俺の妹までもスペックが高い……
次の日、目が覚めると足が痛い。
これはまさか、気合の坂を歩いて登った後遺症か?階段とかでも、上りより下りのほうがきついと聞いたことがあるが、おそらく坂でも一緒なんだろう。
しかし、17歳でこの運動不足はマジやばくね?
よし、運動を明日から始めよう。絶対だぞ。
そんなことを思いながら、2階の自室から1階のリビングまで足を引きずりながら下りていく。
「兄ちゃん起きるの遅いし!遅刻しちゃうでしょ!!」
そういいながら焼いたトースターとコーヒーを俺の前に置いてくるのは妹の菱形陽菜。俺の妹だ。今年中学3年生で受験生。うちの親が共働きの上、母親も夜勤があるので小さいころから家の家事等を積極的手伝ってきた。現在では朝ごはんは妹が作ることになっている。
「大丈夫。まだ慌てる時間じゃない。」
俺がまあまあというジェスチャーをしながら落ち着いていうと、
「は?ふざけてないでサッサと食べて。」
おそらくこの世において範馬勇次郎よりもとがっている人間は女子中学生だと思う。最も多感な時期で、家族、主に俺と親父への暴言は当たり前。ちょっと前から親父が入った後の風呂には入らなくなり、洗濯物も別にしている。親父泣いてたな……
俺にはそこまで生理的な拒絶はないもの、言葉の風当たりがきつい気がする。
まあ、なんだかんだ血のつながった兄弟なのでここは愛情の裏返しなのだ。……ですよね?
「悪かった。明日から早く起きるよ。」
「マジでそうしてよね。全然片付かないんだから。この時間に起きてくるくらいならまだ寝てて。」
いやー兄妹の愛情は深い。俺を明日から早起きさせるためにここまで悪態をついてくれるとは(白目)
効果は抜群で明日からしっかり起きようと心に深く刻み込まれた。
しかし、朝から不機嫌にさせてしまった……ここは話題を変えた方がよさそうだ。
「そういえば、クラス替えはどうだった?」
「は?急に何?仲が良かった友達とまた一緒になったし、他の人たちもみんないい人そうだったけど。」
ものすごく怪訝な顔をして言われてしまった…
実の妹だがおそらく顔は可愛い部類ではあると思う。まあ、妹補正はかかっていると思けれども……
性格に関しては家族(俺・親父)には厳しいが、同級生たちには人気があるらしく、人への心遣いができて優しい人として通っているらしい。ソースは成績表。しかも、成績まで良いときた。小学生くらいから実の両親に「ホントに兄妹?」と聞かれるくらい似ていない。いやいや、あんたらが自信なくしてどうするよ……
「兄ちゃんはどうだったの?」
若干めんどくさそうなフリをして俺の事を聞いてきた。
ほら、やっぱり兄ちゃんに興味あるじゃん!兄ちゃん大好きなんだな。このツンデレ屋さん。
「俺は仲のいいやつは湊と美月くらいだな。あとはまだわからん。」
「え?兄ちゃん、また湊さんと一緒なの?
今度いつ遊びに来るの?決まったら教えてよね!じゃないと○すから。」
ものすごい勢いでお願い(脅?)されてしまった。
ていうか湊の時と俺の時とでは対応が違いすぎる気がするが……
もし仮に湊が陽菜に手を出すことがあれば、俺の手を親友の血で染めなければならないかもしれん。
「ああ、そのうちわかったらな。」
「絶対だよ。あと、美月さんとも一緒なんだね。前から思っていたけどなんで美月さんはかわいくて頭 もいいのに兄ちゃんなんかを相手にしてくれるんだろーね?」
実の兄貴に向かって朝っぱらから暴言を吐き続ける妹。これぞマイシスター。
一体兄ちゃんをなんだと思っているんだ!
兄ちゃんだってそれなりのスペック(頭・容姿)は持っているんだぞ!(自称)
……ただ周りが高すぎるだけだ。俺は悪くない!
しかし、美月と仲いい理由なんて、正直小さいころから家が近い幼馴染ぐらいしか俺は思いつかないが、それは言うのが癪なので黙っていよう。
陽菜の相手をしすぎて、朝食の進みが遅くなってしまった。やっぱり、朝イチは苦いブラックコーヒーで目覚めを覚ますに限る。
そう思いながら、置かれていたコーヒーに手を伸ばし、ゴクゴクと飲む。
うわぁ……なにこれ激甘。あれ?俺の家にミルクセーキなんてあったかな?
ふと、陽菜に目線を送ると、にやにやしながら俺を見ている。
陽菜め……俺を糖分攻めするとは。人が苦手なのを知っていて、平然とやってのける陽菜。そこにシビれる!あこがれるゥ!
だが、さすがの優しい兄ちゃんもここまでされると、何か仕返しせねばなるまい!
現在、陽菜は流し台で朝食の洗い物をしている。ふっ……ガードがガラ空きだぜ!!
落ち着け……こういう時こそ平常心。心を無にして挑めば成功するはず。
まずは、気を利かせて食器を持っていくフリをして、がら空きの後ろへ回り込んだ。ここまではばっちり。敵(陽菜)もこちらに関心が向いていない。
おあつらえ向きに敵はセーラー服にすでに着替えてある。このまま登校するのだろうが、その準備万端さがお前の命取りだ!
ゆっくり……ゆっくり後ろに近づき、敵のスカートの端に手を伸ばす。
準備は整った……いざ!尋常に勝負!!
……ふきふき……
ベットリとマーガリンや、トーストの粉が付いた指先を、陽菜の短いスカートの端っこで拭いてやったぜ。この鬼のような所業……ブッダも助走をつけて殴るレベルだろ。
ほらほら、なんかスカートの端がシミみたいに真っ黒になってるー。
あんまり兄ちゃんを怒らせると、こんな恐ろしい目に合うということをしっかりと体に刻んでおくんだな!この小童が!!
武士の情けで、俺がスカートで手を拭いたことは黙っといてやるか。いやー俺って優しい。
そして朝の兄妹スキンシップを行い終えた俺は、重たい体を引きずり家をでた。
やべ……マジで遅刻するかも。