ポンコツ能力
書き終わった時に、文字数が少ないことに驚きます。描写が足りなさすぎるのでしょうか。
とまぁ、意気込んだわけだが。
とにもかくにも手掛かりを探す必要がある。そのためにも状況整理だ。
まず、当面の目標は地獄界からの脱出――餓鬼界を目指すことだ。だが、その手段が分からない。通常、命を落とすと、その魂は同じ世界で違う生を受ける。つまり、輪廻の枠から外れない限り違う世界には渡れないのだ。
そのため、違う世界の情報など知る由もなく、一般的に知られているのは輪廻教会が布教している聖典に記されたものだけだ。そもそも、輪廻教会とはどんな組織なのだろうか。実際のところ、前世と今世の記憶を辿ってみるが詳しい情報はわからない。
世界最大の宗教であり、六道の世界全てに存在すると言われている。あらゆる機関を抱えており、魂についての非道な研究をしていると聞くし、あるところでは各世界を自由に行き来できる方法を発見したなんて噂も聞いたことがある。さらには、あの死神たちでさえ従えているというのだ。本当に得体のしれない組織だ。
「なんだあ、どん詰まりかよー」
地を背にして空を見上げる。どこまでも赤く寂しい空。
本当に世界を渡る方法なんてあるのだろうか――そんな考えが頭をよぎる。
仮に方法があるとして、何かしら戦闘になるのだろう、たぶん。
それを考えると頭が痛い。トカゲを倒したおかげで大分レベルやステイタスは上がったが、肝心の特殊能力が悲しいほどに弱い。
ステイタスはあくまで身体的な能力値なのだ。それ自体が決定打には成り得ない。それゆえ、戦闘では特殊能力が重要になってくるのだ。特殊能力と言っても多種多様で、家事に関することもあれば、人心掌握術、商売、芸術などあらゆる分野の能力がある。その中でも戦闘系の超級能力を持てば、一騎当千――その者は英雄になれるだろう。
そう。そんな能力があれば……ね。現在の能力は「ちょっと水がいらない」と「ランダムに10m以内の空間に飛ぶ」だけだ。なかなかに心許ない能力たちである。
しかも、驚愕の事実がわかった。
目を閉じ、よくよく落ち着いて確認すると詳細が記されていた。
【ランダムウォーカーLv.3:ランダムに飛べる距離が2倍になった。そして、命の危険がある場所(地中や水中、マグマの中など)には飛ばないようになった】
戦慄が走った。
能力のレベルが見えていなかったのはいいとしよう。Lv.1だと明記されない的なあれで。距離が2倍になった。これも良しとしよう。じゃじゃ馬感は否めないが、そう大したことではない。大事なのはその後だ。「命の危険がある場所(地中や水中、マグマの中など)には飛ばないようになった」……? それってあのトカゲと戦っていた時はそういう可能性もあったってことだよな。まじで使えない能力じゃねーか! 危うく生き埋めになって死ぬところだったわ!
「だあ、どうすりゃいいんだ!」
じっとしていても考えがまとまらないので、強化された「ランダムウォーカー」で飛び回ってみた。景色が次々と変わり、視界に映るものは定まらない。何度目かの跳躍で2回連続で大きく上空へと移動した。今までとは違った景色に思わず見とれてしまう。
意識を戻し落下する最中、数キロ離れた荒野に建物が立っていた。まさかこんな地獄界に? なんて思ったが、どうやらそこに行くしかないらしい。
とりあえず、どうすれば無事に着地できるのだろうか。
次回、第一村人発見!かもしれません。