初めての世界
目の前が光に包まれ視界が開けるとそこは街の広場だった。
広場には小さいながらも立派な噴水があり中世風の街並みが広がっている。
「おお…これはすごい」
視覚のリアリティもさることながら、肌に感じる風や噴水から飛んでくる水飛沫の冷たさまで感じられる。ここまでリアルだとは思わなかった。
さてと街の名前は確か街の広場の噴水に記載している筈、えーっとどれどれ…『アインス王国ノースエンド』か。
とりあえず街の名前も分かったことだしステータスも見ておくか。
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Name:『ロゼ・ドリーマー』
性別:男性
所属:無所属
メインジョブ:無職
サブジョブ:無職
種族:人族
種族レベル:Lv1
状態:正常
ステータス
STP:0
HP:750/750
MP:750/750
STM:500/500
STR:60
AGI:60
VIT:60
DEX:50
LUC:50
MGR:60
MTR:60
スキル
SP
《呪術Lv1》
《剣術Lv1》《暗器術Lv1》《瞬歩Lv1》
《毒調合Lv1》《薬調合Lv1》《鑑定Lv1》《魔力制御Lv1》《隠密Lv1》《気配感知Lv1》
所持金
1000ルナ
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ふむ、私が今いるのはアインズ王国とやらか。そしてこの1000ルナは初期資金のようだ。
まあまずは、歩きながらスキルの確認でもしつつ街の外に出てみるか。
まず《呪術》。これは魔法の一種であるらしく相手の妨害や弱化に特化している。魔法とは違いMP以外にコストを支払う必要があり、使用に制約があるものやレジストされた際に自身に反動が生じるものもある。
現在私が使えるのは【筋力低下】、【速度低下】【防御低下】の3種類。すべて敵一体の能力値を下げる呪術で、それぞれSTR、AGI、VITを低下させる。
次は《剣術》だ。このスキルはスキルレベルに応じた剣でのダメージおよび動きに補正をしてくれる。
そのおかげで剣道の類を一度もやったことがないものでもそれなりの動きができるようになっている。
ちなみにに武術系のスキルには戦技というものがありMPを消費することで技を放ったりダメージを増加させることができる。ただし一部の戦技はMP消費なしで使え、使うものも基本的には魔法よりはMPの消費量は少ないらしい。
剣術の場合は【剣撃】と【抜剣】の2種類。前者はMP消費と引き換えに短時間の斬撃ダメージ量増加を、後者は剣を抜いた時にMP消費なしで少しだけSTRをちょっと強化してくれる。
そして《暗器術》。これも《剣術》とおなじく暗器のダメージと動きに補正をしてくれる。戦技はMPを消費して一定時間自分の立てる音を消す【静撃】と、MP消費なしで相手の死角からダメージを与えたときにダメージを微増させる【背後斬り】の二つ。
最後に…おっともう門についてしまった。さてと、ちょうど門番らしき方がいるので話しかけてみよう。
「少し尋ねたいことがあるのだが、今少々お時間をいただけるかな?」
「おっ、新たな異邦人か、俺はフロイドという。以後よろしくな!それで聞きたいこととはなんだ?」
「ああ、この辺りの地形と出るモンスターを知りたいのだが。」
「そうか!この辺りには草原が広がっていて、草原では主にスライムやホーンラビットやはぐれゴブリンが出る。
西の方には森があって浅いところではゴブリンやその上位種が出るが、深いところに行くとキラービーやフォレストスパイダー、オークなどさまざまなモンスターが出てくる。まぁ、夜は別だがもっと詳しいことを知りたかったらギルドの資料室か図書館に行けばいい。
見たところアンタは異邦人の中でも来たばかりのようだから森の深いところには行かない方がいいだろう。
いくら異邦人が死んでも蘇るとはいえあまり死にたくはないだろう?」
「ああ、ご忠告痛み入る。ところで異邦人とはどのような存在か君は知っているのか?」
「ん?ああ、知っているとも、異邦人はこことは異なる世界から来た存在で死んだとしても蘇る、常識だぜこんなの。うん?何か変なところでもあったのか?変な顔してるが。」
「ああ、いや少し考え事をしていてね。大したことでもないよ。」
ふむ、プレイヤーの存在がゲームの根幹設定に盛り込まれているのか。
あとNPCがとてもリアルだ、まさに他のプレイヤーと話しているかのようだ。さすがこのゲームの特徴に挙げられるくらいである。
さて、話も終わったことだし少々戦闘と洒落込むとするか。
その後草原を歩いていると動く薄い青色のゼリー状の生物が蠢いているのを見つけた。これがフロイドの言っていたスライムだろう。
《スライム》
草原地帯などに生息するごく一般的なモンスター、体内のコアが本体でコアが周りのジェルを《念動》で動かすことで移動する。
進化先が周囲の環境で変化するので進化先がとても多い。
とりあえず倒してみよう。そう思いソードステッキで体内に浮かんでいるコアを刺すとあっさり切れてジェルが力を失ったように広がっていった。
案外弱かったな。そしてスライムのジェルの中に小さな瓶のようなものが見えるので拾ってみた。
小さな瓶の《鑑定》結果はこれだ。
《スライムジェル》
スライムの体を構成している粘液、目に入れると激痛が走る。
⚠︎注意:現在の容器は中身がなくなると消失します。
よし次はホーンラビットとやらを探してみるか。
◆◆◆◆◆◆~ゲーム内時間10分後~
ようやくホーンラビットらしきものを見つけた。
すぐ見つかるかと思いきや案外時間がかかってしまったものだ。
ちなみに見た目は3センチほどの角が生えた唯の兎だ。
《ホーンラビット》
頭に角がついている兎、草食性だが気性が荒く人が近づくと突進してくる。ホーンラビットの角は人の皮膚を貫くには十分なくらい鋭く、刺さった後暴れるので傷口が広がる。刺されたら場所にもよるが大出血を覚悟せよ。
何この物騒なウサギ。
そう心の中で呟いているうちに向こうも私に気づいたようなのでそろそろ殺してしまおう。
ホーンラビットが瞬時に私に向かって突っ込んできたので半身になって回避し、通り過ぎた瞬間ケインソードを一閃!だが浅く、そのまま方今転換して突っ込んでくる。
やっべ、避けれない!でもそんなときにはこのスキル!
「《瞬歩》!」
スキル《瞬歩》、このスキルは瞬時にスキルレベルに応じた距離を移動するスキルである。
だから移動先の間に障害物や段差があるとつまずくか、高速で障害物に叩きつけられることになるが、このような草原ではその真価を遺憾なく発揮してくれる。
瞬時にホーンラビットの横に移動した私の目に映ったのは私を見失ったホーンラビットだ。即座に接近しケインソードを突き刺し捻ってホーンラビットを仕留める。
【プレイヤー『ロゼ・ドリーマー』の種族レベルが1から2に上がりました】
【各種ステータスが上昇します】
【スキル・ステータスポイントを獲得しました】
【熟練度が一定に達しました。スキル《剣術Lv1》が《剣術Lv2》になりました。】
出せなかった残りのスキルの説明を書いておきます
《気配感知》
スキルレベルに応じた広さの自身を中心とする球状の範囲に存在する生物の位置を『気配』として感知する。オンオフ切り替え可能。
《隠密》
《気配感知》による察知を阻害する。相手の《気配感知》のスキルレベルが高ければ高いほど効果は減少する。
《瞬歩》
スキルレベルに応じた距離をを瞬時に移動する。リキャストは長め。
《毒調合》
毒を調合する。調合セットの使用が前提。
《薬調合》
薬を調合する。調合セットの使用が前提。
《鑑定》
ステータス、物質などの説明を閲覧できる。スキルレベルが高いほど詳細な説明が出てくる。
《魔力制御》
魔力を制御する。魔法系スキルの使用に必要。