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ぐーたら悪魔さんの日常  作者: くもりのちはれ
4/11

悪魔侯爵、新たな眷属を生む

 

「ほほ、良いではないか、良いではないか……ほ、電話じゃ……げ」

「どうされました、ゼウス様?」


 フレイヤに連れられ合コンに参加していたヴァルキリー達にちょっかいをかけようとしていたゼウスは、電話の発信元を見て、苦い顔をした。自慢の顎髭を蓄えた顔の額に、深い皺が刻まれる。


「…フレイヤ殿、まずいぞ。アモンからじゃ」

「あら、それは……まずいですわね」


 フレイヤの美しい顔に、冷や汗が流れる。


「で、ですが、前に怒られた時には『合コンするのはいい』と彼は言っていたではないですか!ならば、何故!」

「う、うむ……待て、フレイヤ殿。先程花摘みに行ったマリアちゃんは帰ってきたのかの?」

「いえ、まだ……まさか、彼女が無知なのをいいことに合コンに連れ込んだのがバレたのでは?」

「む、むぅ……ほ、電話、切れたのぅ」

「……ほわぁ!今度は私にかかってきましたわ!どうしましょう!どうしましょう!」

「むぅ、こうなれば腹をくくって……」

「うう…そうですわ、知らなかったフリをすれば!」

「いや、それはバレバレじゃろうて。マリアちゃんとアモンが知り合いならば、すぐバレるじゃろうて」

「……あ、き、切れましたわ!」

「……こ、今度はメールじゃ、メールが来おった。何々?」

「わ、私にも来ましたわ……」



『ゼウス様へ。ヘラ様にご報告させていただきます(^^)』

『フレイヤ嬢へ。フレイ殿にご報告させていただきます(^^)』


「………い、嫌じゃぁぁ〜〜〜‼︎」

「………い、嫌ですわぁぁ〜〜〜‼︎」


 この二人にとって、妻のヘラ、兄のフレイのお仕置きは何より恐ろしいものだった。


 この後、二人がアモンに電話で平謝りしながら命乞いしたのは言うまでも無い。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 アモンが電話をしている間、マーリンとセラはそうめんを啜っていた。


「あの、マーリンちゃん?」

「……マーリン、ちゃん?て…ボクのこと…?」


 ふと聞こえた言葉に、プルプルと震えながら自分を指差すマーリン。それを不思議に思いながらも頷くセラ。


「マーリンちゃん……。呼ばれたのは久しぶりだよ……具体的には大体四百年ぶり位だよ……」

「え⁉︎マ、マーリンちゃんっていくつなの⁉︎」


 幼子の容姿をしている所為で、セラは完全に自分より年下の幼女だと思っていた。


「かれこれ1500年位は生きてるよ……」

「す、すみません!てっきり年下かと!」

「あ、もしかしてこの容姿のせいかな?これは昔実験してたらつい失敗してこんな子供になっちゃってね。何だかしっくり来たからそのままにしたんだ。あ、一応言うと元の大人の体にも戻れるよ?」

「そ、そうだったんですか…」

「で、どうしたの?」

「あ、えっとですね、マーリンちゃ…マーリン様は何でアモン様と一緒にいるのかなって思って…アモン様のメイドさんに見えないし……あ、も、もしかして奥様でしたか⁉︎」

「うーん、残念。奥さんじゃあ無いんだなー、まだ。ボクは何と言うか……愛人、みたいなものかな?元々は眷属の一人だったんだけど、眷属契約を解除して貰えてね。ボクが主人のことを主人って呼ぶのもその名残さ。それで、解除して貰ったのは良いんだけど、ボク主人が好きだから主人から離れる気は無いんだよねー。そう言ったら主人、『まあ、お前の好きにしろ』って言ってくれてね。それでここに居座ってるのさ。正直、眷属のままでも良かっんだけどね、不自由はないし」

「あ、愛人、ですか……」


 ゴクリ、と唾を飲み込むセラ。


「あ、もしかしてセラちゃんは愛人とか受け付けない人?」

「い、いえ、そうでは無いのですが…あの、愛人ということは、その、だ、抱かれたりは……」


 おどおどとしながらも興味深々な様子で聞いてみる。

 マーリンはそれに対して、苦笑しながら答える。


「あはは、今まで何度かはあるよ。でも主人、こっちから言わないと抱いてくれないから……眷属の子達の気持ちも分かってるはずなんだけど、ね」

「眷属の方達も望んで抱かれたんですか……。あの、奥様とかは……」

「いないよー。主人自身が女になれるから、女にあまり興味が無いのかもね?というか、セラちゃん興味あるの?」

「い、いえ、私なんか、全然!でも村で、『奉公先の男主人が無理矢理身体を要求してくる』って聞いて…」

「あー、なるほどねー。それで不安なのかー。大丈夫、うちの主人に限ってそれは無いから」


 その言葉にホッとするセラ。自ら仕えたいと言ったとはいえ、不安だったのだろう。

 それを横目に見たマーリンは、そうめんをすすりながら話を変えることにした。


「そうだ、セラちゃんは『アーサー王伝説』を知ってる?」

「あ、聞いたことあります。人間のとある王様のお話ですよね?…あれ?確か、そのお話の中に、マーリンって名前……ありましたよね?」

「うん。それはボクだね」

「え?……えええええ⁉︎あれってお話だったんじゃ……」

「ううん、ほとんどホントのお話だよー」

「で、でもマーリンっておじいちゃんなんじゃ……」

「ああ、それはね……」


 途端に渋い顔になるマーリン。

 見た目可愛い幼女がする顔では無い。


「実はアーサー王の奴、ロリコンの気があってね。当時のボクは既にこの容姿だったから、初めてボクを見たときから迫ってくるんだ。まあ断っても断っても来るから最近はボコしてるんだけどね。もうボクは主人のものだって言ってるのにさ!聞きゃしない!……まあ、アレだよ。伝説の王がロリコンじゃ格好がつかないから、ボクを老人の男にしとけばいいや、みたいな。実際、ロリコンさえなければいい王なんだから、ボクもそこそこ力を貸したんだけどさ」

「今でも言い寄られてるんですか?」

「たまにね。わざわざ天国から来るんだよ、めんどくさい」


 そこで説教を終えたアモンが戻って来る。


「あ、主人、お疲れ様ー」

「んー。あ、セラさん、君ウチでメイドしてもいいけど。結構ここ広いしやること多いかもだから大変だよー。それでもいいの?」

「村を救って頂けるなら、私の命位、お預けします!」


 その言葉にアモンは苦笑した後、いつになく真剣な顔になる。


「悪魔と契約するということは、命程度をかけても足りないものが多い。最悪存在そのものをかける覚悟がお前にあるか?村程度の為に、自分の全てをかける覚悟が」

「う……」


 じっと自分を見てくる視線に怯んでしまうセラ。それが駄目だった。次の瞬間、アモンから発せられた凄まじい威圧に気を失いかける。自分より圧倒的強者の威圧である。気を失わずに済んだのは、ヴァンパイアという種族の精神力の強さ、そしてその中でも特に強い精神力を持つセラだからこそだった。

 もっとも自分が強い才能を持っているなど、セラ本人は知らないが。


「っ⁉︎」

「おお⁉︎」

「……ほう。耐えたか。大抵はこれで気絶する者が多いのだがな」

「わ、私は、ヴァンパイア、ですか、ら、精神力、だけは、取り柄、です…」


 息も絶え絶えだが、何とか答えるセラ。


「いや、恐らく君自身の力でもあるな。……かつてヴァンパイア族がまだ力を失っていない頃、我に挑んで来た者もいたが、そいつは今の威圧で気を失ったぞ?それを考えると、ヴァンパイア族は身体力を失ったが精神力は未だ健在、ということか。そしてやはり、君は強い精神力を持ち合わせている……さて、どうする?我と契約をするのか?」


 早々にセラの持つ才能に気付いたアモンは彼女に近づくと、手を差し伸べる。

 その手を握れば、後戻りは出来ないだろう。しかし、それでも。セラはその手を見つめてそう考えると、手を取った。


「私の全身全霊、その存在をかけ、生涯貴方様にお仕え致します、アモン様。その代わりどうか、私達に、子供達に未来を下さい……」

「……いいだろう。お前がそれ相応の働きを成した時、我はお前達ヴァンパイア族に手を差し伸べることを約束しよう。全てはお前次第。お前の肩に一族の未来がかかっている」


 そう言うとアモンは握られた手を引き、セラを立ち上がらせる。そしてその目の前に一枚の紙を差し出した。


「はい、という訳でコレにサインして。そうすりゃ契約完了だ。おっと、ちゃんと書類は読んでからサインしろよ、そこには君の契約内容が書いてあるからな。最近は詐欺が多いから注意する癖をつけておけよー」


 一瞬でいつもと同じ雰囲気に変わったアモンに戸惑うセラだが、言われるままに紙に書かれたことを読んで行く。


「あ、あれ?お給料とお休み貰えるんですか?」

「うん、ブラック企業はダメ、絶対。休まないなら強制的に休ませるから。ブラック企業ホントヤバいから」

「主人は嫌いだねー、それ。こないだはブラック企業の経営者が落ちる地獄とかルシファー様に作って貰おうとしてたしね」

「おうよ、あいつらだけは許しちゃおけねえ」


 ちなみに内容は、「天国の住人達が過ごしている側で強制労働。休み無し」である。極楽ライフを横目に見ながらの強制労働である。


「サインしました」

「おーし、ちゃんと内容は確認したな?よし、なら次だ。今から君に『眷属の印』をつける。痛くないから安心しな。どこにつけて欲しい?」

「え、ええと、それはどのような」

「君が我を裏切ったりしたら罰を与えるものだよ。まぁ一種の枷だな。ちなみに場所は他の眷属達は背中だったり肩だったり、人によって違うな」

「では、皆さんと被らないところでお願いします」

「となると……首、脇腹、耳の裏…あ、手の甲はどうだ、これオススメ」

「…では、首で」


 首の右側に手を当て、そこにつけて欲しいと示すセラ。


「何故だ、何故皆手の甲とか額とか拒否るんだ…。カッコいいじゃないか!秘密の力的な感じで!人間風に言えば厨二風で!」

「仕方ないじゃないか主人、皆人間に混じって暮らしてる子達ばかりだから、目立つ所にあると困るんだよ」

「ブー、皆酷い」

「可愛く言ってもダメ」


 愚痴をこぼしながら、アモンはセラの首に手を当てる。

 一瞬光ると、そこにはもう「眷属の印」が刻まれていた。


「さてと、これで君もうちの仲間入りだ。これからよろしく頼むよ。最初はマーリンに案内や指導を頼むといい」

「は、はい!精一杯頑張ります!マーリン様もよろしくお願いします!」

「はいはーい、任せてちょー」


 こうして、アモンの家に新たな眷属が生まれた。

 これから先の彼女のヴァンパイア生に、どんな驚きと困難が待っているのか。それはまだ、彼女のみ知らない………。



次回はどうしようかなぁ。

アモンの冒険とか書こうかなぁ。

城に住む奴らの話かなぁ。

マーリンの話もいいなぁ。


皆、どう思う?

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