第74話:千差万別の鍵、夜空が開く記憶。
2週間ぶりにこんにちは。
艦これは鬼畜、はっきりわかんだね。(E2丙で力尽きかけた。
=1,877=
楽しい夕食の後、宿に戻るとフィアちゃんは一目散にベッドへ向かう。私は【アイテムボックス】からパジャマを取り出し、二人にそれぞれ渡しておくことにした。
フィアちゃんに寝るなら着替えてからにするよう言ってから、少し散歩に出掛けた。ユウちゃんは峠越えの旅で疲れたようで、誘ったけどついては来なかった。
宿を出ると、石造りの街並みから漏れる温かい光が点々と左右に続く。素直に綺麗だと感じながら、右に正面の通りを進むと、沢山の大樹が立ち並ぶ公園を見付けた。石造りで統一されているエオトーマで、珍しく此処は、土、草、樹木と自然が収束したような、一種のオアシスともいえる場所だ。
木々の隙間から漏れる月明かりを頼りに、公園内をうろうろしていても、あまり人と会うことはない。この世界の人々は夕暮れを過ぎて暗くなれば家に帰る。帰らないのは鍛冶師や冒険者、要するに酒が好きな人種だね。
公園の中央あたりに行くと大きな広場があり視界が開けている。芝が生えた丘の上の小さな噴水と頭上に広がる数多の星々によって、この広場だけが異質の、幻想的な雰囲気を醸し出している。
丘の傾斜に寝ころび、星空を見上げる。
北斗七星もオリオンも、春の大三角も見えない星々を眺めても面白味は無いけれど、夜の空を見ていると心が落ち着く。
……そういえば、私が日本で死んでこの世界に来ることになったのは去年の今頃だ。四月一日秀としての人生に悔いが無かったかというと、そんな訳が無いが、今の人生も楽しいかな。全く以って私の自由には行かないけれど、退屈はしない世の中だ。
最も気がかりだった妹、優華は死んでしまったと言うアントアの話は、未だ実感が湧かない。優華はまだ大学生で、し足りない事が多かった筈だ。転生して再会しても、兄としては素直に喜べない。
「……でも、会いたいんだよなぁ…………。」
私が偽らずに喋れる人はこの世にいない。たった一つだけとは言え、私の根底に嘘があるのは辛いものだけど、それはいいんだ。もう受け入れたことだから。
でも話したいじゃないか。何も包み隠さず、楽しく会話がしたい。優華に会いたいのはそれだけの理由。唯一の肉親だからとかそんな理由じゃなくて、ただそれだけの理由で会いたいと思っている。
目を閉じて、前世の生活を思い出しても退屈な日常しか浮かばない。小説の中の物語を追い続けて、現実で何もしていなかった。転生してから思うのは、秀という人間が、どれほど小さな世界で生きてきたかと言う事。秀が死んだ事だって一体どれくらいの人が知っているか。
ウトウトと微睡んで、過去の思い出を振り返っていると、遠くに砂利を踏む足音が聞こえる。その足音は杖を突いてゆっくり近づいてきて、草を踏む音に変わる。
「……こんな夜中に何をしている。」
すぐ傍まで近づいた青年が頭上から声を掛けられる。
「やぁ青年。脚は大丈夫なのかな?」
「フールがくれた松葉杖のお陰でな。…………風邪引くぞ、こんな所で。」
「気遣いありがとう、でも身体丈夫だから、気にしないで。」
「そういう問題じゃないだろう……、たく。」
心配される人間じゃないんだけども、どうにも女性は弱く見られるようで。
「そんなことを言うハヤトは何をしに来たの?、杖があってもその脚じゃ歩きにくいでしょ。」
「一人になりたくて、な。まさか先客がいるとは思わなかった。」
「夜中に人がいるのは珍しい?」
「ああ、俺は見たことがないな。」
隣に松葉杖を置き、座り込むハヤトは素直に答えてくれる。竜の事とコトネの事を除けば好青年なんだがと、タツモトさんが言っていた通りで、悪い印象は感じない。
「……今回の件は済まなかった。助けて貰ったにもかかわらず、失礼なことをした。」
ハヤトは折れている右足を気にしながら此方に向き直ると、頭を下げてきた。
……正直驚いた。本当は素直な奴だと聞いていても、こうまで変わるとは。思わずハヤトの顔をまじまじ見てしまう。
「竜に負けた程度で冷静さを欠くなんてな、俺はまだ子供だな。」
「……竜に何があるのさ。」
隣に並んで寝転がったハヤトは、暫く口を噤み、空を見上げていた。私と違い、この夜空に思い入れがあるのだろう。そんな横顔だった。
「……竜自体が何だと言う訳じゃないんだ実は。」
ポツリと呟かれた言葉は、私の興味をそそるのに充分な意味を含んでいた。
「俺には一人、妹がいる。……いや、いたと言ったほうが良いかもしれない。」
独り言のようにハヤトの口から発せられる話は、比較的平和な人生を歩んできた私にとって、この世界の悲惨さを突き付ける劇薬だった。
そろそろ竜種の生態にも触れていきたいな。設定はおおよそ完成してるから放出したい。
[第75話]5/15 日(1週間後)投稿予定。




