第72話:玄人には楽勝だけど素人には苦難、骨折り損だね。
24h遅れで投稿。理由はただの怠けです。PCの無料カーチェイスゲームが面白かったからね、仕方ないね。
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矢を番え上空の青飛竜の一体を狙うが、仰角が大きすぎて狙いが定まらない、フラフラする。
取り敢えず距離をとったほうがよさそうなので、山道の脇にそびえる急傾斜を上って高さごと稼ごう。
傾斜45°を超えるけど、【創造神の加護】で階段を製作すれば何のことはない。一歩一歩しっかりした足場を踏み込んで傾斜を駆け上がる。
15mほど登り下を見ると、全体の位置関係がよく判る。ユウちゃんと襲撃を受けた冒険者たち三人の馬車は山道の中央、フィアちゃんは私と反対の渓谷側。此処からなら上手く青飛竜を狙える。
視界の中心に標的を据え、番えた魔法の矢先を真っ直ぐ向ける。
魔法の矢は重力に引かれず直線に飛翔するから、放物線を思い浮かべなくていいのだ。質量が無いからね。
兎に角主題は牽制なので、偏差はあまり気にせず一発撃ってみる。放った魔法の矢は青い光の尾を引いて四頭の青飛竜に向かうが、掠りもせず空の彼方に消えていく。
「んー、高速だし狙えば行けるかなっと。」
ある一体に狙いを絞り、何度か魔法の矢を放つ。偏差を考慮した射撃も空しく全然当たらなかったが、
「……よし!、狙った所じゃないけど当たった!、これなら落とせる!」
今度は放った一本が尻尾に当たった、狙ったのは頭だったんだけど結果オーライ。
お陰で一体の飛行が乱れて他の三体も統率が壊れてバラバラになる。フィアちゃんがその隙を見逃さず、三体の両翼を魔法で撃ち抜き墜落させる。
飛行能力を失った青飛竜たちは、高高度から勢いよく地面に叩きつけられ立ち上がる力さえ失う。
[ガァアア、ガァアア]
上空に残る免れた一体は何度か吠えた後、私のほうへ方向転換して、頭上に影を落としながら山を越えていき、遂には見えなくなってしまった。
山を登って確認しようかと思ったが、やめた。だって結構高度あるし。
傾斜を下り終えると、フィアちゃんが撃墜した最後の一体に止めを刺している所だった。長く細い槍を逆手に持ち、青飛竜の首元に勢いよく突き立てる。
[ガ、ガァァ……]
ビクッと首を擡げたかと思うと、力尽きて地面に伏す。これで計六体の死体が完成した。
槍を引き抜き、体液を払っているフィアちゃんの下へ行く。
「……うん、これで終わりじゃの。」
「終わったの?、援軍は?」
「残った一体が吠えながら逃げる、それが撤退の合図じゃ。六体屠って逃げるとなると、群れ全体の頭数は18くらいだったのだろうの。」
「三分の一がやられたら逃げるってことか、少ないほうなの?」
「うん、100を超す時もザラにあるから今回は運に恵まれたの。怪我人がいなければ如何とでもなるが、防衛戦は気苦労が多い。」
私がしゃがんで死体を眺めていたらサラリとそんなことを言う、これぞまさに竜殺しである。
私の当てた魔法の矢は尾の鱗を焦がした程度だってのにね。
「フールさん、お疲れさまです。」
ユウちゃんがこちらへ戻ってきた。
「怪我人はどう?、大丈夫だった?」
「今のところは、と言った感じですね。骨が折れてるから治すには時間がかかるかなと。」
襲撃を受けた馬車のほうを見ると、添え木を片足に巻いた青年が蹲っていて、傍には包帯などの治療道具が散らばっている。たぶん青年に寄り添っている彼女が使ったんだろうね。
……一応声かけておくか。
壊れた馬車のほうへ歩いていくと女の子がこちらに気付いて立ち上がる。
「怪我は大丈夫ですか?、骨折したって聞きましたけど。」
「は、はい。治療は私がしたんで、もう命に別状はないです。暫くは歩くのも大変だと思いますけど、竜の群れに襲われたんだから文句言っちゃダメですよね。有難うございました。」
治療した彼女がお辞儀をしてくるが、私自身はあまり大したことが出来なかったので、何とも照れくさいだけ。
「お礼はフィアちゃんにして欲しいかな。あ、そこの竜人の女の子のことね。」
「……彼女、凄かったですね。あんな大きな竜たちをバンバン魔法で撃ち落として……、凄いです。」
「ふん、不意打ちを食らわなきゃ俺だってアレくらいできる。」
「ちょっとハヤト!、助けて貰ったのに何言ってるのよ!」
「……助けなんて無くたって、俺は。」
自分を過信してるのか本当に強いかは知らないけど、骨折してちゃあ戦えんだろうて。
「コラ、助けてくれた恩人たちに何言ってるんだ。お前だけで竜種はまだ早いって言っただろうが。その怪我だって命令無視からだ、言い訳はよくないぞ。」
「タツモト!、俺は竜を殺すために剣を握ったんだ!、奴らが悠々と飛んでるのを見過ごせって言うのか!」
「そーだ。死んだら何も残らないし、竜退治もできなくなるんだ。喧嘩吹っ掛けたってしゃーないだろ。」
「…………ちっ。」
ちょっとばかし叱ってやろうかとも思ったけど、この小生意気な青年の同伴者の男性が全部言ってくれた。
「いやどうもウチのガキが莫迦なことを言ったようで。……少し向こうで話でもしませんか。」
「ええ、いいですよ。」
壊れた馬車から少し離れて、青年には聞こえない位置で会話を始める。
「あのガキ、ハヤトって言うんだが、自分の力量を判ってないと言うか、敵の力量を判ってないというか。兎に角知識不足なんだわ。
素養はあるから面倒は見てるが教育が足りなかったようで、本当に申し訳ない。
それでなんだが、青飛竜を撃退してくれた礼がしたい。生憎旅の途中で持ち合わせは少ないんだが、できる限りは出させてもらおう。」
両翼合わせて3m、尻尾だけでも2mくらいはある大物だけど、フィアちゃんがいてくれたお陰で何事もなく撃退できた。でも普通はそうはいかない。犠牲が出ることもあるはずだ。
ただ、報酬をもらうとなると気が引ける。戦い自体はあっけなく終わってしまったし、こちら側の被害はゼロだ。寧ろ素材分儲かったと言ってもいい。
……ん-、そうか、素材は欲しいな。
「では、お礼は青飛竜の素材ということでいきましょう。
あ、別に全部はいらないんで一頭分はそちらの物と言うことで。」
「いいのか?、俺たちは竜討伐に一切貢献できてないし素材の権利はないと思うが。
……まぁでもそうだな、要らないなら貰おうか。捨てるのは勿体ないしな。」
「ええ、勿体ないです。」
換金すればいいだけだから本当は貰ってもいいんだけど、蟠りは残したくないし。タツモトさんもこちらの意図を理解してくれたようで何より。
6日後、4/24(日)[第73話]投稿。




