さあ、始めよう
時は2XXX年人類は大きな枷である寿命を超越した..はずだった。
確かに寿命を延長させる効果のある物質は発見された、それだけを見るならばとても喜ばしい事だろう以下の四つの欠点さえ除けば。
①:寿命を伸ばすためには遅くとも20代後半には摂取していないといけない。
②:寿命の伸びには個人差がある、中にはほとんど伸びなかった人も寿命が予測不可能なほどほど長い人もいる。
③:この物質を摂取すると長い時間をかけて生殖能力と性欲の減退が発生する。
④:そもそも老化が遅くなるわけでなく寿命が伸びるだけ、とどのつまりジジイでいる期間が延長される。具体的に言うのなら60代後半~80代前半くらいで老化?が止まる感じだ。
なので免疫も体力も落ちた体で長い時を過ごすことになる。
これらの欠点が発見されたことにより現在では処方は禁止されている。
ああ、申し遅れた。私は永瀬 零という、上記の欠点が発見される前に不用意に挑戦した結果、自身の適合率が不幸にも高く病気や事故の類いさえなければ最低でも150歳、そしておそらくそれ以上に長く生きられるという絶望の宣告を受け、現在89歳の老人だ。
ここ60年ほどはあちこちに旅行に行ったり、様々なことを学んでみたり、挑戦したりしたが、最近はやる事がなくなり、体も衰えてきたため自堕落な生活を送る事になっていたがつい先日、5、6年前旅行に行ったときにできた友人から、退屈な日々を打開するための救世主と言っても過言ではない物をもらったのだ!
それは友人曰くつい数ヶ月ほど前に開発されたVRゲームらしく2・3ヶ月前に発売されてからずっと人気が途絶える事がないらしく、とても興味深い。
今までVRゲームは友人と何作かやってきたものの確かに面白いものはあったが、大抵のものはつまらなかったり、リアリティに乏しかったりしたので楽しみだ。
そうそう、確か名前は『Fictional world online』通称『FWO』だ。
このゲームの特徴としてよく挙げられるのは
①:ジョブやスキルの数が通常のゲームとは一線を画す量存在し、中には特定の条件を満たさないと就任できない隠しジョブやそのジョブのみの固有スキルも存在する
②:五感つまりは味覚、触覚、嗅覚、視覚、聴覚果ては痛覚まで再現されていて仮想現実とは思えないほどのリアリティ
③:AIを使用することで人と同じように思考し受け答えをするNPC
④:人間だけでなくエルフ、ドワーフなどの人以外の種族などがあり種類も豊富
⑤:ゲーム内ではプレイヤーの精神に影響を与えないのに時間が三倍速となっている
そして最大の特徴にして物議を醸し批判と賛成と歓喜を雨霰と受けた点は『なんでもあり』である!
つまりゲーム内でプレイヤーキル通称PK、マナー違反の代表例となるモンスタートレインや初心者狩りや狩場の占領、人としてやってはいけない拷問の類やチートなど、通常のゲームだったら即座に通報される類の行動が全て許可されている。許可されてないのは個人情報の暴露くらいだ。
ただし、何でも自由にできるかというと、運営の言い分をざっくりまとめると『自分がすることには責任が付きまとうことを忘れるな、ついでに言うならばチートはできるものならやってみろ』とのことだ。
実際マナー違反のプレイヤーは衛兵などのNPCなどに倒され、PKなどのプレイヤーには賞金がかけられPKKや賞金狩りのNPCによって倒されている。
またチートを使ったとしても即座に対処されて法的措置を取られるらしい。
それと、運営の頭のネジは粉微塵になっているようだ。友人曰く『時間も痛覚も存在する仮想空間を作り出し、それで使用者の精神になんの異常も与えないという凄まじい技術力を体験できる』とのことだ。
これを持ってきた友人がいうには『これを知らないと流行に遅れるよ、おじいちゃんや大丈夫かね?』ということだ。
全くもって近頃の若いものは年寄りをなんだと思っているのか。そう伝えると『残り寿命が八割以上残っている方は年寄りって言わないんだよ。OK?』と言われてしまった。返す言葉もない。
さて、いよいよゲームを始めようか。
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