赤龍と死神
遅くなってしまいました!
誕生日に現を抜かしておりました……
いびつな建物は石で作られていた。不揃いでありながらも絶妙なバランスで積み上げられた建物には誰もいなかった。室内には木製の椅子と机が1つずつあるだけ。明らかに誰かが住んでいるのだろう。
しかも、肉体的にも精神的にも相当強いに違いない。でないと、この地獄界で家を作ろうなどと言う余裕は持っていられない。
何キロも歩いたため少し休みたいと思い、椅子に腰かける。しかし、木製の椅子は体重をかける過程でミシミシと音を立て壊れてしまった。
「いって―。なんだよ、もろい椅子だなあ」
その時、建物の外から翼を羽ばたかせる音がした。慌てて外に出ると大きな影が地に降り立ったところだった。地獄に溶け込みそうな赤い体躯に、巨大な琥珀色の瞳。その鱗はどんな攻撃も弾くほどに堅そうで、その爪はどんなものでも引き裂きそうに鋭い。これほど威圧感のある生物もそうはいない。
「――赤龍」
そう口にした時にハッとした。赤龍の背中に人影があったのだ。
これほどの強きものを従えるとは、どれほどの存在なのだろうか。本来なら逃げ出すべきだ。赤龍を従えるほどだ、俺など瞬殺される。しかし、体は本能とは裏腹にその場を離れようとしない。
確かな恐怖と、わずかな好奇心。
せめぎ合う二つの感情はバクバクと心臓の鼓動を高鳴らせる。
そして、緊張する俺の前に一つの人影が降り立った。灰色の外套に身を包んだその人物は赤龍の顎を撫でてから、こちらへ歩み寄る。フードを目深にかぶり、顔は見えない。
「あなたは誰ですか」
その声は凜と響く女性の声だった。優しい口調であるはずなのに、そこには生気が感じられず寒気を感じるほど体を凍り付かせる。俺が声を出せずにいると、その人物は目深にかぶったフードを右手でめくった。
灰色のフードから現れた顔に驚愕した。
輝く銀髪に灰色の瞳。この特徴を持った存在を俺は知っている。
天上の世界で俺の家族を、子供を奪ったあいつと一緒だ。
「なんで死神がここにいる……」
声が震え、自分が怒っているのだと理解する。悲しみや絶望が消えても怒りは湧き上がってくる。震える拳を握りしめ、衝動的にその少女目がけて走り出す。
「うおおおおおおお!!」
しかし、少女は攻撃には目もくれず体を左右にふらつかせ、攻撃が当たるよりも早く地面へと倒れこんだ。
「へっ?」状況を呑み込めず呆然と突っ立っている俺に龍が話しかけてきた。
「おい、早く家の中へ運んで看病してやれ」
「へっ?」未だに混乱しているが、龍の声が恐ろしかったので急いで倒れた少女を抱える。持ってみると驚くほど軽く、華奢な体であることが分かった。
俺の腕の中で少女は「食べ物……なにか、食べ物を……」と口にしていた。