表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

でぃあ まい とらぶるめーかー!

作者: Peta





とある町のとある住宅街のとある所に男の子と女の子が住んでいました。ふたりは幼馴染みで、幼い頃からよく遊びました。時が経っても女の子は男の子を遊びに誘います。しかし、男の子は女の子と遊ぼうとはしなくなりました。男の子は女の子と一緒に遊ぶたびに自分に良くない事が起こる事に気が付いたのです。女の子は………彼女はトラブルメーカーでした………







〜〜〜〜〜♪〜〜〜〜〜♪


耳元で目覚まし時計のアラームがなり響く。


「寒い……」


目が覚めてまず思う。なぜ、日本には冬があるのだろう……寒いのは嫌いだ。アラームを止め、布団から出ようとしない体を引きずりながら洗面台の前に立つ。冷水で顔を洗い、鏡に目をやる。


「………」


鏡の中では、銀髪でまだあどけなさを残した可愛らしい顔立ちの女の子がこちらを見つめ返している。紛れもなく自分自身。自分で言うのもなんだが………めちゃくちゃ可愛い。


「あら、葵ちゃん。おはよう。」

「あぁ、おはよう母さん。『ちゃん』は止めて………」


柚木葵、16歳。身長154cm、体重45kg。背中まである長い銀髪に可愛らしい顔立ち。そして、性別―――…


「俺、男なんだから。」


そう、俺は男だ。紛れもなく男だ。しかし、どういうわけか外見はどっからどうみても女の子。はぁ………。


「あら、いいじゃないの。そんなに可愛いんだから!」


この息子の悩みを全く理解していないのが俺の母親、柚木春菜。長い銀髪で綺麗な顔立ち………つまり、俺の遺伝情報は9割方母さんに偏っている。


「とにかく嫌だ。」


そう言い残し部屋に向かった。母さんが

「昔は素直だったのに……」

とか言ってた様な気がするが無視するとしよう。







「………」


部屋に戻った俺は絶句した。


「よっ!」

「『よっ!』じゃねーーー!なんで俺の部屋にいるんだよ!」


部屋には先客がいた。


「え?なんでって、その……暇だったから?」

「なんで疑問形なんだよ。暇だったからってどんな理由だ!だいたいどうやって入った!」

「窓から。」

「………」


確に窓が開いていた。鍵はかけた筈だが……。よく見ると鍵の辺りが円形に切り取られている。


「強化ガラスにしとかないと簡単に入れちゃうよ?」

「犯罪じゃねーか!!!」


コイツは如月夏澄。俺の幼馴染みでクラスメイト。そして、とんでもないトラブルメーカーだ。俺の平和な日曜日にまで踏み込んで来やがって……!てか、窓ガラスを切り取った道具はどこで手に入れたんだよ……!


「ん?なんだそのバック……」


夏澄はバックを大事そうに抱えていた。


「な、なんでもない!なんでもないから!」


へんなやつだな……


「そんなことよりさ、暇でしょ?ちょっと付き合ってよ。」

「嫌だ。」


きっぱり即答してやった。


「なんでよ!」

「俺の身が持たないからだ。」


昔から夏澄と遊ぶたびに俺の身になにか良くない事がふりかかる。山へ行った時は遭難するし、海へ行った時はサメが出るし、街へ行った時は引ったくりに遭うし………車に撥ねられた事もある。


「どうしても……ダメなの……?」


うっ!?そんなうるんだ瞳で見つめないでくれ!………正直コイツは学校にファンクラブができる程可愛いし、そんな可愛い娘が幼馴染みである事を神に感謝したこともあるが………それとこれとは別問題だ!夏澄といたらいつか死ぬ!俺は死にたくない!


「どうしてもダメだ!」

「そう………」


ん?どうしたんだ?うつ向いて喋んなくなっちまった。


「夏澄?」

「……うっ……ひっく………!」


なにいぃぃぃ!?な、泣いてる?気まずい!非常に気まずい!母さんが来たりしたら非常にまずいことになる!


「お、おい!泣くなって!」

「だって……だって……ひっく……葵、最近遊んでくれないし……うっ……せっかく誘ったのに………!」

「わかった、わかったから!今日一日付き合ってやるから!」

「……言うこと聞いてくれる……?」

「あぁ!聞いてやるから!だから泣くなって!!」







………なんであんなこと言っちまったんだ。


「葵!これ買って!」

「はぁ……」


俺達は近くのアーケードに来ている。赤やピンクのリボンで飾り付けられていて無駄にファンシーだ。


「なによ。今日一日言うこと聞くって言ったでしょ。」

「嘘泣きだったのかよ………」

「ふっ、騙される方が悪いのよ。それに、涙を流したのは本当だから嘘泣きじゃないわ!」




どんな理屈だよ……。今日一日、財布係決定だな。さよなら、俺の諭吉……。


「で、何を買えと?」


「これ!」


夏澄が指差しているのは腕時計。えーっと値段は……いち、じゅう、ひゃく、せん、まん………ひゃくごじゅうまん!?


「このROLEXほしかったんだ〜♪」

「買えるかーーー!!!」

「はぁ、役にたたないわね。」


ぐっ!?なんていいぐさだ!


「無茶言うな!ROLEX買える高校生なんてそうはいねえよ!」

「じゃあこれでいいわよ!」


夏澄が指したのは指輪。シンプルなシルバーリングでなにやら好きな文字を彫ってくれるらしい。値段は………3万……無理!


「そんな金……

「あれ?夏澄じゃない!」


誰かの声に遮られた。


「香織さんじゃないですか!」

「丁度良いところにいた。」

「どうかしたんですか?」


……なんか俺抜きで話が進んでいく。


「なあ夏澄……」

「なに?」

「誰?」

「部活の先輩。」


部活の先輩ね〜。ちなみに夏澄は合気道部だ。しかもめちゃくちゃ強い。


「夏澄お願い!バイト手伝って!」

「はい?」

「今日のシフトの人達がさ、風邪やら腹痛やらで皆休んじゃって……」


うん、それは大変だ。


「もちろんです!香織さんの頼みを断るわけないじゃないですか!」


よし、このままいけば俺は解放される!


「出来ればあなたも手伝ってくれない?」

「え?」


俺も?………これは予想外の展開だ。なんとなくトラブルの臭いがする。


「ごめんなさい。これから用事が……

「もちろん大丈夫ですよ。ねっ、葵!」


………怖い。笑顔なんだが目が笑ってない。『断ったら殺す』的な目で見られている……。


「よかったわ!それじゃあ二人とも着いてきて!」

「はい!」

「はい……」


元から俺に逃げるという選択肢は無かったようだ……。







「ここですか?」

「そうよ。早くしないと。」

「………」

「葵!早く!」


いやいやいや、待てって!俺の目の前にはファンシーな空間が広がっている。並ぶテーブルとイス、エプロンドレスの方々。…………メイド喫茶じゃねーか!!!


「店長〜!臨時のバイト連れてきました!」


出てきたのは若い女性。この人が店長か……


「ナイスよ香織!さああなた達、早くエプロンドレスに着替えて!」

「あの、香織さん?」

「葵ちゃん、だったわね。なに?」

「バイトって………」

「メイドよ。」


絶対無理!だって俺男だよ!?男子高校生だよ!?メイドは無理だって!


「葵、早く着替えなさいよ。」


夏澄は既にメイド服に着替えていた。……可愛い……じゃない!


「いや、無理だって!だって俺、男だし!」

「そうだったの!?てっきり女の子かと………」


驚く香織さん。………なんか泣きたくなってきた。


「そんだけ可愛ければ問題なし!さっさと着替えて!」


うぉい店長!?


「さあ、あんたら!ひんむいてでも着替えさせなさい!」

「葵……言うこと聞いてくれるって言ったわよね?」

「ごめんね〜葵ちゃん。」


ジリジリと三人が近付いてくる………


「い、嫌だーーー!!!」







5分後―――…


『可愛い〜〜〜♪』×3

「ぐっ………!」


敢えなく着替えさせられた。……今日は厄日だ。


「それじゃあ練習ね。香織、お手本。」

「はぁい。じゃあ二人とも真似してね!」


なんか香織さん、はりきってるよ……


「おかえりなさいませ、御主人様♪」


まじで?まじでこれやるのか?


「はい、じゃあ夏澄!」

「おかえりなさいませ、御主人様♪」

「いいわね。じゃあ次、葵ちゃん。」


くっそ〜ここまで来たらヤッテヤルゼ!


「おかえりなさいませ、御主人様♪」

「あはははは!」

「笑うなよ!」

「そうよ夏澄!とっも可愛かったじゃない!」


香織さん……それフォローになってねぇ!


「そろそろ店開けるよ!」

「はい、店長!」

「ほら、早速来たよ。」

『おかえりなさいませ、御主人様♪』×3


………あー…涙出てきたよ。







「とんでもない目に遭った………」


バイトも終り、俺達は帰り道を歩いている。


「いいじゃない。メイド喫茶で働くなんて体験そうそう出来ないわよ?」


そう言って夏澄が笑う。何が嬉しくてオタクの相手をせにゃならんのだ……。あれからなぜか俺は人気殺到。あんなに売り上げが出たのは初めてらしい。………複雑だ。


「いやぁ、今日は洋服も買えたし、満足満足!」

「俺の金だろ!」

「そんなこと気にしないでよ。」


気にするわ!今日だけで諭吉が何人いなくなった事か………


「ねぇ葵……」

「ん〜。」


夏澄はいきなり立ち止まって俺を見た。


「いつもありがと。私のわがままに付き合ってくれて……」

「なんだよ突然。」

「はい。これ……」


夏澄は朝から大事そうに抱えていたバックを俺に差し出した。中から出てきたのは綺麗にラッピングされた箱。箱の中には………ああ、そうだった……忘れてたよ。今日は――…


「ハッピーバレンタイン♪」


そう言って夏澄は照れ臭そうに笑った。


「食ってもいい?」

「うん!」


現れたハート型を一口かじる。苦い。………苦い?


「どう?」

「なんじゃこりゃーーー!?苦すぎだ!!!」

「最近流行りの高カカオチョコにしようと思って………」

「……何%だ。」

「100%。」

「カカオじゃねえか!!!」


なんてもん作りやがる!


「む〜!そんなに言うなら返してよ!………頑張ったのに……」


………泣きそうな顔すんなよ。………ふう。しゃーねーなぁ。


「やだね。」

「え……?」

「返さねえよ。全部食う。」

「葵……」

「いいんだろ?」

「……うん!」


なんだかんだ言っても、俺は今の夏澄に振り回される生活が好きなのかもしれない。まぁ、ちょっとぐらいならトラブルに巻き込まれてやるか………


「ホワイトデーはあの指輪がいいな♪」

「……はぁ。」


ちゃっかりしてやがる。買うはめになるんだろうな……あぁ、そういえば好きな文字を刻めるんだっけ?………よし!こう彫る事にしよう―――…







『Dear My Trouble Maker』







後日談――…


「やべぇ、腹痛が………」

「拾い食いでもしたの?」

「お前のチョコのせいだ!!!」


――…END

どうも、書いた後で『今年のバレンタインって水曜じゃん!』と気付いたぺたです。コメディーというものを初めて書かせていただきました。こんなんで良いのでしょうか?評価や感想をいただけると幸いです。実はこの小説、最後のチョコを渡すシーンを書きた買っただけです。だけど書き始めて、『恋愛モノは書けねー』と諦めてコメディーにしました。………う〜む。最後に、ここまで読んで下さった方に感謝を。それでは!


‐2/13(火) ぺた‐

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 面白いです。短編小説もいいですが、ぜひ連載小説にもして欲しいです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ