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第8話:慈悲のない信頼。

=2107字=

 さっきの所を出発して、一時間ほど経った。


 ようやく、カファイドという街(多分)が視認出来る距離に来た。


 いやー、馬車、良いですねー。


 車と違う、生き物の感じが、良い。

 手綱を引く感じも、良い。


 



 ……ん?

『何で普通に乗れてるんだよ。』

 ってか?


 簡単に言えば…



 最初は四苦八苦してたんだよ、滅茶苦茶。


 馬全然落ち着かないし。

 傍から見たら、戦いだよ、あれは。


 でさ、凄い疲れる訳よ。

 ハッキリ言って、盗賊と戦うより疲れた。


(全く…あの馬は…)


 とか思いながら休憩してた訳よ。

 少し斜面になってる草の上に寝っ転がって。


 風が気持ち良かった。


 まあ、そんな感じで周りを眺めてた訳よ。


 そしたら…


「あっ、馬車だ。」


 遠くの方にチラッと馬車が見えたんですよ。 


 ほんと、もう、一瞬。












 説明終了。




 いやマジで。


 マジでそれで、乗れるようになった。


 元々長い間馬車に乗ってた気がしてくる。

 まあ、気のせいだけども。


 何も言う事を聞かなかったあの暴れ馬も、今は指示通りに歩いてくれる。

 悪口言ってスイマセンでした。

 俺が悪かったです。


 きっと【完全模倣】のお陰だと思う。

 俺自身の見学スキルはそんなに高くない。


 にしても、このスキルは凄い(確信。

 これからもお世話になりそうだ。

 今回のは勝手に発動しただけだけどさ。

 何時かは、自由に使いこなせる様になりたい。



 そのあとは【物質変化】を使ってみてた。

 【完全模倣】を使って無かったら、完全に忘れてた。




 土を鉄塊にしたり、鉄塊を棒にしたり。


 空気を鉄塊にする事も出来た。

 但し落下注意。 

 しかも空気が薄くなった。


 因みに形も変えられた。



 実験結果。


 大体

(アレをコレにしよう)

 な感じで出来た。


 色々やってみた結果、『構造が難しいもの』は造れなかった。


 パソコンを思い浮かべても何も起きない。

 造っても、ネットは出来ないけど。

 そもそも電気無いけど。


 可能なのは、板とか棒とか円の組合せくらい。

 頑張れば凄いのが出来る(かも知れない。


 あと、実験のついでに、盗賊を拘束しといた。

 足に枷、腕には手錠を。

 手と足に直接造ったから繋ぎ目の鍵穴も無い。

 壊さない限り外せない。

 完璧である。


 因みに鉄製。



  

 そのあと、盗賊を一緒に連れて行く為に、荷台を造った。


 どう見たってただの箱だけど。

 気にするな。タイヤは付けたから。

 機能に問題は無い。

 振動は凄いと思うけど。

 頑丈かどうかは知らない。


 因みに荷台は『錆びない』と言う事でステンレス製。


 最初は木で造ろうと思ってたけど、出来なかった。

 構造は一緒のはずなのに。

 何故だ。




 あの女の子は俺の隣に座らせておいた。

 まだ寝てるけど。


 彼女、結構可愛い。

 そんじょそこらのアイドルなんて敵じゃない。

 ですが、何もやらしい事はしてません。

 アイアム紳士。



 因みに、隣に座らせた理由。


 A.荷台は荷物が多すぎた。

 あれは乗せられない。

 そもそも二人乗りだろうし、この馬車。


 荷台もう一つ造ろうかとも思ったけど、繋いだら馬が動かなくなった。

 重すぎるらしい。


 それに、盗賊入りの箱は、仕方ないとしても、

『起きたら荷台が二台増えてる!?』

 駄洒落じゃないけど、これ、おかしいでしょ絶対。

 一台でも同じだと思うけど。



「…んっ、あれここは?」

「ああ、やっと起きた。

 ここは、あなたが襲われてた所から王都に向けて一時間位行った所です。」


 結局一時間も寝てたのか。

 盗賊の方を起こして正解だった。 


「えっと、君は?」

「私は、襲われてるあなたが見えたから助けた、ただの通りすがり。」

「そっそうなんだ。

 あ、あの、もう一人、男の人が居た、と思うんだけど…

 見な、かった?」


 肩が震えてるし、多分もう察してる。

 隠す事は……出来ない、か…


「…男が一人殺されていたから、多分その人がそう、だと思う。」


 非情かもしれないけど、死体は置いてきた。

 自分は状況からして、その人とこの子は仲間だと思ったけど、本当は違うかも知れない。

 盗賊同士の仲間割れだったかもしれないし。


 それに、もし、この子の親だったとしたら、あの姿は見せられない。


「そう、なんだ。

 有り難う、私を助けてくれて。」

「礼なんて……

 私はその人を、助けられなかったんだから……」

「いいよ。別に。

 あの人は、そうなっても仕方なかったと思う。」

「…………え?」


 …ええ?


 …えええ?


「あの人一応お父さんの弟、つまり叔父さんなんだけどね。

 働いた事無いんだよ。人生で一回も。」


「で、お父さんの所によく来てた。お金を貰いに。

 そのお金の使い方がまた……

 賭場に行ったり変な物買ったりとかばっか。

 仕事探しなんて全くしない。」


「お金使い果たしたら、お父さんの所に来る、この繰り返し。

 滅多に怒らないお父さんも、この前は

『お前もそろそろ仕事しろ。次また来ても、もう金はやらんぞ絶対。』

 って言ってたし。完全に怒ってたし。

 メッチャ怖かった。」


 前世ニートやっててスイマセンでした。

 本ばっかり買っててスイマセンでした。

 この人生ではしっかりお仕事、努めさせていただきます。


「ま、でも一人で逃げたとかじゃなくて良かった。

 あの人、何するか分からないし。

 もしかしたら、犯罪に手を染めるんじゃ。

 それでお父さんに迷惑でも掛けるんじゃ。

 とか考えてた。」


 信頼がある意味高いですね、はは…



「……でも……あの人、

 死んじゃったんだなぁ……」


「…」



(2014;3/12改稿)

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