寄生花との戦い
「さあ行くぞ!!」
パラサイトフラワー(長いから寄生花と呼ぶ)に向かって突進する。まずはその首切り落としてくれる!
「キシャァ!」
だが寄生花もそうやすやすと刈らせてはくれない。蔓を殺到させ、花の前に展開された魔法陣から石礫を発射してくる。
「《瞬歩》!【剣撃】」
《瞬歩》で石礫を回避して戦技で伸ばしてきた蔓を数本まとめて切り裂く。そのままさらに突っ込んで茎に一撃いれるも、少し食い込んだ程度で止まってしまう。
クソッ、さすがに一撃とはいかないか。茎から剣を引き抜いて、迫りくる残りの蔓を避けて後退する。
「キシャァ!キシャァ!!」
おーおー、怒ってる怒ってる。ってまずい!心の中で寄生花のことをあざ笑っていると、花の周りに大量の魔法陣が展開され始めた。
あれはまずい!直ちに回避!それか妨害!
魔法の発動を止めようとするが蔦に加えて今度は地面から伸びてくる根によって足止めされて進めない。
「面倒な!!」
根の強度一本一本はそこまででもなく少し力を入れれば引きちぎれる程度だが、それが何本も集まるといささかきついところがある。
この調子じゃ間に合わない!仕方ない。一度後退し、そのまま寄生花の周りを回り始める。
「キシャ?キシャァ!?」
あっ、結構これ有効かもしれない。寄生花が私の走る速度についていけてないわ。
結局私を捉えきれずに魔法が発動し、見当違いの方向に大量の先端が尖った石が通過して行った。
当たったらたぶん死んでたけど、これなら遅るるに足らず!
寄生花は疲れたようにぐったりしているし今がチャンスだ!!
即座に蔓を切り落とし本体に向かって突進する。寄生花はそれでも抵抗しようとしたが…無駄ァ!
伸ばしてきた蔓はズタズタにし、絡みついてくる根は無理やり引きちぎる。最後の手段とばかりに寄生花は直接嚙みつこうとしてきたが、これぞ私が狙っていたものだった。
「はっはっは!それじゃあ…さよなら!!」
噛みつこうと開かれた口に剣を突き入れ、そのまま振り下ろして花を真っ二つにして、ついでに茎からも切り落とす。
「キシャ…キィ…」
一応植物だからか頭だけでもしばらくは動けるのだろうか?まあでも、とどめはきっちり差しといたほうが良いだろう。
転がった頭を踏みにじり、残った茎を輪切りにする。そうしてやっと寄生花はポリゴンとなって、後にはいくつかのドロップアイテムが残された。
《パラサイトフラワーの茎》
パラサイトフラワーの茎。繊維質で丈夫ではあるが火と乾燥に弱い。
《パラサイトフラワーの蜜》
パラサイトフラワーの蜜。とても甘い香りを漂わせており、ただそこにあるだけで周囲の蟲系モンスターを誘引する効果がある。
⚠︎注意:現在の容器は中身がなくなると消失します。
《パラサイトフラワーの葉》
パラサイトフラワーの葉。乾燥させたものは強烈な香りを発し、虫よけの効果がある。
《パラサイトフラワーの蔓》
パラサイトフラワーの蔓。乾燥させれば繊維を取り出すことが可能。
《パラサイトシード》
パラサイトフラワーの種。
生物の体内に入ると栄養素や水分、魔力を吸収して急速に成長する。現在は休眠状態。殼はとても硬いが熱に弱い。十分に加熱することで食べられる。
へぇ、結構いろいろあるな。特にこの《パラサイトフラワーの蜜》とかいい匂いがしておいしそう。
ふむふむ。周囲の蟲系モンスターを誘引………まずくない?
急いでドロップアイテムを時限ポーチに突っ込んだが時すでに遅し。後ろと前から大きな羽音が聞こえ始め、バスケットボールくらいある蜂が広場に突っ込んできた。
パラサイトフラワーめ、余計な置き土産をしよって!それはそうと何が来た!
《ワーカービー》
ハニービーの労働階級、主に巣の掃除や幼虫への餌やり、蜜や花粉の収集を役目とする。毒針は持っているが一度刺すとそのまま一緒に内臓も抜けて死んでしまう。
このくらいならたぶん返り討ちにできるだろう。まだ対応できる範囲でよかった。
まずは愚直に突っ込んでくる1匹目の蜂の顎を剣の柄でかちあげると同時に、低空飛行で突っ込んできた2匹目の蜂の顔面を蹴りつける!
そのまま《剣撃》を使用し瞬時に怯んだ2体目の羽を切断!
そして…おっと危ない3体目が後ろから来ているとりあえずは羽を狙って……ヤバイ、四匹目も来やがった!直ちに脳内で考えていた予定を破棄!退避!
後ろに飛びのいて、距離を詰めようとする三匹目に剣を振り下ろして両断する。これで残ったのは四匹目だけだ…どこ行った?逃げたのか?
とりあえず羽を切られた二匹目を貫き、周りを見渡すも四匹目はいない。うーん、これがリアルの蜂だったらどうするか…アッ。確か蜂って仲間を呼ぶことあるよな。ということはつまり…
「退避ィ!!」
こんなところにいられるか!とっとと逃げるぞ。ドロップアイテムを次元ポーチに放り込んで速やかに退散!!
◆◆◆◆◆◆
幸いにも素早く退散したおかげで、特に何かが追いかけてきているような感じはしないな。
だがあたりがそろそろ暗くなってきているので街に戻ろう。
そう思い森の中を進んでいると急に横の茂みから真っ黒い物が飛び出してきた!咄嗟に剣で突進を受け止めて蹴りつけたが、そんなにダメージは入ってなさそうだ。
何が飛び出してきた?とりあえず《鑑定》してみよう。
《シャドウウルフ》
黒い毛皮と赤い目を特徴とする夜行性の狼。黒い毛皮を生かして闇に溶け込み集団で狩りをする。
確かにこの色の狼が夜に襲ってきたら脅威だが、今はまだ夕方だぞ。そのおかげで私もはっきり敵の姿を認識できているし。それにこの狼ところどころ怪我してるな。群れから追い出しでもされたのか?
とりあえず剣で斬りつけるが避けられる。そして飛びかかってきた狼を逆の手で持っていた剣の鞘で引っ叩き地面に叩き落とす。そのまま足で踏みつけ、剣を腹に突き入れて深々と切り裂く。
「キャウン!!!」
よし、これで仕留めた。そう思った時、後ろから唸り声が聞こえてきた。
「まじぃ?」
振り向いた私が見たものは二頭の狼だった。あぁ、一応仲間はいたのか。ただこの二体もボロボロで一頭に至っては片方の前足が無い。それでも2対1はやりたく無いんだが。
「「グルルルゥ」」
残った2頭はこっちを警戒して近寄ってこない。そしてしばらく睨み合った後、身を翻して森の中に消えていった。
「ふう。緊張した。」
《老影狼の毛皮》
年老いたシャドウウルフの毛皮。
黒く厚い毛皮は着たものを寒さから守り、闇に溶け込ませてくれるだろう。
しかし、老いのせいかあちこち毛が抜けて色が薄くなっているので、使うなら少しばかりの修繕が必要だろう。
《老影狼の牙》
年老いたシャドウウルフのかつては鋭かった牙。
傷つけた敵に追加で微量の出血を付与する。
うーん、微妙?やっぱりさっきの狼は年を取って群れから追い出しでもされたのだろう。
そのせいで質が微妙なものだけだ。
おっと、こうしてはいられない。早く街に戻らねば。
◆◆◆◆◆◆
特に何もなく街に帰ることができた。もちろん、途中でホーンラビットやらスライムやらと何度か遭遇したが、たいした苦労もなく倒すことができた。にしても楽しかった!!