笑わずの元虐げられ令嬢の話
私は虐げられ子だった。
お母様が亡くなって葬式が終わり。お祖父様が帰ってから次の日には知らない女が来て、納屋に押し込まれた。
使用人達の態度も豹変したのならまだ良い。
無視をするようになった。いない者として扱われた。
最低限の食事と服・・・
たまにお母様の友人が来ても。
『エルダはミシュリーが亡くなってから・・・豹変しました。部屋に閉じこもって誰にも会いません』
『まあ・・』
やがて、私を心配する者も来なくなり。
女が子供を産んだ。
『父上と母上の愛を邪魔した女の娘!罰を与える』
義弟なのかしら?年下なのに、私にムチを打つ。
『キャア!』
『ジミー、これは召使いだ。自由に使って良いぞ』
『はい、父上』
お母様とお父様の間に何があったのか分からない。
私は一切の教育を受けなかった。
いや、お父様から教わったのは・・・
『笑ってはいけない!過去を思い出しているからだ!泣いてはいけない。現在を悲しんでいるからだ!』
『はい、お父様・・・』
これだけだ。それ以来、会話がない。
笑うとムチを打たれ。泣くとムチを打たれる。
そんな毎日を送った。
『フン、貧民街のガキは飢え死にすると聞いたぞ。エルダはまだ恵まれている!』
『はい・・』
義弟がそう言う
こういうものかな。私はまだ恵まれていると思うようになった。
時々、使用人が新しく来るが、私に無関心だ。
多分、10歳になる頃だ・・・転機が訪れた。
新人騎士がやってきた。騎士学校出の18歳、お兄さん?大人に見える。
『えっ、先輩!あの娘、虐待されていますよ!』
『いいんだ。先妻の子だ。あれは見えない物としろ。良くあることだ』
『はあ?!そんなわけないでしょう!』
えっ、あの男、騎士だ。私を本気で心配してくれている。
『お嬢様!逃げましょう!』
『えっ、私は・・・罪を償わなければ・・』
『子供に罪はねえよ』
彼の名は平民騎士エド、彼はその場で義弟妹たちを罵倒し。
『バーカ!バーカ!お前ら最低だ!』
私を脇に抱えて逃げだした。
それからはお決まりの冒険者、彼はその後の事をな~んにも考えていなかった。
でも・・・それが良い。よほど慌てていたのね。
『服だよ。ほら・・・えっ、何で泣いているの?』
古着を買えばいいのに、新品の服を買って来てくれた。
今までは小麦の袋に穴を開けて着ていた・・・
『ほら、食べていいんだよ!えっ、何で土下座しているの?お願い。席について!』
彼はアタフタ、私を心配してくれる。
彼と逃避行を半年続けた。
『エルダ、お母様の親戚はどこ?思い出してくれないか?送ってあげるよ』
『分からないわ。4歳の時だから・・・』
『分かった。貴族のお抱えの奴に聞いて見るぜ』
今にして思えば、遠回りだったと云う人もいる。
モウア伯爵家に嫁いだのがお母様だ。貴族院の名簿を調べれば良かった・・・
でも、平民では見られない。私が行けば、問い合わせをされてお父様に捕まったかもしれない。
それから、私はお祖父様に会うことが出来た。
『エルダ!』
『お祖父様・・』
何でも、社交界では私は性悪娘で弟妹を虐めていたと話題だったそうだ・・・
お祖父様も孫が10人いて、私まで気が回らなかったそうだ。
しかし、私への多額の援助をしていたそうだ。家庭教師、使用人のお給金、馬車まで・・・それは全て義弟妹、贅沢な生活費に使われていた。
『許せん』
お祖父様は告発し裁判を行った。結果は。
お父様とその女は債務奴隷、義弟妹たちは修道院に送られ厳しい教育を受けるそうだ。
もう、奴らはどうでも良い。それよりも・・・
『エド・・・は?』
『彼は・・・』
裁判の結果、判明した。彼の行為は善行だが犯罪でもある。
主家に対する反抗・・・死刑だわ。
『お祖父様、エドを助けてぇ!私、何でもする。エドの善行を告発するわ』
『エルダ・・・彼の願いはエルダの幸せだ。今、出て行ったら見世物になる・・今なら令嬢Eになっている』
『いい。私、さらし者になる!』
願いがかなわずそれから8年経過した。来年、学園を卒業だわ。
今、私は貴族学園のカフェにいる。
『は~い、エルダ嬢、笑ってよ。美人が台無しだよ。相席良いかな。そうだ』
思考に声が割り込んできたわ。現実に戻された。
・・・・・・・・・・・・・・
「でさ。とても良い遊園地が来ているのだって、一緒に行かない?」
移動遊園地が来ているのね。
「相席・・・許可した覚えがないのだけど」
「チィ、お高く止って!」
私には婚約者はいない。グレーシア侯爵家の養子、お祖父様の子になった。
笑わずの令嬢との二つ名があるが、私に声をかける殿方が後を絶たない。
ヒソヒソ~。
「うわ。笑わずのエルダ嬢に撃沈したぞ。今月何人目だ」
「言わないの。幼少の頃、悲しい体験をして、笑えなくなったそうよ」
「なるほど、私が行こう」
「アルディ・・」
また、殿方が来た。あれは・・・誰だっけ?
「相席、良いかな」
「断るわ」
「なら立ったまま話すよ。領地経営科の主席さん。次席の私にご教授願いたいものです。ナンバーワンツー同士、仲良くしよう」
「次席・・・誰かしら」
「なっ・・・まあ、良い。君の事を調べたよ・・」
平民騎士に救出されたそうだね。しかし、彼のやり方は宜しくない。
僕だったらもっと上手くやる。
証拠を集めて、貴族院に訴え。優秀な弁護士を雇って保護命令を勝ち取れるよ。
思わず眉間がピクッとなった。
「彼は馬鹿だよ。命令不服従で処刑されたって聞いたよ」
何が分かる。裁判の間、私は病死として殺されたかもしれない。かも?かも?かも?
一秒だってあの家にいたくなかった。今にしては危険だった。
「・・・話はそれだけかしら?」
「主席と次席がカップルになったら無敵ではないか?」
その時、王太子殿下と婚約者が来られたわ。
「ちょっと、いいかな。エルダ先輩」
「アルディ先輩、エルダ先輩を借りますよ」
「はあ?王太子殿下・・・とエルフガング公爵令嬢・・」
一年生だけど生徒会長、婚約者も一緒だわ。
その2人の後ろに・・・彼がいた。
「エド・・!待っていたのだから!」
「どうも・・・」
あれから、エドは恩赦を受けた。
そして、王子の養育係になった。
当時の王太子殿下は、命令に反抗しても子供を助けた彼を王子の護衛騎士にしたのだ。
彼なら、決して王子を裏切らないと思ったそうだ。
笑みがこぼれる。私は笑わないのではない。
笑いたい時に笑うのだ。皆と変わらない。
「エルダ先輩、エドをお返します」
「はい、承りますわ」
腕を組みエドを引き寄せた。
エドは長年の王子殿下の養育係の功績により子爵になる。
領地付だ。
「エド、新領地は調べたわ」
「あの、エルダ、何故?」
「貴方は魔物対策の責任者よ。現場に出て欲しくないわ。怪我したら大変ですもの。あ、もちろん、何でも貴方の許可を受けるわ。使用人の面接とかいろいろやることがあるわ」
「いや、だから何で?」
あの次席はポカンと口を開けている。
「何で?こんなおっさんが・・・エルダ嬢が笑っている・・」
「ゴホン、アルディ先輩、エルダ先輩は王宮ではよく笑っていますよ」
「王宮・・・ええっ」
「父上に特別に出入りを許可されていますよ。エドとエルダ先輩は父上と母上のお気に入りです」
「いや、エルダ、就職するの?助かるけど・・・」
「フフフフ、一生就職するわ」
エドはどうも鈍い。だけど、彼の隣にいるだけで幸せだわ。
最後までお読み頂き有難うございました。




