ボンドで手を繋ぐとか
別に羨ましいとかではなく、俺達にもあんなことがあったと。
高校生頃に感じるものがある。そして、それ以上の年齢に達したものから見れば羨むこともしばしばか。
「幼稚園児はよく手を繋いでいるよなー」
「まったくだな」
部活のランニング中のこと。近くの幼稚園児達がお散歩をしているところを目撃した相場と舟。
園児達はワイワイしながら、外という環境を楽しみながら散歩している。可愛らしいが、ちょっと危ないところもある。引率される方の苦労がなんか分かる。
しかし、その引率にちょっとした補助して、お友達と手を繋ぐようにと言われているのだろうか?園児同士が手を繋いでいるのがチラホラ。
「あの頃は男子と女子の区別なんてどーでもよかったよな」
「だなー。遊ぶのが役割だったもんな」
「いやいや、そっちじゃなくて。手を繋ぐことくらい容易いもんだったよな」
「そうか?ガキにもよるんじゃね?」
ガキの記憶なんて、みんな曖昧だ。
相場は自分がもっと子供だったら楽して女子と触れ合えるとでも、思っているのだろうか。
「手を繋ぐなんてガキっぽいだろ。肩を掴んでもらい、街中歩く方が贅沢だろ」
「それはお前の好み。可愛い系と綺麗系の違いぐらいだ。純真さだったら、シンプルなもんさ」
「そーかい。そりゃ悪かった。お前の意見は子供と大人の差だ」
「一緒にランニングするのが、野郎じゃテンション上がらねぇよな。体力作りって事で割り切ってるが」
3年間なんて、別に長くもないが。今の時期の、3年って異様に長く感じるものだ。
「舟。俺は予言してやる。今は、大人のお姉さんが大好きって思っているだろうが。お前の5年後はどー考えても、年下を選ぶ。ロリコンに変化するかもしんねぇぞ」
「あ?彼女なしはテメェだけだ。俺は高校卒業後には彼女ぐらい持ってるさ」
「そー言っていつの間にか、婚期が過ぎるんだ。俺は欠かさないぜ。合コン、ナンパ、婚活、お見合い、……」
「結婚してる未来が視えて来ないぞ、おーい。人付き合いに計画なんてあり得ねぇが」
「ま、それでもいいさ。今の、女子を楽しむのも、今の学校生活だろ」
そう、今の学校生活でできそうな。トラブルやパニックに、前向きにと
◇ ◇
「今の内にしかできない経験ってあるか?ベタでもいいが」
アルバイトなり、恋愛なり、友達作りなり。なんだかんだで社会人でもできたりする。学生とはそれほどにもっと羨むべき時だ。
「今しかできないこと?」
「そうだ。学校らしい、恋愛トラブル的なものが、突如!俺に舞い降りたりしないか!?」
相場が相談したのは、御子柴という女子生徒。かなりの悪戯好きな、小悪魔な女子生徒である。相場もかなりの割合で被害者となっているが、それでも相談という形で話してくれるのは彼女が一番だ。なにより実行力と発言力も高い。
「そーね」
「肉体的なノリ!それでいてベタ!道の角、出会い頭にぶつかる恋愛的な、それでもいい!」
「それ危ないから止めなさい。そんなことはいつでもできるしね」
話しを聞くも、手に持つ少女漫画を読む御子柴。都合よく学園恋愛物のストーリーだ。ま、それとは関係なかったが、そこから取り出したかのように
「手が繫がっちゃう、ボンドや手錠みたいなノリのギャグあるじゃん」
「!あるな、そんなノリ」
「好きな子と違う子と繫がって、その人から好意を持たれたり、相手から嫉妬されたり、イチャイチャ展開な。アレよ。アレって今の内にしかできないノリじゃない?」
「なるほど!」
「つまり、相場。まずは、手をボンドで塗りつくしなさい」
「分かったぜ!それからどうするんだ!?」
「握手すればいいんじゃない?川中となんてどう?」
「おおーーっ!学校の天使との、ドキドキプレイ!それで完成か!やってくるぜ!!」
提案してから即実行。ひとっ走りで工具室に向かって行く。
相場が馬鹿なのだから、遠くから楽しめる。こーいう一時も、学校ならではだろう。周りが100%、馬鹿って言える環境は学校くらいだ。
「まず、相手があんたと手を繋いでくれるかしらね?」
分かっていて言っている御子柴。
ヌチャァッ
「よーし、ボンドでベタベタだ」
あとは川中さんと手を繋ぐだけ。とりあえず、手を繋いでくれるかどうか。訊いてみよう!
繋ぎさえすれば、川中さんとベッタリプレイだなんて……。えへへへ
相場は意気揚々と戻る。馬鹿だから良いのか、難所に気付かず行動を起こした。
「か、か、川中さん!」
「あ。なにー、相場くん」
川中と話すことは幾度があるが、結構な回数で緊張している。別に悪意を晒さないでお願いしてみる。
「お、俺と手を繋いでください」
「?……ごめん、意味が分からないんだけど?」
そりゃそうよ。教室で突如、手を繋いでくれって言われたら、そんな反応をするわ。
「いやいや!特にこー、ですね!」
やべぇ、どうやって手を繋ぐか深く考えてなかった。
「なんか手を繋ぎたいなって」
「!え」
言い訳を考えている内に、つい川中に見せてしまった。ボンド塗りたくりの手を
「ちょっ、そんな汚い手に触れたくありません!手を洗ってください!」
「ガーーーーンッ」
「なにショック受けてるんですか!当然じゃないですか、ボンドですか!?なんですか!?とにかく汚いですよ!」
当たり前だろ!そりゃそうよ!
優しい川中が、精一杯の、怒気を交えた注意だ。初めてのことで相場は動揺していた。一方で、遠くでそのやり取りを見ていた御子柴と舟は大爆笑していた。
「ぎゃはははは!川中さんに怒られてやんの!」
「当然の反応でしょ!あははは!馬鹿過ぎ!」
とんでもない屈辱であったが、それよりもこんな企てをした事を素直に謝罪するべきだ。
パァンッ
「すみませんでした!川中さんとこの両手で繋ごうとしていました!!」
手を合わせ、頭を下げた相場。……あ
「あ。相場くん……」
「?」
「ちょっ!三段オチしやがった!!」
気付いたのが最後であった相場。
「馬鹿過ぎでしょ!自分の両手が繫がりやがった!!」
「ああああぁっ!!やべぇ!ちょっ、離れねぇーー!」
大騒ぎする相場と、大爆笑する御子柴や舟などのクラスメイト達。しかし、その中で天使と呼ばれるだけあって
「確かお湯かければ離れやすくなるから」
「か、川中さん……!」
「一緒に保健室まで行ってあげる」
川中明日美だけは、相場が無事になるまで付き合ってあげるのであった。
「なんかずりーぞ、相場ーー!!」
「行動した馬鹿と行動しなかった馬鹿の差ね」
「なんだと御子柴ーー!?」
相場のイラストですが、彼が座っている状態です。
そのつもりです。
思ったより、相場に馬鹿さが表現できなかったのが、悔しいところですね。
そうすぐには上手くならないので、早く仕上げられるよう心掛けて取り組んでいます。継続の次は、数をこなすため、早く仕上げるのが最適だと、自分は感じました。時間かけてもそんなに変わらないし。
次のイラストは舟虎太郎で行こうかと、