悪魔侯爵、会議に出る
気まぐれ更新ですが、よろしくです。
今回の投稿は二本出します。
地獄。悪魔たちが住んでいる世界の名だ。
ある悪魔はあらゆる快楽を楽しみ、またある悪魔は人間達の魂を弄ぶ。
今日もまた、地獄で悪魔が動き出す……。
人気のない暗い城にコツ、コツ、と足音がする。
その足音の主は広い城の廊下を、ただ一つの場所を目指し、歩き回る。まるでどこに何があるのか、全て把握しているかのように。
そして、たどり着いたのは一つの扉。その扉からは光が漏れ、人が、いや何かがいることを示している。
ドアノブに手をかけ、ゆっくりと回す。そして…。
バァーン‼︎
思いっきり、開け放ち、叫んだ。
「アモン貴様‼︎今日こそ会議に出てもらうぞ‼︎」
「ワァァ⁉︎て、敵襲ー⁉︎」
足を机の上に置いてゲームをしていた体制から音と声に驚いて見事にひっくり返っているのは、一人の悪魔。
名を、アモン。ソロモン72柱が一人、40の軍を率いると言われる、炎の大侯爵である。
今はただの優男な容姿をしているが、本性は悪魔らしい容姿をしている。
「な、なんだ、ルシちゃんか。脅かすない」
「いや、私だと分かった途端に元の体制に戻るのはやめて貰おうか。あとルシちゃんはよせと何度言えばいいのだ…」
「我が飽きるまで?」
「そう言って何百年だ⁉︎いい加減注意するのも疲れたぞ!」
「我としちゃあ何百年も同じツッコミしてくるルシちゃんに驚きだよ、うん」
ハーッ、とため息を吐くルシちゃんこと、ルシファー。
中性的な顔付きをした美形。背中には黒い翼が生えている。
彼こそ、地獄の真の王、サタンである。
「とにかく!」
「あー、はいはいじゃあ今度からルッシーね。あ、なんか某配管工の友達に似てる。んじゃルーシーにしようかな?ね、ルッシーはどっちが良い?」
「もうルッシーになってる⁉︎」
一時間後。
先程とは違う場所に、彼らはいた。
サタンの城、『マオージョー』。(作、ハルファス。命名、アモン。ちなみにこの名を付けた本人はネタの一つとして発言したが、ハルファスに即採用されてビビっていた)
今日は、ここで悪魔達による、会議が開かれる。
「なあ、ルシちゃんや?なんで我は主人公なのに縛られて芋虫状態なんですかね?」
「何を言っている?貴様が逃げないように決まっているだろう。隙あらば逃げようとするからな、貴様は」
「えー、だって会議面倒」
会議室へと向かう廊下を、ロープで縛られ芋虫と化したアモンを引きづりながら歩くルシファー。事情を知らない者が見れば、「ナニコレ?」と言うだろう光景であろう。
「ここに飛んでくるまでにも芋虫状態だったからぶらんぶらん宙吊りにされて気持ち悪いんだけど。吐いていい?」
「貴様がそんなタマか。この地獄で屈指の実力者たる貴様がその程度で酔うはずが無いだろう」
「ククク、我は四天王の中でも最弱。せいぜい今のうちに笑っておくがいい」
「誰に向かって言っているのだ・・・」
そう。こう見えてこの芋虫、何万といる悪魔の中でも5本の指に入る程の実力者なのだ。最弱でもなんでもない、トップクラスの実力者である。芋虫の癖に。
「ルシちゃ〜ん、地の文がいじめる〜。泣いてい〜い?」
「本当に貴様は何を言っているんだ…?ところで、貴様私が縛る前に何か掴んでいたが、アレは何だ?」
「ああ、これバナナ」
「バナナァ⁉︎」
「バロ…いや、うん、バナナ」
「何を言いかけた?というか、何故バナナなのだ?」
「え、オヤツ」
「会議は遠足じゃないんだぞ…あとバナナはオヤツに入らん」
「え、マジで?」
そんなこんなで会議室に近づいていく二人。するとそこに、一人のメイドが現れた。
「お帰りなさいませ、ルシファー様。おや、その芋虫は拾ったのですか?ダメです、ウチでは飼えませんよ。針山にでも捨ててきて下さい」
「いや、こいつアモンだから。そもそも芋虫なんて私拾わないから」
「いや〜、相変わらずのSっぷりだね、ルリっち。元気?」
「おかげさまで。ところで、縛られているのは趣味ですか?なんなら、私がもっと縛って差し上げますが?」
「いやいや、我がどちらかと言えばSなの知ってるでしょ?」
「どちらかと言えば、と言うか明らかにドSでしょう。あの時のあの所業は流石の私も少々引きました」
「ああ、アレか…。アレは引くな、うむ」
「え、なに?そんな酷かった?我?」
10分後…。
「ふははは!この動きについてこれるかぁ!」
「な、なにぃ⁉︎なんだこの気持ち悪い動きは!」
「ルシファー様、こんな気持ち悪い芋虫は放っておいてさっさと行きましょう。目が腐ります」
どうしてこうなった。
芋虫状態のアモンを放置して、会議室に向かうルシファーとルリっちこと、ルリエル。
それをアモンは必死に追いかける。
「ちょ、待って!思ってた反応と違う!放置プレイはやめて、置いてかないで!『ふしぎなおどり』のことは謝るから!っていうかなにこのロープ⁉︎全然切れないんだけど⁉︎」
「『アスモデウスの束縛ロープ』だが?絶対に切れないと評判だ」
「あのエロオヤジィーー‼︎何作ってんだ⁉︎分かった、ルリっち、いいモノをやるから解いて!せめて担いで⁉︎」
「…モノ次第ですね」
ヒソヒソ…ヒソヒソ…。
…ぐっじょぶ。
取り引きが成立したようだ。
「いやー、流石ルリっち。話が分かるねー」
「いえいえ、アモン様こそ流石でございます。まさかそんな素晴らしいモノをお持ちとは…。そして惜しげも無くそれを譲る心の広さ。このルリエル、感服致しました。先生とお呼びしても?」
「うむ、良かろう!」
「何を貰うんだ、ルリエル?」
「秘密です」
「え?教えてくれても…」
「秘密です」
「…え?」
「ルシちゃん、世の中には知らない方がいい事もあるんだよー」
「…何故だろう。何だか寒気が…」
ひょい、とアモンを担ぎ、歩きだすルリエル。
しばらくルシファーは首を傾げていたと言う。
「で、いつ頂けるんですか?ルシファー様のあーんな写真やこーんな写真は⁉︎」
「落ち着け。会議後にひっそりと届けてやる。取り敢えず、ほれ」
「こ、この写真は!ルシファー様の×××《ピーー》な写真!」
「うん、ルシちゃんの為にも規制しとくね」
しばらくして、会議室。
そこには、様々な悪魔が座っていた。
「さて、会議を始めよう。まず最初に、魂の回収数を報告して貰いたい。前回の会議から皆いくつ回収した?」
会議長は当然ルシファーだ。
「ワシの所は2万だな」
バアル。人間の頭、カエルの頭、猫の頭がついた男だ。
「ウチは4万ですな」
アスモデウス。色欲を冠する悪魔だ。人間の頭、馬の頭、羊の頭をもつエセ関西弁をしゃべる男だ。
そして、多くの悪魔達がそれぞれ自分の配下達が集めた魂の数を言っていく中、アモンは…。
「茶がうめぇ」
のんびりと緑茶を飲んでいた。ちなみにロープは結び目がかたくて解けなかったので、焼いた。
そして、アモンの番が回ってきた。
「アモン、期待はしていないが、一応聞く。貴様はいくつだ?」
「ん、確か2万くらいはあったかな」
『は?』
ニートがそんなに集めれるなんて、どうせ嘘だろう、と皆が騒ぎだす。
平均的には皆千単位が精々。万単位など、よほど力が強い悪魔でなければ難しい。
よりによってニートごときが万単位を集めれるなど何をしたのか。
「いやいや、アモン。貴様働かないじゃないか。なのに集められるってどういうことだ?」
「いやいや、仕事ならさっさと片付けたから遊んでんのよ、我。それに我には優秀な配下たちがいるからね、何もしなくても集めてくれるのよ。いやー、あの子たち超優秀。マジ助かるわー」
『えー…』
万単位をかき集める配下とか優秀すぎるだろ、と全員が思った。
「ま、まあ、アモンが嘘をついているかは後に調べるとしてだ。さて、報告は全員終わったか?ならば本題に入ろう。ルリエル、皆に資料を」
「はい」
全員が渡された資料に目を通す。
ついでにアモンは緑茶のおかわりを要求していた。
「さて、そろそろこの日が近い。よって、こちらも選抜メンバーを決めねばならん」
「『天界大戦争』、ですか。」
「サタナエル、何度も言っているが…」
「分かっていますよ。しかし、オレにとっては戦争のようなものなのですよ。今度こそ奴に、ウリエルに勝つ!」
「分かっているなら良い。さて、それでは決めようか。『天界大運動会』のリレー選抜メンバーを…」
天界大戦争。人間達がこの名で語りついでいるものは、実は天界と地獄の運動会だったりする。今回は72回目だ。
アンカーの押し付け合いを聞きながら、アモンは(この会議に我必要かな?)と主人公らしかぬことを考えながら、惰眠を貪ろうとしてルリエルにしばかれていた。
「あ、アモン、貴様をアンカーにするから」
「は⁉︎ちょ、ルシちゃん、何で⁉︎我なんかした⁉︎」
「会議中に寝ようとした」
「ち、バレてーら。だが断る‼︎」
「なら、仕事の量倍だ。ついでにルリエルの監視付きで」
「すいませんでしたつつしんでおうけいたします」
「よろしい」
延々と続くかと思われた会議は、2時間で終わった。
「さあ帰ろう」
「いや待てアモン。貴様は取り調べを受けてもらう」
「なんでー?」
「先程の発言の真偽をだな…」
「マジかぁ」
渋々ルシファーに連れて行かれるアモンであった。
彼が家に帰る事が出来るのは、当分先の事になりそうである。
「異世界行っても面倒なものは面倒」もよろしくね!