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妻との出会い

妻との出会いは高校2年生の春の事だった。

遅刻しそうになり、俺はパンをくわえて家から走り出した。

そして……

パンをくわえていたことで、路上に落ちていたバナナの皮に気付かず、

思いっきりこけて腰を打った。

そこで

「だいじょうぶですか?」

と声をかけてきた他校の女生徒が彼女だった。

俺はその純白のパン……ではなく、

心配そうに見つめるその瞳にゴールを決められた。


「たぶんあなたと友達になれたら大丈夫です」

と答えた。

その突拍子もない答えに

「なんですか。それ」

と彼女は笑った。

俺は2点目を入れられた。

俺たちは連絡先を交換し、それから連絡を取り合うようになり、

俺は彼女会いたさに遅刻することはなくなった。


それから3か月後、俺はプロポーズをした。

海外留学があった時のたまに貯めていたお小遣い10万3800円をはたいて。

指輪は買った。

彼女は

「そんな大事なお金を私の為に……、それは重すぎだよ」

と答えた。


俺は

「ウエイトトレーニングだと思ったら、俺は苦でもなんでもない。君が好きだ。取られる前に決定的なゴールを入れる。それがプロだ」

と答えた。


「本当にサッカーバカだね。でもそんな君が好きだよ」

と彼女はOKをしてくれた。


俺の親はなんとかOK貰ったが、彼女の両親のガードは鉄壁だった。

俺は何度も彼女の家に出向き、両親の前でリフティングを繰り返した。

計100日間。

リフティング詣出を繰り返した。

100日目。

彼女の父親が折れた。

「だめだ。最近こいつのリフティングが夢にまで出てくる。母さん諦めよう。ここまでしぶといんだから、プロでもやっていけるよ」

と言った。

「あなたが良いのなら私は構いません。私は初めからあなたに合わせていただけですから」

と彼女の母親は言った。


そして両親の許可を得て、俺たちは籍を入れた。

ただまだ未成年という事は、週に1回、交代制でお互いの家に行くという通い婚生活となった。


……


異世界に来て、妻に再び再開した。

俺は彼女の名前を呼ぶ。

当然ながら人違い。

彼女は言った。

「真羅奴名彦様、私は昆布売りの行商人の一人娘都昆みやこと申します」


聞けば、他の地域で昆布売りをしていたが、同業者の安売りで生活できなくなり、こちらの地域に移住してきたという。


都昆はとても優しい顔をしていた。

彼女とまた夫婦になりたい。

そう思った。


俺は、真羅家の昆布の仕入れ先を調べた。特に仲が良いわけでも、価格的に安いわけでもなかったので、都昆の家の昆布を仕入れることにした。


彼女の父は言った。

「真羅家にお引き立ていただけましたから、これで腰をすえてこちらで商売ができます」


「そうか。それはよかった。で……そちの娘の都昆であるが、俺と夫婦にしてくれないか」

と俺は言った。


「いえいえ。そんな滅相もございません。私ども平民とは身分が違いすぎます。夫婦とかではなく、側へ仕えさしましょう」

と彼女の父は言った。


そして彼女もこれに承諾をした。



……

私は昆布売りの行商人の一人娘都昆。


父上様は最近、頭をかかえておられる。

同業の昆布売りが安売りを始めて、売上が下がっているとのこと。

そこで

「これからどうすれば良いか有名な占い師に見てもらってきておくれ」

と頼まれた。


その占い師の家は、あちこちにしめ縄がされた、怪しげな家だった。


「ごめんくださいまし」

私は声をかける。


すると誰もいないのに、扉がスーッと開いた。


「そこに書いてある金額をその籠に入れな」

と中の少女は言った。


私は用意したお金をそこに入れた。

籠はカラクリのような仕掛けで動き、水の中に沈んでいった。


「あの水に入っていきましたが……」

と私は言った。


「当然だろ。悩みを持つ者の銭は黒い煙をまとっている。それを直に触ると、霊力が触るわい」

と少女は言った。


「そうですか。それで実は相談がございまして」

と私は言った。


「もう。今の土地では商売はできぬ。移住することだ。北が良い。おや。あんた前世の縁のある男がいるよ。その男が商売もなにも全部面倒を見てくれる。ただな。この男とあんたは悲しい別れ方をしているから、せいぜい愛しておやりよ」

と少女は言った。


「そうですか。で……」

と続きを聞こうとすると、私はもう家から出ていた。

そして先ほどまであった入り口がまるで見当たらない。

私はキツネにつままれたような気持ちで、その占い師の家をあとにした。


それから、父上様に事情を伝えると、では明日から北に向かおうと、急ぎ荷物まとめて、移住先を探すことが決まった。


そうして、そこから2週間がたち、運よく真羅奴名彦様と出会い、側に仕えることになりました。


旦那様にお会いして、

たしかにあの少女の言うように、前世の縁があると思いました。

旦那様のあの目。

あれは確かに私を知っているような目でございました。

しかし、旦那様は知っておられても、私は別人。

いや前世で縁があるのなら、別人でもない。

どうなのでしょうか。



ただ変なことと言って、煩わしい女だとも思われたくなく。

旦那様が口を開かれるのを待とうと思います。


そういえば、悲しい別れ方をしていると少女は言ってたな。

せいぜい愛しておやりよと。

私に人を愛することなどできるのでしょうか。


恋も愛も知らぬ。

娘に……。


………


都昆が側に仕えるようになって1週間が過ぎた。


俺は緊張をして、抱きしめる事も、手を握ることもできない。

話をしてもぎこちない。


前世では普通だったことがまるでできない。


妻はハグが好きだった。甘えただった。頭を撫でられるのが好きだった。


前のようにコミュニケーションを取りたいと思うほどに、この世界と前世の異世界ギャップが頭をもたげる。


側に仕えるものをハグするのはどうなのか?

頭をなでるのは、良いのか悪いのか。

目上の者としての威厳は。


どうでも良い事ばかりにしばられ。

身動きが取れなくなっていく。

『呪縛』

その言葉が頭のなかをぐるぐると回った。


彼女は料理がとても上手だった。

虫料理は始めは戸惑っていたが、すぐに慣れていた。

彼女のおかげで虫料理への苦手さがなくなった。


そういえば、妻も料理が得意だった。

茶碗蒸しや、たまご豆腐、点心などの蒸し料理が得意だった。


まさか、蒸し料理の得意な妻が、異世界で虫料理をしているなんて。

ギャグにしか思えない。


そんな事を考えていて、今日も手すら握れなかった。


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