三つ子の魂は百までだから諦めて
母がモデルです。
子どもの頃からずっと、同じことで怒られていたそうです。
お外は雨が降っている。雨粒がガラスにタンとあたる。小さな粒がノロノロと下に落ちる。それが合わさり大きな粒になる。大きくなったとたんに一気に速くなる。いっくら見ててもちっともあきない。
タンタンタン。つつつー、つつつー。タンタンタン。つつつー、つつつー。
「ちょっと! ちゃんと聞きなさいよ! 」
大きな声で怒られてはっとした。目の前には、となりの席の女の子。次の授業は工作室だと、教えてくれてたみたい。教室を見渡せば、いるのはその子だけだった。
走る女の子の後をついていく。またやっちゃった。
『来年は、3年生になるんだからしっかりしなさい! 』
ってお母さんに叱られたばっかりなのに。
あ~あ、とため息ついたら始業のベルが鳴った……
ピンポンという音で、うたた寝から目が覚めた。夢だったのかと安堵し、玄関に向かう。
扉を開けると、夢に出てきた彼女が立っていた。但し、今の私と同じ初老の姿で。
「久しぶり~。ちょっと、なんで驚いてるの? この間の電話で今日行くって言ったでしょ! まさか、また聞いてなかったの? 」
友達になって60年。三つ子の魂は百までって言ったら怒られるかな。
彼女の説教を聞き流しながら、私はそんな事を考えていた。
母曰く、『自分の友人は、面倒見がいいお姉さんタイプがやたら多かった』だそうです。
そういえば、亡くなった父も世話好きでした。