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三題噺もどき3

自転車

作者: 狐彪

三題噺もどき―よんひゃくはちじゅうさん。

 


 ジメジメとした空気が町を包んでいる。


 昨日からの雨はあがり、曇ってこそいるものの外出に支障はない。

 これなら図書館も今日行ってしまえばよかったと少々後悔している。

 まぁ、でも昨日のうちに行ってしまえたから、今日は別の買い物ができるわけだし。

 昨日のことをどうこう言ったとろで何もできまい。

「……」

 念の為、折り畳み傘なんかも持ってきてはいるが、使わなくて済むことを祈っている。

 何年も前に買ったやつだから、なんというかあまり状態が良くない。

 使えるかどうかと思って家を出る前に開いてみたんだが、まぁ何とも。

 今度時間があるときにでもどこかに買いに行こう。スーパーとかにあればそれでもいいんだけど。急ぎではないので、追い追いだ。

「……」

 今日は食料を買いに外出していた。

 この間必要最低限は買ったが、あまりにも最低限過ぎて心配になってきたので。

 丁度雨が上がったようだし、この際に多めに買い物をしておこうと思って出てきた次第だ。

 というか、昼食を食べようと思って、何か作ろうと思ったら必要な材料があまりにもなくて……今日のはシソがいるのに、冷蔵庫に入っていなかった。シソはそれなりに好きで使うので買い置きしていたはずなのだけど……いつ使い切ったのかも記憶にない。

「……」

 過去の記憶をなんとなく探りながらも、スーパーへの道を進んでいく。

 相変わらず道路を走る車は運転が荒い。

 ものすごい勢いで通り過ぎ、信号が変わるギリギリまでその音は止まらない。

 なんというか……まぁ、当事者になるつもりはないのでいいけど。それで事故を起こして困るのは自分なのにどうしてあんな運転ができるんだろうな。

「――!!」

 ……それは自転車も同様だと思うんだが。

 歩いている人間の真横を、そんな勢いで通り過ぎないで欲しい。

 一瞬本気で事故った感があって、内心ドキドキしまくっている。心臓に悪い。

「……」

 よく見れば、その自転車の進む先にある歩行者用信号が点滅していた。

 それに捕まりたくないから、スピードを上げたのだろう。

 よく聞くママチャリと言われるタイプじゃなくて、もっと細身のやつ。あのタイプに乗れるの凄いなあと個人的には思うのだけど、その運転をされてはカッコよさはない。

 せっかくいいもの―かどうかは知らないが―に乗っているんだから、それに見合う丁寧な運転をしたらいいのに。もったいない。

「……」

 しかも結局間に合わずに赤信号で止まってるし。

 なんなんだ……他人を危険に巻き込むのはほんとによくないと思うが。

 急がずに素直に安全運転して、信号で止まってればよかったのに。

「……」

 赤信号待ちの間に、私も追いつき信号が変わるのを待つ。

 よく見れば先程の自転車の運転者は、耳にイヤホンをつけていた。

 待ちの間は携帯をいじる人のようで、今は手元の携帯を眺めている。

「……」

 危険な運転をしている上に、イヤホンをして耳を塞いで……これで事故を起したらだれの責任なんだろうな。

 人との接触なら自転車だろうか。車との接触なら車か?

 そのあたりは理不尽すぎて何ともまぁという感じだ……たまに見かける。自転車の方が信号無視をして、車が急ブレーキをかけるやつ。

 自転車の方は気づいていないのか、そのまま進んでいくけど。車の方はもう、可愛そうで仕方ない。そりゃ驚くよなぁ。

「……」

 この辺りはただでさえ運転が荒い人が多いのに……よくそんな危険な状況に身を置ける。

 まぁでも、歩行者でもたまにいるからな……こんな危険な道路を横断歩道もないところで渡ろうとする変な勇気は私には無い。

 だからまぁ、死にたくなければ変なことはせずに、当たり前のルールを守ればいいのだ。

 それができない人が事故を起しててんやわんやしているだけだ。

「……」

 歩行者信号が青に変わる。

 自転車はイヤホンをして、携帯をいじっているからか、気づいてない。

 一番前にとまっているので、他の人から変な目で見られていることも気づいてない。

 ついさっきまであんなに大急ぎでいたくせに、何だこの自転車。

「……」

 と、横目で見ながら横断歩道を渡る。

 さて、さっさと買い物を済ませて、帰らないといつ降りだすか分からない。

 案外降らないかもしれないが、降った方が面倒だ

「――!!」

 気持ちを買い物に切り替え、横断歩道を渡った先の歩道を右に曲がろうとした瞬間。

 今度は目の前を先程の自転車が通り過ぎた。

 ぶつかりかけたと言うのに、その自転車は何食わぬ顔で歩道の先へと進んでいった。

 ほんっとに、心臓に悪い。バクバク言ってる。死ぬかと思った。

「……」

 信号が変わったことにギリギリで気づいて、大急ぎで来たんだろうけど。

 いや、私もあの自転車がいるのに注意力散漫だったかもしれないが。

 危険にも程がある……どうしてこの短時間でこんな思いをしないといけない。

「……はぁ」

 ドクドクという心臓を落ち着けるために、なんとなく溜息を吐く。

 ただ買い物に来ただけなのに……。まったく……。

「……」

 はぁ、もういい。

 もう居ないのに恨みつらみを考える方が馬鹿げている。

 さっさと買い物を済まそう。







 お題:素直・自転車・シソ

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