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三毛猫な俺と魔女の母2

作者: 胡桃リリス

猫の日ということで、今年も猫の話です。よろしくお願いいたします。

 俺には妹がいないが、それっぽい奴ができたことがある。


 あれはまだ俺と母さんが異世界で旅をしていた頃。

 とある件に首を突っ込んだ際に、母さんが保護した女の子。


 猫の耳と尻尾、夜目が効く金色の瞳を持つ、猫の獣人エール。

 身寄りがなかった彼女は、行方不明の両親を探すため、町の人たちの反対を押し切って一人旅をしようとしていた。

 そこで母さんが、問題に関わったのだから、彼女の面倒は、彼女が両親と会えるまで私が見る、と言い出した。


 問題の最中、母さんの実力を間近で見ていた町の人たちは、母さんの人柄も信じてエールを預けてくれた。

 エールは、母さんにとても懐いていたため、すぐに話はまとまり、彼女を新たな道連れにした旅が始まった。


 ただ一つ問題だったのは、


「みー、待ってぇ」

「やだよ、お前、抱き枕にしてくるじゃん!」


 エールが、俺を抱き枕にしていたことだ。


 言うのを忘れていたが、異世界で俺は三毛猫の、それも子猫の姿になっていた。理由は知らない。事実最強の魔法使いになった母さんの使い魔という立ち位置だった。


 さらに母さんが俺をベッタベタに甘やかしてくるというか、子猫姿なので余計だとは思うが、抱いてくる。

 十四歳なんだよ、俺……と何度言ったことか。いや、もういいんだが、と諦めはした。元の世界でもあんまり変わらないからだ。


 それはさておき、エールも母さんの真似をして俺をことあるごとに抱きかかえようとしたりしてくるし、さらには寝る時に抱き枕にしてくる始末。

 野外では防寒の魔法のおかげで寒さは問題ないが、安全面の問題ということで俺と母さんは身を寄せ合うようにして眠っている。エールが入った後は、彼女も含めてだった。


 で、気が付いたらエールは俺を抱き枕にしていた。

 母さんはほほえましいとみていたが、俺からすれば暑苦しいし、何よりも、同じ年ごろの女の子に抱きしめられるのが、とても気恥ずかしかった。


「むぅ、みーはいじわる」

「いじわるじゃなくて、もう少し、こう、な?」


 そうやって、なだめてやる姿を見て、母さんがまたのんびり笑っている。

 それが、エールという「新しい家族」が増えてからの、よくある旅の光景だった。




 そんな、異世界の思い出を、元の世界に戻って来て親父に語っていたら、背中に重みと体温を感じた。

 振り返ると、案の定、猫耳を頭に乗せたエールがふにゃふにゃした顔でもたれかかって来ていた。


「みー、ひまー、遊んでー」

「いや、俺、この後宿題が」

「宿題よりも、エールと遊んでよー」

「わかったわかった、終わったら遊ぶ……って何笑ってんだよ」


 親父がにこり、なんて優しいものではなく、面白いものを見つけて笑いをこらえている顔をしていたのでねめつけた。


「流石は俺と母さんの子だ! すっかりモテモテだな!」

「これはそういうのじゃねーよ!」

「あらあら、だめよ。そっと見守ってあげなきゃ」


 母さんが親父を諭すように止めてくれるが、見守るというフレーズから母さんも俺たちのことをそういう風にみているということがわかった。

 何故だ。

 こいつはただ、子猫姿の時の俺を思い出してじゃれてきてるだけなのに。


 なんて思っていたら、頬に温かさと湿気、それからすぐにひやっとした感覚があった。


「みーはエールのだから、ほかの女の子に目移りしたらダメ!」

「なっ?!」


 頬をなめられたこと、そしてそれを母さんと、よりによって親父に見られたことに気が付いた俺は、思わず子猫の姿になって、とりあえる親父の顔面に猫パンチを叩き入れておいた。


「こうなったのも全部親父のせいだかんなー!」

「あっはは! 息子の反抗期がいだだだだ」

「ダメよみーくん。照れ隠しをするならエールちゃんに思いを伝えないと」


 ダメだこの二人。親父は異世界で最強だったから俺の猫パンチ程度、実はダメージ皆無なのはwかあっているし。

 母さんは何やら頓珍漢というかみょんなこと言ってるし。


「みー、私のこと嫌い?」


 何よりこいつの悲しそうな顔と目は、嫌だ。


「嫌いじゃない、が……」

「エールのこと、好き?」

「うっ……」


 そんなキラキラとした目で見つめてくるな、顔近い、いい匂いするし!

 あーもう!


 こいつは妹みたいな存在、妹!

 絶対に、惚れてるわけじゃない! そう、家族の絆で俺はこいつを大切に思ってるだけ、そうだろう!


「あぁ、息子が今日も葛藤している」

「青春ねぇ」

「見てないで助けてくれ、二人とも」


 バレンタインデーの時期も過ぎて、二月も後半に入って少し経った、そんなある日の、俺たちの他愛もない風景だった。


 そしてこれを、知り合いの異世界仲間の何人かに母さんが話したようで、うち一人には彼の仕事の話のネタにされ、、一人には酒の肴にされてしまった……。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


去年は23日投稿でしたが、今年は無事?22日に投稿することができました。

2時22分には間に合いませんでしたが、それはまた別のイベントに活かすことにします(何を?


それでは、よい猫の日を。

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