最後の着信
深夜の静寂を破るスマホの着信。画面に表示されたのは、あり得ない「自分の電話番号」だった——。
怪奇現象か、それとも熱中症が見せる悪夢か。現実と幻覚が交錯する中で直面する、予測不能の衝撃作をお楽しみください。
真夜中、あまりの暑さと喉の渇きに起きてしまった。
その直後━━。自分のスマホに自分の番号から電話がかかってくる。出ると、小さな声で、
「今、玄関の外で待っているよ」
などと若いと思われる女のいたずらっ子のような薄気味悪い声。
私は 蛍光灯をつけ、部屋の周囲を見て回った。しかし、何の悪い兆候も見て取れなかった。
━━玄関……。やはり、玄関に回らなければならないだろうか?
わたしは二十歳の一人暮らし女子大生である。
着信メロディが再び鳴った。わたしは、恐怖に慄く。
震える手でスマホの通話ボタンを押し、耳にあてた。
「ねえ、早く開けて。冷たいお水、持ってきてあげたから」
あまりの暑さに息を乱しながら、わたしは玄関へ向かい、ドアスコープを覗き込んだ。
薄暗い廊下に立っていたのは、汗だくで冷えたペットボトルを握りしめる━━自分自身だった。
「あ……」
その瞬間、激しい頭痛と共に記憶が眩暈のように蘇る。
昨夜、猛暑の中で帰宅したわたしは、鍵を開ける直前に玄関の前で倒れ、熱中症で意識を失っていたのだ。
明るい蛍光灯も、喉の渇きで目覚めた自室も、すべて倒れた自分の脳が見せていた死に際の幻覚。
「早く開けて。中に入らないと、わたし、死んじゃうよ」
ドアの向こうの「自分」が、受話器越しに泣きそうな声で訴える。
わたしは必死でドアノブを回し、夢の中の部屋から、現実の玄関で倒れている「自分」を救うために鍵を開けた。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
深夜の着信という小さな違和感から始まる、現実と悪夢の境界線を楽しんでいただけたでしょうか。
熱中症の幻覚なのか、それとも真実なのか……読後の余韻とともに、皆様の夏の夜にほんの少しのひんやりとした涼をお届けできていれば幸いです。
また次の物語でお会いしましょう




