第60話:覚悟したその日に、私は如何変わったんだろう。
少し遅れました。
朝書くと微妙に遅れる、なんでだ。
=1737字=
地に足を付け、しっかりと跡を刻む。
意識を一歩一歩に、身体の行動全てに思考を乗せる。
[グァアアア]
視界にイノルグが近づいてくる。
先程の奴よりやや大き目か、しかし動きは大して変わりは無い。
コレなら勝てるか。
走りながら剣を軽く薙ぐ。
[ッアア!]
鼻先を斬られたイノルグは痛みから悲鳴を上げる。
今度は刃が食い込まないように軽く当てた、すぐに次の攻撃に移れる。
攻撃によってイノルグは前足を上げて暴れている、次が当てにくいな。
まぁ私の動体視力は中々のものだ、暴れていたとしても関係ない。
右足を軸に回転し、また剣を振るう。
[アアアアア!]
左眼を斬られたイノルグは痛みから悲鳴を上げる。
今度も刃が食い込まないように軽く当てた、次はどうしようか。
左側が死角になっている今なら、此方から攻めたほうがいいかな。
回転を加速させつつ軸を左足に移し、今度は少し深めに薙ぐ。
速度が付いていれば刃が食い込んで抜けることは無い。
集中が高まると、イノルグの悲鳴が聞こえなくなってきた。
回転はまだ加速する。
イノルグの血が飛び散るのも厭わず、ただ剣を振るう。
4回転ほどすると、イノルグの体勢が崩れ始める。
そろそろトドメだ。
剣を両手に持ち替え、遠心力をそのまま刺突に繋げる。
心臓がありそうな位置に当てる。
肋骨は上手く避けられたか、今度は堅い感触が無い。
剣の半分ほどまで深々と刺さったその剣を、私は腕力だけで引き抜く。
私、思ったより力あるな、足蹴り無くてもいけた。
イノルグはドサリと地に伏した。
「ふぅ、結構できるもんだ。」
心を強く持てば戦いの最中くらい他の事は忘れられる。
そもそも他の事を考えている時点で相手に失礼だ。
自分の為に君を殺すことに私は躊躇しない。
只、君が私の敵で、私が君の敵だっただけ、そしてこの状態にしたのは私だ。
恨んでくれていい。
私は君の敵だった。
「…………君の事は忘れない。」
さぁ、次の罪を背負いに行こう。
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「これで、最後です!」
ユウちゃんが魔法を放ち、最後のイノルグを倒す。
「おわったーー!」
全身血みどろだけど、この達成感の前ではちっぽけな事だ。
「思ったより楽にいけた、途中からフールの動きが良くなったからな。
…………顔つきも変わったか?」
「そうですか? それならよかったです。」
覚悟できたのが大きいかな、少し前の自分とはまるで別人だ。
成長できた気がする。
「さて、達成感に浸るのもいいが、こいつらの解体を始めようか。」
「ああ…………。」
解体…………また別の覚悟がいりそうだ…………。
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その後、グーデントさんと一緒に解体をした後、町によってから馬車に解体したイノルグも載せて王都に帰ってきた。
ん、解体の感想?
…………うん、殺生よりはまだ良かったよ、殺生よりはね。
ああそういえば、服が返り血で大惨事だったから町で新しく買って着替えた。
流石にあれを着るのは無理だ。最低でも水洗いしないと、乾いたら固まってきたし。
王都に帰ってきた後はいつもしていたゴブリン討伐以来の時と大差ない、実務的な取引をしておしまいだ。
只、今ままでの実績で冒険者ランクが上がってDになった。
そして此処から一年が経つ。
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「さて、今日も今日とて、冒険者してきますか。」
「今日はいつもより遠出するんでしたっけ?」
「今回は妾が馬じゃな。」
王都の外周近くにある一軒家から、馬小屋に向かう。
「おはよう、レイ。」
馬小屋に居るのは白い1頭の馬だ。
名前は『レイ』、白かったからなんとなくそう名付けた。
最近は依頼の為に遠出することもあるので、中々仕事をしてもらっている。
本当は馬車用と騎馬は変えたほうがいいんだろうけど、そこまでは余裕が無かった。
苦労かけてると思う。
「じゃあ、行こうか。」
馬を引き連れ、大通りまで歩いてくる。
今日もまた日常が始まる。
そう思っていた時期が私にもありました。
しかしながら、人生そう平坦ではない。
「あ。」
王都中央から赤い狼煙があがっている。
それと同時に、街全体が騒がしくなる。
「…………遂に隣国が攻めてきたようじゃな。」
「これはこれは実にタイミングが悪い、昨日だったら許すのに。」
家も買ったというのに、平穏に暮らさせてくれないとか、あの自称神は一体何を考えているんだ。
さて、取り敢えずギルド行ってみますか。
1週間後7/26(日)[第61話]投稿予定。
次からは一年後の世界だ! タイトル詐欺から脱却するぜ!




