表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暇つぶしにドラゴン狩ってきます。  作者: c/1-0@斜の廃塔。
知らない世界を見よう。
65/83

第65話:旅をしていると、過去の遺物にも遭遇する。

 遅くなってしまった。でもある意味いつも通りの時間。


=1962字=


 次回も別視点です。思ったよりボリュームがあったんだ、仕方ないね。

 振り向くと遥か後方に黒煙が立ち上っている事を確認できた。

 距離にして凡そ2km、30分程既に歩いて村は遠くになっているが、走ればすぐか。


「……行こうか。」


 荷物を地面に投げ捨て、俺は走り始めた。

 全速力で走りながらも俺の視線は村の方を向いている。

 草原故に見通しが良くユカ村は視界に入っているが、旅立ちの時に見た様子とは変わっている事が判る。

 主に木材で組み立てられていた家屋は無惨にも炎上し、更に勢力を拡大しようと隣に飛び火している。


 ユカ村に着いた時、其処には家屋などなく、代わりに黒々とした炭が幾重にも山積していた。

 

「……延焼の様子を見るに、森の方からか。」


 良く見ると全焼しているのは森側に多く、草原側は未だ炎上し続けている。

 レイナさんの家も少し森から離れていたとは言え、既に燃え尽きてしまっていた。

 今朝のスープを煮込んだ鍋が無惨にもひしゃげ、黒い煤を付けていた。


 しかし、これ程までの被害に対して、奇妙な点がある。


「……村人が居ない。死体すら無いのは異様としか言えない。」


 そう、良く見た訳ではないが、ユカ村の住人が一人も居ないのだ。

 家が燃えてしまったとして、一軒目で死傷者が出るのは仕方ないとしても、他の延焼した家屋の住人には逃げる猶予があった筈だ。


 すると又1つ、炭となった村に爆発音が響く。

 それは俺から見て前方、森の方だった。


「さっき聞い轟音と同じ、しかし今度のはそう遠くない。急ごう。」


 今朝、朝食の為急いだ道を逆走し村を突っ切る。

 炭の山を抜けた先に見えたのは今朝と変わらず青々とした森。

 しかしその中に俺の記憶と食い違う巨大な岩がめり込んでいた。


 いや、あれは…………


「た、……す…けて。」


 女性の声がした。

 良く見れば巨岩の手前に一人の女性が見える。

 あの栗色の短髪は……、レイナさんか!


 倒れている人が誰であるか察する前に、俺の左手は愛剣の柄を持ち、引き抜いていた。

 迫り来る巨岩、その名は……、


「『堕落者:グラモス』……か。」


 100年前に淘汰された、……淘汰された筈のリオ種最大の巨体を持つ、奴が何故此処に……!?


 奴の吐く熱球に当たらぬ様、接近戦に持ち込む為に、足を地面に叩き付けながら、俺は戦慄したと共に安堵していた。

 俺でなかったら、戦争が消滅していた。

 俺ならこの女性を含めこれ以上誰も死なせない。


 愛剣を速力を乗せ、穿つ。

 鼻先に当たった剣は[キーン]と甲高い音と共に弾かれるが、堕落者(グラモス)が仰け反って俺との間に距離が開いた。


「【治癒の領域】【守護の防壁】目標に展開。」


 少しの時間余裕ができた、その間にレイナさんに治癒と守護の結界を張っていく。

 様子を見ると、余程限界だったらしい、意識は無いようだった。


 弱点の鼻を傷付けられた堕落者(グラモス)は、その揚力を生まなくなった巨大な穴だらけの翼を豪快に躍動させる。

 巻き起こされる烈風には、恐ろしく巨大な怒りの念が篭っていた。


「……誰かが秘境で眠る彼を怒らせたのか?」


 元々は温厚な生物だ。

 竜種の特性を使い、普段は何も食べず魔力だけで生きる彼らは、怒らせると実に恐ろしい。

 彼らの逆鱗は『束縛』、邪魔者は誰何なしで蹂躙される。


 今は俺が放つ魔力で表面上拮抗しているが、物理では完全に此方が不利だ。

 堕落者(グラモス)の恐れられる所以は攻撃力ではない。

 確かに血液を蒸発させる程の熱球は強力だが、厄介なのはその鱗だ。

 圧倒的硬度を誇る上に魔法吸収も可能と言う、防御面での死界はなしとさえ言われる。

 普通の剣では太刀打ちできまい。


「竜種亜型であるリオ種に歯向かうには、同等以上の素材でなければ。

 愛剣よ、Lv.V『紅龍の剣』へ移行せよ。」


 俺の掌の上で、愛剣は踊る。

 刀身の鋼が引き延ばされ、鞘に纏わり付く。

 代わりに鞘の紅い部分が分離し、液体が固まるかの様に刀身になってゆく。

 後は俺が一振りし、愛剣は生まれ変わった。


「天に召された老龍、その赤熱した一本角はあらゆる物体を貫いた。」


 さて、暴れる堕落者を静めようか。




□□□




「ん…………、んん。」


 暫くして、漸くレイナさんが目を覚ました。


「あ…………れ、ルク…………さん? 何で此処に…………?」

「どうも、また逢いましたね。」


 怪我などは治っていると思うのだが、(イササ)か混乱しているようだ。

 レイナさんに水筒を渡すと、何も言わずグイグイと飲み始めた。

 他の住人が何処へ行ったかなど聞きたい事はあるが、説明は落ち着いてからにしよう。



 少しして、レイナさんが水筒から口を離した。


「…………落ち着きましたか?」

「ええ、有難うございます…………。」

「何があったか話せますか?」

「はい。」


 しっかりと落ち着いているようだ、言葉がハッキリしている。

 多くのモノを失った事には気付いているだろうに、強い人だ。


「異変が起こったのは、ルクさんが旅立ってから20分後くらいでした…………。」


 1週間後8/30(日)[第66話]投稿予定。

 ところで今週から学校始まるって聞いたんだけど、夏休みって31日までだよね(微振動

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ