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第2話:『自分の事故紹介は充実してるなぁ。』と思う今日この頃。**

お暇でしたら読んでください

 俺は、四月一日 秀  26歳


 …先に言っておくが(しがつついたち しゅう)なんて名前じゃない。

 (わたぬき しゅう)と読みます。読むんです。


 まあ、一度も初対面で名前を読めたやつはいないから諦めたけど…



 俺の生まれた家は結構普通の家だった。

 俺は近くの公立学校に通い、山も谷も川も海も無い普通な人生を歩んでいた。


 そんな平凡な生活に転機が訪れたのは高校二年の夏だった…



 その日

 一日中暇だったので本を買いに行った


 俺は勉強もスポーツもやる気が無く

 この前買った新作ゲームも敵にハメで殺されてから起動する気も起きず

 アニメも漫画も最近面白いものが無い


 家でごろごろする

 それ以外することが無い

 

 そんな時に思い付いたのが本だった



 その日、俺は初めて本屋というか古本屋に行った

 

 夏の真昼間だったので死ぬほど暑かったけど何事も無く着いた


 クーラーで涼みながら適当に店内を見て回る

 

 シリーズで安売りしているコーナーを見つけた


 金はあったので五千円、全二十巻を表紙も見ずに買った


 袋が千切れそうだったが汗だくになりながらどうにか持って帰った


 そしてタイマー設定で涼しくなっていた部屋に入りテーブルに袋を置く


 唯一数字の書いてなかった一巻を袋から取り出して読み始めた


 


 その本はいつもと変わらない日常を歩んできたある少年が主人公だった


 家の家宝にうっかり触ってしまったその少年は

 一瞬で光に包まれた

 思わず閉じた目ど開けると

 そこは今まで居た自分の家などではなく

 一面草で覆われた地平線まで見える大草原だった

 

 そして自分の家に帰るため見知らぬ土地で孤立奮闘する


 そんな物語


 

 俺は今までに無いくらい集中して本を読み進めた


 一瞬で最後のあとがきまで読んだ

 

 ふぅ…と息を吐きながら本から顔を上げた


 すると部屋が赤く染まっていた


 窓から夕日が見えている


 時計を見るといつの間にかもう7時前


 下からは俺を呼ぶ母の声か聞こえる

 

 俺はこの本のめぐり合わせに感謝しつつ

 夕飯の待つ一階に降りていった


   


 この本によって俺の人生は

 何も無い作業の様なものから

 ある事の為に障害をぶち壊していくものに変わった



 その日から


 俺は本屋を見つけては吸い寄せられるように店の中に入り

 欲しいものがあったら即座に買う

 無かったらカウンターで予約してから新刊を沢山買う

 時間があれば様々なバイトをし

 資金を調達する

 そしてまた本を買う


 という事を繰り返した


 そんなことをしている内に俺の部屋は

 どんどん本で埋まっていった…



 それ毎日変わることなく続いた


 部屋は寝る所が一畳ほどあるだけ

 本は頭上高く積みあがり

 隣の部屋は足の踏み場どころか手の入る隙間すら無い


 大学4年の俺に早く仕事を見つけろと言っていた両親は

 俺が22の時に不運な交通事故で亡くなってしまった

  

 俺は両親の葬儀が終わった後

 今更就職する気にもなれず

 生活費をバイトと遺産で工面しながら、ただ本を読み続けた


 時間が経つにつれ本の種類は多岐にわたり時には哲学にまで手を出した



 そんな本に囲まれた日常生活が過ぎていった…



 そんな中、俺は死んだわけだが死因はと言うと………





 あれ?

 何で俺死んだんだっけ?




(考え中……)


ぽくぽくぽくぽくぽくぽくちーん




 はぁ…


 思い出した……


 思い出したのは思い出したんだけど…




 あの夏の日

 俺は炎天下の中、八件ほどまわってどうにか見つけた新刊を持って、家に帰った。


 部屋に入るとクーラーのタイマーを付け忘れたせいで蒸し暑い


 すぐに俺はクーラーのスイッチを入れようとした


 だか、リモコンが何処にも無い

 きっと本に埋もれてるんだろう


 仕方無い、直接入れるか…

 

 と思ってクーラーの方を向くと

 それはいつの間にかラノベ山脈と呼ばれる(俺だけ)大量の本の向こう側に角が少し見えるだけになっていた…



 この部屋の何処かにあるリモコンを探すか、あの山を登るか…



 俺はあの山に挑むことにした。多分、それが人生最悪の選択ミスだったと思う。


 俺が第一歩目を踏み出したときにそれは起こった

 多分限界だったんだろうな


 足を乗せた瞬間、山が崩れてきた


 そして俺は本に乗っていたせいでバランスが保てず後ろにひっくり返り

 避ける事も出来ずそれに飲み込まれてしまった…





 <死因> 本の倒壊による圧死


   嘘だと言って欲しい…








お手数ですがお気に入りに入れてくれると嬉しいです

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