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笑わずの元虐げられ令嬢の話

作者: 山田 勝
掲載日:2026/03/22

私は虐げられ子だった。


お母様が亡くなって葬式が終わり。お祖父様が帰ってから次の日には知らない女が来て、納屋に押し込まれた。


使用人達の態度も豹変したのならまだ良い。

無視をするようになった。いない者として扱われた。


最低限の食事と服・・・


たまにお母様の友人が来ても。


『エルダはミシュリーが亡くなってから・・・豹変しました。部屋に閉じこもって誰にも会いません』


『まあ・・』


やがて、私を心配する者も来なくなり。

女が子供を産んだ。



『父上と母上の愛を邪魔した女の娘!罰を与える』


義弟なのかしら?年下なのに、私にムチを打つ。


『キャア!』


『ジミー、これは召使いだ。自由に使って良いぞ』

『はい、父上』


お母様とお父様の間に何があったのか分からない。

私は一切の教育を受けなかった。


いや、お父様から教わったのは・・・


『笑ってはいけない!過去を思い出しているからだ!泣いてはいけない。現在を悲しんでいるからだ!』


『はい、お父様・・・』


これだけだ。それ以来、会話がない。

笑うとムチを打たれ。泣くとムチを打たれる。

そんな毎日を送った。


『フン、貧民街のガキは飢え死にすると聞いたぞ。エルダはまだ恵まれている!』

『はい・・』


義弟がそう言う

こういうものかな。私はまだ恵まれていると思うようになった。


時々、使用人が新しく来るが、私に無関心だ。


多分、10歳になる頃だ・・・転機が訪れた。

新人騎士がやってきた。騎士学校出の18歳、お兄さん?大人に見える。



『えっ、先輩!あの娘、虐待されていますよ!』

『いいんだ。先妻の子だ。あれは見えない物としろ。良くあることだ』


『はあ?!そんなわけないでしょう!』



えっ、あの男、騎士だ。私を本気で心配してくれている。


『お嬢様!逃げましょう!』

『えっ、私は・・・罪を償わなければ・・』

『子供に罪はねえよ』



彼の名は平民騎士エド、彼はその場で義弟妹たちを罵倒し。


『バーカ!バーカ!お前ら最低だ!』


私を脇に抱えて逃げだした。


それからはお決まりの冒険者、彼はその後の事をな~んにも考えていなかった。

でも・・・それが良い。よほど慌てていたのね。


『服だよ。ほら・・・えっ、何で泣いているの?』


古着を買えばいいのに、新品の服を買って来てくれた。

今までは小麦の袋に穴を開けて着ていた・・・


『ほら、食べていいんだよ!えっ、何で土下座しているの?お願い。席について!』


彼はアタフタ、私を心配してくれる。


彼と逃避行を半年続けた。



『エルダ、お母様の親戚はどこ?思い出してくれないか?送ってあげるよ』

『分からないわ。4歳の時だから・・・』

『分かった。貴族のお抱えの奴に聞いて見るぜ』



今にして思えば、遠回りだったと云う人もいる。


モウア伯爵家に嫁いだのがお母様だ。貴族院の名簿を調べれば良かった・・・

でも、平民では見られない。私が行けば、問い合わせをされてお父様に捕まったかもしれない。


それから、私はお祖父様に会うことが出来た。



『エルダ!』

『お祖父様・・』



何でも、社交界では私は性悪娘で弟妹を虐めていたと話題だったそうだ・・・

お祖父様も孫が10人いて、私まで気が回らなかったそうだ。


しかし、私への多額の援助をしていたそうだ。家庭教師、使用人のお給金、馬車まで・・・それは全て義弟妹、贅沢な生活費に使われていた。


『許せん』


お祖父様は告発し裁判を行った。結果は。

お父様とその女は債務奴隷、義弟妹たちは修道院に送られ厳しい教育を受けるそうだ。


もう、奴らはどうでも良い。それよりも・・・


『エド・・・は?』

『彼は・・・』


裁判の結果、判明した。彼の行為は善行だが犯罪でもある。

主家に対する反抗・・・死刑だわ。



『お祖父様、エドを助けてぇ!私、何でもする。エドの善行を告発するわ』

『エルダ・・・彼の願いはエルダの幸せだ。今、出て行ったら見世物になる・・今なら令嬢Eになっている』


『いい。私、さらし者になる!』


願いがかなわずそれから8年経過した。来年、学園を卒業だわ。


今、私は貴族学園のカフェにいる。



『は~い、エルダ嬢、笑ってよ。美人が台無しだよ。相席良いかな。そうだ』


思考に声が割り込んできたわ。現実に戻された。




・・・・・・・・・・・・・・




「でさ。とても良い遊園地が来ているのだって、一緒に行かない?」


移動遊園地が来ているのね。


「相席・・・許可した覚えがないのだけど」

「チィ、お高く止って!」





私には婚約者はいない。グレーシア侯爵家の養子、お祖父様の子になった。

笑わずの令嬢との二つ名があるが、私に声をかける殿方が後を絶たない。




ヒソヒソ~。


「うわ。笑わずのエルダ嬢に撃沈したぞ。今月何人目だ」

「言わないの。幼少の頃、悲しい体験をして、笑えなくなったそうよ」



「なるほど、私が行こう」

「アルディ・・」



また、殿方が来た。あれは・・・誰だっけ?


「相席、良いかな」

「断るわ」

「なら立ったまま話すよ。領地経営科の主席さん。次席の私にご教授願いたいものです。ナンバーワンツー同士、仲良くしよう」

「次席・・・誰かしら」

「なっ・・・まあ、良い。君の事を調べたよ・・」



平民騎士に救出されたそうだね。しかし、彼のやり方は宜しくない。

僕だったらもっと上手くやる。

証拠を集めて、貴族院に訴え。優秀な弁護士を雇って保護命令を勝ち取れるよ。



思わず眉間がピクッとなった。



「彼は馬鹿だよ。命令不服従で処刑されたって聞いたよ」


何が分かる。裁判の間、私は病死として殺されたかもしれない。かも?かも?かも?

一秒だってあの家にいたくなかった。今にしては危険だった。


「・・・話はそれだけかしら?」


「主席と次席がカップルになったら無敵ではないか?」



その時、王太子殿下と婚約者が来られたわ。



「ちょっと、いいかな。エルダ先輩」

「アルディ先輩、エルダ先輩を借りますよ」


「はあ?王太子殿下・・・とエルフガング公爵令嬢・・」



一年生だけど生徒会長、婚約者も一緒だわ。

その2人の後ろに・・・彼がいた。



「エド・・!待っていたのだから!」


「どうも・・・」


あれから、エドは恩赦を受けた。

そして、王子の養育係になった。


当時の王太子殿下は、命令に反抗しても子供を助けた彼を王子の護衛騎士にしたのだ。

彼なら、決して王子を裏切らないと思ったそうだ。



笑みがこぼれる。私は笑わないのではない。

笑いたい時に笑うのだ。皆と変わらない。



「エルダ先輩、エドをお返します」

「はい、承りますわ」


腕を組みエドを引き寄せた。


エドは長年の王子殿下の養育係の功績により子爵になる。

領地付だ。



「エド、新領地は調べたわ」

「あの、エルダ、何故?」


「貴方は魔物対策の責任者よ。現場に出て欲しくないわ。怪我したら大変ですもの。あ、もちろん、何でも貴方の許可を受けるわ。使用人の面接とかいろいろやることがあるわ」


「いや、だから何で?」


あの次席はポカンと口を開けている。


「何で?こんなおっさんが・・・エルダ嬢が笑っている・・」

「ゴホン、アルディ先輩、エルダ先輩は王宮ではよく笑っていますよ」


「王宮・・・ええっ」

「父上に特別に出入りを許可されていますよ。エドとエルダ先輩は父上と母上のお気に入りです」


「いや、エルダ、就職するの?助かるけど・・・」

「フフフフ、一生就職するわ」


エドはどうも鈍い。だけど、彼の隣にいるだけで幸せだわ。




最後までお読み頂き有難うございました。

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