を生み出すことになります」

「その影響で本来はあなたも世界の統合と共にエネルギー源流へとなるはずでしたが、計り知れない可能性を持つ人もいる原初の世界の人達を全て失わせてしまうのは惜しいというのが私たち神々の判断になります」

上から目線の説明。

 言葉を選びながらでも、それでも自分達神々の自分勝手な判断を痛感する。それ程に今回の判断は、釈明のしようが無い程に子供達にとっては残酷な内容と言える。

 それでも、説明を続けなければいけない。

「ただ、全ての原初の民を次の世界に導くことはできません。そのため、原初の世界の管理者としての責務を負う『アウラ』である私が、次の世界に歩みを進む挑戦権を持つ資格者を選ばせて頂きました。選定基準を述べることはできませんが、今ここで私の説明を聞いているあなたを含めた、600名の方に試練の資格を与えています」

 本当もう少し多くの子供達に挑戦権を渡したかった…

 本音を言えば、試練の等与えずに直接次の世界に行く資格を与えたい。

 しかし、『あの女』の命令を背く訳にも行かない。

「あなたには、これから私たちが用意した『箱庭』に移って貰って、『運命の塔』を目指して貰うことになります」



※※



『運命の塔に辿り着くためには、数多の敵を打倒していく必要があります。安心して欲しいのは、あなたを含む挑戦者達同士で直接争う試練の内容にはなっていない点になります。むしろ、お互いに協力して運命の塔の頂上にある『扉』まで辿り着いてください。もし、誰も辿り着く事ができなければ、その時点で試練は終わりとなります。そのため、次の世界に誰も行くことができないといったこともありうるので注意してください。また、永遠に箱庭で暮らすという選択も許されてはいません。前進む事だけを考えてください』

 どうやら、選ばれた者同士で殺し合うようなダークな試練内容ではないようだ。

 ただ、『敵』がいるらしい…

(スポーツも禄にしない一般高校生の俺に神が用意した敵と戦えと…何か魔法や武器は用意してくれるんだよな?)

 優は嫌な汗が背中をびっしょりにして行く感覚がはっきりと分かる。

 一方で、何か特別な力が得られるのではないかといった期待も抱いている。

(っていうか本当にお願いします)

『それでは、次にあなたが一番気にしているであろう敵の存在。そして、戦うための力について説明させて頂きます』

 戦うための力は、しっかりと用意してくれてるようだ。
 優は心の中でほっとし、同時に期待も沸きあがってくるのを自覚する。

『あなたは、これからの箱庭の第一エリア内のどこかにランダムで転移されます。そこから運命の塔を目指してください』

(RPGみたいだな…)

『運命の塔までは、拠点となる町が複数ありますが、あなた方の道を阻むダンジョンも存在します。そして、拠点外には魔物が存在ます』

 絶対にゲームを参考にしているだろ!と優は突っ込みたくなるのが、流石に再生機器に言っても仕方がないので思い止まることにした。

『運命の塔までの道自体は複雑のものではなく、一本道とも言えるので迷う事はありません。ただ、歩みを進める程には、魔物の力は増していくので、運命の塔の道筋から外れたダンジョンを探索し、魔物を倒し、武具を手に入れることも考えると良いでしょう』

(ゲームのチュートリアルを聞いているような気がしてくるな)

 ワクワクする気持ちがある一方で、実際にゲームや物語の世界に自身が入って生き残れるビジョンが浮かばない。
 正直に言えば、町から出たらすぐエンカウントする魔物に瞬殺されるんじゃないと思えてしょうがないのだ。

 その不安を払拭するために、早く戦うための力とやらを教えて欲しいのが優の本音と言える。

『そしてあなたの戦うための力ですが、既に『調整』を終えているので、後は『枷』を外せば力を理解することができるはずです』

(枷…?)

「うっく」

 ドクン!…と鼓動が高鳴った瞬間に自分の中の何か…縛られていたものが解かれたのを実感できた。

 そして、誰から言われなくても、目の前の神…正確にはアウラと名乗る神が声を吹き込んだ機器が述べたように、自分の力を理解することができた。

 理解できたが。

(これって『戦う力』じゃないぞ)

 ゲームといったRPGでは必要不可欠な力ではあるが、決して戦う力ではないのだ。

『力を理解する事ができたと思うので、次に強くなる方法について説明させて頂きます』

 焦っても仕方がない。
 優は、とりあえず此方の様子など無視して話し続ける機器に耳を傾けることにした。
 この説明をしてくれているのは、録音機に説明を吹き込んだアウラであって、本人ではない。そのため、聞き返すこともできないので、聞き逃しは絶対に避けたいと言える。

『敵である魔物を倒す事で魔物のエネルギーの一部を吸収して、あなたの強さを高めることができます。注意点としては、あなたよりも格下の敵のエネルギーでは強化することはできません。そのため、あなた自身を成長させていくには、最低でもあなたと同格の存在以上の魔物と戦う事が必須です』

(雑魚をひたすら倒して強くなる…といった方法はできないということか)

 自分よりも強い魔物…説明から考えると戦闘力と言うよりも、ゲームでいうレベルみたいなものが自分と同じ、またはそれ以上の魔物を倒さないといけないと言える。

(かなりのハードモードになる気がするな)

『なお、自分よりも遥かに強い魔物と戦う事は、運命の塔を目指す上で避ける通る事は出来ません。そのため、共に歩む仲間を見つけることが非常に大切になります』

(やっぱり仲間か…パーティー)

『仲間を集める上での注意点としては、例外を除いて1組5名が上限になります。理由は、いくつかりますが、此方のシステム面の問題、そして試練を突破する上での制約といった側面もあるので、無理にでも納得して頂きたいと思います。なお、エネルギーの分配は戦闘時の行動によって変化します。また、倒した魔物のエネルギーはファーストアタックをしたメンバー内で分配されるので、横取りなどは意味をなさないのでご安心ください。詳しい説明は省きますが…ズルもできないと思ってください』

 随分と親切な設定になっていることに優は内心驚く。ただ、ズルの内容については気になる。

(それよりも、どうやってパーティー組むんだ?)

『なお、1組…ここではパーティーと呼ばせて頂きますが、このパーティーを組むには、これから渡すあなた専用のカードを使用して頂きます。』

(カード?)

 優がそう思った瞬間、目の前の空間にカードというよりも、カード型の端末のようなものが突然現れた。しかし、その端末のモニター画面は真っ黒な状態で何も映していない。

『このカードを使い、お互いに承認し合えばパーティーを組むことができます。もちろん、抜けることもできます。運命の塔を目指し歩みを進めて行けば、他の機能も解放されるので楽しみにして頂ければと思います。箱庭に転移するまでは使用することはできませんが、先ほど述べたようにシンプルな扱い方になっているので、戸惑う事は無いと思います』

 優は、機器を扱う際は、先に取扱説明書をじっくりと読んで壊したり、取り返しのつかない事態にならないように細心の注意を配りたい派である。しかし、そんなクレームは一切受け付けてくれることは、分かり切っている。諦めるしかない。

『そして、最後に武器の入手方法と装備方法の説明になります。すでに理解できている人もいらっしゃると思いますが、個々によって扱える適性武器は決まっています。これは、武器に関わらず魔法の属性も同様です。もし、扱える武器が無い場合は、魔法を中心としたスタイルになるので、魔法の力を強化する杖系だけを装備する事ができます』

(武器は杖のみと決定したな)

 優としては、剣を振り回して敵をなぎ倒したいという夢も話の途中で思い描いていたのが、あっという間に潰えてしまったことに少し落胆する結果になる。

(まあ、魔法が使えるのが唯一の救い…と信じたいな)

『防具も同様になります。詳しくは、あなた自身が武器や防具を見た際に扱えるか、身に着けられるか理解できるので安心してください』

(何というか都合がいいよな…体験できているから真実なんだろうが)

『そして、一度身に着けた武器、防具はあなた専用となり、いつでも着脱が可能になります。必要に応じて呼び出すことができるようになるので、盗まれる心配もありませんが、一度装備したら譲り渡すこともできなくなるので注意してください。武具が壊された場合でも、あなた自身の気力や魔力で修繕することができます』

 どうやって『いつでも着脱』できるのか気になる優だが、質問は受け付けてくれないので我慢するしかない。

(まあ、盗まれたりしないというのは安心できるとも言えるな)

『ここまでが最低限の説明になります。後は試練を受ける中で自分で探って頂ければと思います』

 その言葉と共に突然周囲に光の輪が出現する。

(箱庭ってのに転移させられるのか!)

 光の輪に周囲を囲まれた優は、突然のできごとに戸惑うが、アウラの録音は最後の締めに入る。

『最後に。箱庭の世界には最低限のシステムを敷かれていますが、あなた方の戦い方に制限を加えているわけではありません。また…『平等』でもありません。沢山の苦難や理不尽を味わう事になると思います。そして、死ねば終わりです。』

(死ねば終わり…)

 ゴクリとツバを飲み込む。嫌な体験はしてきたが、まだ死の恐怖というものを優はしらない。そのため、『死ねば終わり』と言われても、恐怖を思い浮かべることも、実感する事も出来ない。
 そして、心の中では死んでもゲームのように神殿かどこで生き返るのではとも思っていた。しかし、よく考えれば誰も次の世界に行けない可能性があるのだから、死んだら終わりというのは当然と言える。

 まだ、夢だと思えてしまう自分がいる事を優は自覚している。しているが…思いたいだけで、これは夢ではないことも理解してしまっている。

『一人でも次の世界に行けるを祈っています。あなたの旅路に幸あらんことを』

 優の視界は光で真っ白になった。
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