第82話:四叉路の先へ。
2016/11/17ぶりにコンニチハ。重い腰が上がりました。
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前話までのあらすじ
遠征先の雪の都ニザロに着いて二日目、ラタン宮で白き竜の骨……のレプリカを見たフール達。ラタン宮を出た後はフィアとは別行動することになった。
Side of Luk Kenfar
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シルート帝国の東方、寒風吹き荒ぶガガールの山々を越え、目的地ニザロに到着して2日。捜索を兼ねた観光にも、一区切りが付いた。
「ラタン宮も駄目でしたね。骨だけでもと思いましたが、まさか骨も偽物だったなんて。」
「文献すらないからなぁ。図書館を名乗るには史書が少なすぎやしないか。」
「言われてみれば、歴史ってあまり知らないですね。数年前のエルト帝国暦400年でも特に祭事も無かったですし。節目なら国を挙げてのお祭りとかあってもいいと思うんですけど。」
港のベンチに座っている。屋根付ゆえ雪には濡れないが、着込まなかったらニザロの外は寒い。
レイナと出会ってからもう2ヶ月にもなるか、一時はどうなる事かと思ったが今は共に旅する仲となった。二人旅も悪くない。
「確かにあってしかるべきだろう。100年の節目に『慎ましく一家で過ごせ』と御触れが出る理由が判らない。祭りでもすれば経済も回るというのに。」
「ルクメスク王国では十干祭というのを10年に一度するらしいじゃないですか。一度は行ってみたいなぁ、国を挙げてのお祭り。」
「……今年の王暦は何年だ?」
「2000……幾つでしたっけ。」
「……調べておくか。今年なら参加するのもいいな。確か6月だから、アルメルを経由するルートなら時期も丁度いい。戦争で中止でなきゃいいが。」
「アルメルなら船旅ですね!、距離もあるし、乗るなら大型の帆船かな。楽しみです。」
「ああそうか、レイナは海を見るのも今回が初めてだったな。」
冒険者稼業をしていた時、拠点の関係で行動範囲が内陸限定だったらしい。北方は依頼に事欠かない、遠征しないのも頷ける。
「しかし、この嵐だからな。航行してくれる船があるだろうか。」
「そうですか?、それ程ではないと思いますけど。」
「いや、沖が荒れている。湾の中に船が集まっているだろ?」
「漁に出れていないってことですか。」
昨日から天候がよくないらしい。朝の市でも活魚が少なかったように思える。
「ああ、そうなんだろう。
……ん?」
ふと、前を横切る黒髪の少女を眼が追った。
雪の降るニザロに似合わない薄着にも拘らず、何事も無いかのように静かな足取りで遠ざかっていく。妙齢の少女にそぐわぬ威風たる振る舞いに、肌寒い恰好を気にする大人はいない。
「……レイナ、先に宿に帰っていてくれ。用事が出来た。」
「一人で行くんですか?」
「ああ。」
「……判りました。」
屋根付きのベンチから立ち上がり、防寒着のフードを被り直す。
「夕時には帰る。」
一言残し、何度も踏み付けられ固くなった雪道を早足で追い始めた。
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Side of Fiasta od kile (False)
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フール等と別れた後、東部の港を目指した。目的地は局所雪原ないしスノースポットと称されるニザロ周辺地域、その中央だ。
ガガール山脈群とオヒニア海により正確な円周が判り得ないが、推定される亡骸の魔力強度および実測した魔力密度を考慮すると、対象はニザロ東部にあると考察できた。
あとは正確な測定が出来ればポイントを断定できるが、いかんせん此処はオヒニアの首都だ。実質的な政府はアルメルに遷都しているが、それでも測定用魔方陣を展開できる場所など無い。他の貼付型魔方陣と干渉しやすいからだ。
面倒だ、なぜ街中なんだ。
……そして、尾行されるとは、面倒だ。
「妾に何か用か?、畔のベンチにいた青年。」
少し進んだ先、魚市場の前で立ち止まる。漁を休んでいる為、誰もいない。
「……どうも、見つかっていたなら仕方ない。」
二つ手前の路地から先程の青年が姿を見せる。
「妾に何か用か?」
反転し、青年に向き直る。
見た所一般人ではないが、装いを鑑みるに盗人にも見えない。派手ではないが特注の品々だろう。冒険者ならA以上か。
「ドラゴンの一族かと思い、付けさせて貰った。どうだろうか。」
「教える義理は無いが?」
「そうか。
……お前は、いや、お前も『竜』を探してるのか?、もしそうなら情報を共有したい。」
竜。強調したなら、まぁ、そう言う事だろう。ヒトの中にも知っている者がいるのか。
されど、この青年は大した情報を持ち合わせていないだろう。魔法適性が見受けられない。つまり捜索手段を持っていないのだ。
「白竜が討たれたというこの地に竜族がいるなら、白の亡骸を取りに来たと考えるのが妥当だ。
ちなみにラタン宮は外れだった。石の推定骨格模型しかない。」
……ヒトの割には博学だ。
話を聞くのも悪くはないか?
「繰り返すが、俺は竜族と一度話したい。」
「……場所を変えよう。近くに良さそうな甘味処があった。」
青年の隣を素通りし、先見かけた甘味処に向かう。尾行のせいで寄れなかったのだ、代金は青年に払わせてやろう。
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Side of Fool Springs
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昨日はユウちゃんが風邪ひいてて行けなかったし、買い物に行こう。上着は大体の寸法が判ってれば買えたが他はそういかない。折角の旅行だ、靴だろうと本だろうと何でも買う。
ニザロ中央の大広場を眺めるユウちゃんに話しかける。
「唐突だけど、靴、要らない?」
「靴ですか?」
「ほら、濡れるでしょ雪道。折角だし良いやつ買おうよ。防水性の。」
「でもカファイドではあまり雪降らないですよ?」
確かにカファイドは雪が少ない。手乗り雪ダルマくらいしか作れない。
「取り敢えず行ってみよう。思いがけない物があるかもだしね。」
何処に何があるかは昨日の散策で概ね確認した。靴屋も目星を付けている。
「判りました、行きましょうか。ふつうに予備の靴も欲しいですから。」
「よしきた。」
翌日7/7,12:00に【第83話】も投稿します。




