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後編

次の日、いつもの迷宮の入り口にて、僕たち双柳は集まっていた。


「よし、みんないるな。それじゃあ最下層の一歩手前まで跳ぶ。少し準備をするから待っていてくれ」

コウげさんはそういうと、荷物の中から札を一つ取り出して、呪文を唱え始める。



「よう、ギメイ!そんな緊張するなよ」

「フルキさん…。それはちょっと厳しいですね…」

そう言って愛想笑いを浮かべる。


「心配すんなって。当たって砕けろだ」

「…はい。がんばります…!」


少しだけ緊張がほぐれ、手の震えがおさまる。



「よし!それじゃあ跳ぶぞ!」


コウゲさんが叫ぶと、札は光り輝き僕たちの視界を白く染め上げる。


白色がなくなり、現実の景色が見えたそこには、先ほどの蔦のかかった寺院のような建物はなく、蔦に覆われた石造の広い空間にいた。

どうやらうまくいって、迷宮(ラビリンス)最下層の一歩手前のモンスターがいない空間に跳べたようだ。



「それじゃあ、最下層へと行く前に、能力が発動するか確かめるぞ」



来た。遂に。

ここで上手く発動で来なかったら、僕はこのパーティをやめさせられる。


「わかりました」

そう言い、僕は座り込み、坐禅をくみ、一つ息を吐く。そして吸う。

集中。



そして、僕は“魔剣製作”を発動させる。

手のひらに幾何学的文様の魔法陣が出来上がる。


ここまではいつも通り。ここからだ。

いつもは魔剣はできず、魔法陣が霧が消えるが如く消えてしまう。







しかし、今日は違った。

いつもは消えていってしまう魔法陣から、剣が作られていく。


剣の先、刃、そして柄。順に出来上がっていき、ものの数秒で短剣が出来上がった。




「…成功…したのか…?」

「…ほんとにできちゃったよ…」

「…本物か…?」

「含まれる魔力の量がとてつもなく多い。確実に魔剣よ」

「…やった…!やった!やりましたよコウゲさん!!」


嬉しみのあまり思わず飛び跳ねてしまう。

みんなはとても驚いている様子だった。ポカンと口を開けて、パクパクと動かしている。


「よくやったぞ、ギメイ!さすが俺が見込んだだけの男だ!」

1番初めに正気に戻ったフルキさんが僕を抱きしめてくる。


「すごいわね…。よくやったわねギメイ」

マイさんも僕を褒めてくれる。先輩に褒められるとちょっと恥ずかしいな…。



「…まさか…、本当にうまくいくとはな…。人生何が起こるかわかったもんじゃないな」

「それで…コウゲさん。僕はこのままこのパーティにいてもいいですか…?」

「ああ、もちろんだ。それに、もとよりお前をパーティから外すつもりはなかったしな」

「へ?」


え?僕を追放する気はなかった?じゃあ何であんなに毎日愚痴を…。



「ああ、そのことだけど、フルキはそんなこと言うやつじゃないんだよ。さしずめ、お前にプレッシャーを与えて、能力を発動させようとしてたんだろ?」

「…ううむ。流石にお前にはバレてたか」

「わかるって。何年の付き合いだと思ってるんだ?どうせ、心を鬼にしていってるんだろうなーって思いながら毎日聞いてたぜ」



そうだったのか…。あれは僕にプレッシャーを与えて、それで能力が発動すれば儲け物と考えての行動だったのか…。結構心に効いたんだけどなぁ…。


「毎日すまなかった。それで、これからも俺たちのパーティにいてくれるんだな?」

「はい、もちろんです。ここ以外でこれだけの給与をもらえる仕事は知らないし、僕としてもとてもありがたい話です!ぜひ、お願いします!」

「ああ!その、新しく作った魔剣で、敵を薙ぎ倒してくれよな!」

「………できますかね自分に…。まだ、剣術も発動してはいないですし…」

「できるだろ。いや、できるよ。もし無理でも、できるまで待つさ何年だって。それに、剣術がなくてもお前には今まで培ってきた経験と技術があるじゃないか。それを磨いて、使いこなしていけばいいよ」

「…ありがとうございます!これからも精一杯がんばります!」


「頼むぞ!」「頼むわよ」「頼むぜ!」



パーティの皆から頼られる。頑張るしかないねこれは。せっかくこれまで待っていてくれたんだ。しっかりと役に立つために頑張ろう…!



そう決意を固め、作りあげたばかりの魔剣を強く握りしめる。

魔剣は輝き、僕に頑張れ、と語りかけているかのようだった。


****


「さて、ギメイの能力も発動したわけだし、迷宮の最下層に行くぞ」

「コウゲ、いつも通りの戦闘体型でいいんだよな?」

「ああ。俺が盾で奴らの攻撃を受けて、その隙にお前らが攻撃をする、で行くぞ」

「わかった」「わかったわ」「わかりました」



返事を聞き、コウゲさんは最下層へと続く扉へと手をかざす。


古びて、蔦が絡まる扉は大きな音を立てて、ゆっくりと開く。

意外にも、扉はあっさりと開いていき、その奥には暗闇と、光る無数の瞳のみがはっきりと映る。



「くるぞ…!」

その言葉で僕らはそれぞれの武器を構える。



「ガルァ!!」

突如、1匹の灰色の狼に似た何かが暗闇から飛び出してくる。


それをコウゲさんは難なく、身の丈以上の盾をうまく使い、狼の突進を止める。

「今だ!ギメイ、やれ!」


その言葉を聞き、僕は足に力を込め、床を蹴る。



狼との距離を詰め、魔剣を振るう。

短剣のように短い魔剣を、狼の心臓目掛けて振りかぶる。



振るわれた魔剣は意図も容易く狼の皮膚を裂き、心臓を貫く。

狼の脈動は次第に収まり、息を引き取る。


「よくやったぞ、ギメイ!」

コウゲさんがそう言い、その体の横を光の筋が通り過ぎ、奥の暗闇を明るく照らす。


途端、爆発したかのような轟音と、光、衝撃波があたり一体を襲う。


マイさんの魔法だ。

先ほどの攻撃だけで終わらず、すかさず、2発、3発と打ち込んでいく。




奥に潜んでいたナニカは魔法を喰らい、ボロボロの残骸がこちらまで飛んでくる。

残骸は血液と、得体の知れない臓器をぶちまけて散らばる。



「さすがだな、マイ。お前がいるだけで、俺たちの仕事が一気に減る」

「はいはい、お世辞はいいから、さっさと武器を構えなさい。生き残った強い奴が1匹、こっちにきてるわよ」

「そうだな。俺もぼうっとしてないで、働きますか」


フルキさんはそういうと、背中に背負っていた槍を取り出し、構える。

それと同時、奥の暗闇からどでかい竜が出てくる。甲殻は光沢を放ち、口元から見える牙は如何なるものでも噛み砕くほどの大きさ、迫力がある。




「わおわお!こいつぁ大物だぁ!まさか、竜に出会えるとは」

「はいはい、そんなこと言ってないで、気をつけなさいよ。どれくらい強いかよくわからないんだからね」

「ああ、大丈夫だって。俺がいるんだから」




途端、フルキさんが霞んで見え、消える。


「ギャァァ!!!」

竜が吠え、空気がビリビリと震え、こちらへと突進してくる。




「仲間を狙うなんてよくないなぁ。ぶち殺すぞ」


見失っていたフルキさんは、僕らと竜との間の空中で姿を現し、槍を上段に構え




「ふん!」



振るう。





バゴオン!!!と轟音が鳴り響き、土煙が上がる。


土煙が消えたそこには、大きなクレーターと、頭が無くなり、無様に地に体をつける竜の残骸が残っていた。



「ふう。結構硬かったな。久しぶりに本気を出したな」

僕には到底倒せそうもない竜を倒したのに、さほど疲れていないように見える。

フルキさんは化け物だな、と再認識させられるほどの迫力があった。


「さすがだな。馬鹿だが力はあるやつだな、お前は」

「ええ。やっぱりフルキはばけもんね」

「おいおい、そんな目で俺を見るなよ。ギメイもそのこの世のものではないものを見るような目をやめろ」

「いやいや、あんなん見せられたらこんな目を向けるのも仕方ないでしょう?」

「はあ…。まあいいや。まだもう少し残ってるみたいだしな」



竜が出てきた場所から、残っていたと見られる奴らがワラワラと出てくる。

ざっと30匹は見られる。


「…さて、ギメイ。剣術を発動させてみろ。今のお前ならできるだろう」

「…はい…!」



メンバーの一歩前へ出て、魔剣を構え、意識を研ぎ澄ましていく。



「”剣術“横一文字!!!」



剣術を発動させる。いつもは何も起こらないが、今日は違う。


発動と同時に振るった魔剣から、斬撃が飛び出し、残っていた奴らを1匹残らず、真っ二つに切り裂く。




斬撃は切り裂くだけでは物足りず、そのまま壁にぶつかり、壁に切れ目がつく。


「…うまくいったようだな」

「すごいな。初めて使った割にはめっちゃちゃんと使えてる。よくやったぞギメイ!」

「さすがね。フルキが見込むだけはあるわ」

「ありがとうございます!」


メンバーから称賛をもらい、嬉しくなり、頬が緩む。


てか、なんでこんなに上手く能力が発動したんだ?

今まで、一回も発動しなかったんだが…。


「ギメイの魔力の動きを見ていたけど、発動しなかった理由が大体わかった気がするわ」

「ほんとか、マイ?」

「ええ、大体の予測だけど…。多分、能力が発動しなかった理由は、魔力が全て蓄えられていたからなんじゃないかしら」


魔力が蓄えられていた?なんなんだ?


「多分、魔剣を作り出すためには大量の魔力を必要とする。それは能力の説明として合ってるわよね?」

「はい。説明には、大量の魔力を消費し、魔剣を作り出す。と、書かれています」

「で、魔剣を作り出すための魔力が足りなかったから、能力に魔力が蓄えられていったんじゃないかと思うの」

「能力に魔力を蓄えるって、そんなことできるのか?」

「う〜ん〜。わからないわね。魔剣を作り出す能力なんて聞いたことないからどうかわからないけど、多分これで合ってると思うわ。これなら、魔力はあるけど、能力が発動しない。っていう理由になると思うわ」


なるほど。難しいが、能力を発動させるために魔力が足りない。だから、能力が魔力を蓄えるために回復していく魔力を全て回収していた。だから、魔力はあるけど能力が発動しなかった、ってことなのか。


「ほお〜。そんなことがあるんだな。知らなかったぜ」

「あくまで推測よ。これが合ってるとは決まってないからね。まあ、だから、“剣術”を発動させたいなら、“魔剣製作”を発動させなければできると思うわよ。まあ、魔剣をもう一本作りたいってならお好きにどうぞだけど」

「で、どうするんだ、ギメイ?」

「僕は、もう一本は必要じゃないので”魔剣製作“を封印します。封印すると言っても使わないだけですけど。まあ、皆さんが必要なら作りますが」


僕はもう決めている。自分に魔剣は2本も必要ない。

それなら剣術を使って、メンバーの役に立った方がいいだろう。


「そうか。まあ、お前の好きなようにすればいいと思う。これからもよろしくな」

「頼むぜ!ギメイ。お前には俺を超える存在になってほしいしな!」

「あんたがいれば、私たちのパーティも強くなりそうね。よろしく」


「こちらこそ、よろしくお願いします!」


ずっと、この場所で働きたい。そう思う。




「よっしゃ!今日はもうたくさん敵を倒したし、その素材を売れば今日の稼ぎになるし、帰ってパーティだ!」

「おいおい、勝手に決めるなよ」

「まあまあ、いいじゃない。せっかく、ギメイが正式にメンバーになったわけだし、今日ぐらいいいじゃない。明日から頑張ればいいのよ。ねえ、ギメイ?」

「僕はどちらでもいいですよ」

「……はあ………。仕方ねえなぁ。そいじゃ、素材を回収して帰ってパーティと行きますか…!」









これからも、頑張ろう…!そう思いながら、メンバーのみんなと笑い合う。

いつまでもこの楽しい時間が続くわけではない。

でもこの時間を大事にしたい。そう考えて、僕は今日もメンバーたちと迷宮へと行くのだった。

はい。終わりです。

内容はカスですが、文章は頑張りました。

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