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E-mail of reveng  作者: 朱鷺
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後編



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

from:松本

to:松本


sub:好きになっても、仕方ないのに。


自分を大切にできていないんですよね。


遊ばれて、捨てられて、結局泣くのは女なのに。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・







後編







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


from:松本

sub:同好会のお知らせ


編み物発表会の日にちが、決まりました。

開催日程は、後ほど郵送します。




香山さんと佐藤さんのことです。


あのオフ会の後、何回かショッピングに出かけたと目撃情報がありました。


驚きです。


お二人は、水と油という印象があっただけに。


そのことは、同好会の内部でもすごい噂になっています。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





プルル。



ブルルル。



「こんにちわ。朋美さん。ちゃんと、鷹人さんを満足させているの?彼にストレスをかけるようなことをしないでね。…私のものなんだから」







いつか来るだろうと思っていた電話だった。










夕方。


帰宅した彼は、異様な雰囲気の家に身体を強張らした。

全てが闇へと沈みかけ、輪郭があいまいな時間帯。


部屋の中には、明かりがまったく無かった。


妻の朋美は、居間のソファに力なく座り込んでいた。


鷹人の頭にひらめくものがあった。

しかし、そのことには触れず、無難に様子を伺う。


「朋美、どうしたんだ?」


「どうしたんですって!?」


彼の予想を上回り、状況は悪化していたようだ。


鷹人を見上げる妻の目じりが、光っている。


「佐藤魅羽って、貴方にとってどういう存在なの!?智子が可愛くないの!?満足していないから、浮気するの!?」


「だ、誰が、そんなこと!」


「浮気相手よ!貴方の!満足されていないみたいですって!みたい!そういって、笑って!」


そういうなり、朋美はたまりにたまった鬱憤を爆発させた。






真奈美は、漏れ出す笑みを抑えようと口を覆った。


「あ~らあらあら、朋美さんたら、都会に住んでいるのに無用心ね~」


双眼鏡から見える木川家は、まさに修羅場を迎えていた。


カーテンを閉じもしない。


朋美の無用心さを、せせら笑いながら双眼鏡を覗く。


木川家の室内では、ドラマより真の迫った喧嘩が繰り広げられている。


「許してくれ…かしら。くどき文句に比べ、謝罪のレパートリーが少ないのね。

浮気性の男の限界ね。本当の良い男から、もっと言いくるめる台詞が多いはずだろうし。


んん?」




手振り身振りで、苦しい言い訳をしている木川の動きが止まった。


やおら床に座り込むと土下座をした。


木川の妻は奥におり、彼女からは見えない。


しかし、木川の動きからすると和解の方向へ言っているのがわかる。


「残念!仲直りするみたいね」


ったく。


どうしようもない、男ね。


まあ、あんな男に引かれる女も女だけど。


朋美さんたら、どうして、ああも簡単に許すのかしら。


苦労したわ。木川が住んでいるマンションの窓が見える家を探すのは。

おかげで、木川や朋美さんの行動が把握できるようになったわ。


やはり、物事は効率的に進めないとね。


朋美さんに近づいたのも、我ながら良いアイデア!


軽〜いお喋り女のふりをして、付き合っている彼氏。会社の上司の悪口。


しゃべりに喋り捲ったわ。


“奇遇ですね。わが社にも、木川ってカッコイイ人がいるんですよ。既婚者なんですけれど、彼となら不倫しちゃおうかな。”


其のときの、朋美さんの顔ったら!


ばつの悪いふりをして、内偵するとほのめかしたらすぐ飛びついたわ。


メールで、木川のことを香山。同じ頭文字、Kつながりで。


後は、架空の同好会をでっち上げて、愛人達は本名をそのまま送ることに。


たとえ、木川が携帯を見ても、同姓同名の別人だといえば、男はそんなにも突っ込んでこない。


加藤さんもかわいそうね。


朋美さんに電話をかけたのは、彼女じゃないのに。


以前の私みたいに、純情のようだし。


悪いことをしたわ。


でも、世の中というのは、理不尽そのもの。


無実の罪で、会社を追われるのは貴女だけではないのよ。


私もね、今より以前に木川と出会っているの。


転職する前の会社でね。


ソコでの彼も、バリバリの営業マンで、成績もトップ。


ついでに言うと、女を追いかける足の速さもトップだったけれどね。


鈴木さん、木川にモーションをかけられないのは女としての魅力が無いからって言っていたわね。


誤魔化したけれど、訂正させてもらうわね。


ああいうタイプの−プレイボーイが、声をかけるのは相手に魅力を感じているからではないの。


隙があるからよ。


声をかける男も男だけど、女にもある程度非はあるのよ。


浮気性の女、しりの軽い女。貞操観念(古〜い)の欠落した女。そして隙のある女。


私の場合は、四番目でしょうね。


当時、私も付き合っている彼氏がいたのに、彼が声をかけてきたのはびっくりしたわ。



若い女子社員のみならず、おばさん連中も年甲斐もなく騒いでいたのを知ってから、余計。


久司を私なりに愛していたから、興味が無かったのよ。


でも、周囲は違ったわ。


貴方のおかげで、こっちの人生はめちゃくちゃになったというのに。


寺尾真奈美って、以前誘いをかけた女ぐらい覚えていなさいよね。


あれだけ、熱心に誘っておきながら。


人目をはばからずモーションをかけてくれたおかげで、同僚からハブかれたのよ。


同僚の誘いを、無視して私に誘いをかけてくれたおかげで。


仕事のミスは、全て私のせいにされるし。


周囲から孤立した上に、連続した仕事のミスで、中年連中よりさきにリストラのブラックリストのトップ。


地元には、家族が勤め先の自慢を、散々したおかげで帰れないし。


彼氏には暴力を振るわれるしね。


まあ、彼はもともとDVの気があったけれど。


この都会で、よい仕事は少ないのよ。


やっと、首にされた会社より良い勤め先を見つけたのに、貴方がヘッドハンティングされたときは呪われているのかと本気で思ったわ。


でも。


入社したときは、もう既婚者だったのには驚いたわ。




どうせ、朋美さんが堕ろせない時期まで黙っていて、責任を取れと迫ったんでしょうね。



でないと、木川は結婚なんてするような男ではないもの。


それにしても、今回はあっさりしていたわね。


朋美さんも諦めが早くなったわ…。


木川さん。


わが社ほど、他に良い給料も待遇をくれるトコは無いでしょ?


一週間後が、楽しみだわ。


だって、飲み会があるんですもの。


そこには木川好みの女が一杯。


今回は、一人だったけれど…次はどうかしらね。


三股またをかけたときの、木川の謝り方が楽しみだわ。


今度こそ………










離婚かもね。









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