ここからが本当の勝負だ!
俺は目を閉じ、空を仰ぎ祈りを捧げる、何時も祈るのは、せいぜいご飯を食べる時ぐらいだが。
そしてゆっくりと、顔を上げて目を開き、目の前の光景を目撃する。
「ヴァァァーグァァーギャルル⋯ウァウァハアゲホゲホ」
その光景に俺は悲鳴を上げ、悶え苦しむ。 あまりも、直視できない現実に目がくらむ。
ついには跪き、床に拳をぶつけて、嗚咽することしかできない。
「ウェン~クェン~フェン⋯シクシク」
俺が耐えがたい絶望に打ちひしがれているとき、不意に部屋のドアが開いた。
「さっきから、うるさいんだけど、しかも気持ち悪いし⋯うぁ鼻水垂れ流してるじゃん」
「クゥウェ~グァ~エーン」
「だからささっとその気持ち悪い発声をやめろって言ってるのわかる?」
「ふん⋯お前にはわからんよ俺の悲しみなど、まぁ⋯時がくればお前にもわかる時が来るかもな」
「悲しみって、どれどれ⋯なんだガチャすり抜けただけじゃん、そんなことで奇声だしてるの?バカじゃん」
「お前に何がわかる、俺は今日この時を開催告知されてから、ずっと気になって夜しか寝れなかったんだぞ!」
「ツッコミを入れて欲しいの?⋯はぁ、もうどうでもいいから、私は今、勉強してるから、邪魔しないでよね」
そう言ってアイツ⋯俺の妹は部屋から去って行く、まったく可愛げのないやつだ。
やっぱり現実よりゲームに限る、俺は再び画面に目を向けた、画面には俺の「推し」がいる。
ニャンニャンアドベンチャーズ⋯通称ニャンアドは主人公がマスターになり猫を操作して冒険していくゲームだ。最初は、素っ気ない猫が、主人公と冒険を重ねていくうちに絆を深めついには、頭を撫でる事が出来る様になる。 あいつには猫の可愛いさがわからないに違いない。そうに決まってる。
現実に戻ろう、俺は残りの石を眺める。 くそ、あと20蓮くらいしか出来ないじゃないか!
俺は絶望に視界が染まり、声から漏れそうになる、駄目だ、声をだしたら現実を受け入れられることになってしまう⋯別にまた奇声を発したら、妹に怒られるとか気にしている訳ではない、そんなことない。
俺は僅かな希望を胸にボタンをタップする⋯ハズレだ、もう一回⋯ハズレた。
「もう駄目だ終わりだすまない、俺に力がないばかりに⋯後一回だけか」
俺に残されたのは一回分のみ⋯そうだ、まだ一回、もう一回、あるぞ行ける、俺の戦いはこれからだ。
「俺は諦めない最後までな、ふふ⋯どうしてだろうなこんなに力が湧いてくるのは!もうなにも怖くない!俺は最強なんだ~。誰にも負けない!無敵だ無敵~わぁははは『うるさい』はぶぅ」
「静かにしろって言ったよね、まったくもう聞いてる?⋯こいつ気絶してる、声かけただけなのに。どんだけ自分の世界に入っているのよ。 ふ~ん後一回残ってんじゃん、かわりに引いたろ~うん当たったね!なんか喋ってるね
これってツンデレってやつ?悪くないわね。なになに⋯ニャンニャンアドベンチャーズね、早速ダウンロードしよっと。 待ってね、可愛い猫ちゃん」
ゲーム画面には、ツンツンした猫が画面の主人公に向かって戯れる画面が流れているのだった。