リリムの気持ち
リリム=ヴェレイ=レギアルメナスは今、風呂に入りながら今日の出来事を整理している。今日は本当に色々あった。いやまぁ、異世界人を勇者として召喚し、協力を依頼するというのが今日の目的であったので色々と処理に追われるようなことが起きるだろうとは思ってはいたのだが、それにしても色々起きすぎだった。
というのも、召喚した人物が非常に変わった人物だったことが主な原因だった。
まず自己紹介の途中に熟睡しだしたことから始まり、唐突に可愛いなどと口説かれ、召喚され戦力として利用されることに特に不服はないと言い、あろうことか・・・け、結婚まで申し込んできた。
そこまで考えたあたりで、リリムは自分の顔が熱くなってきていることを自覚する。思い出すだけでまた恥ずかしくなってきた。
(一体どういうつもりであんなことを・・・ていうかあんなにカッコいい人にあんなこと言われたの初めてだし・・・)
奏翔が聞いたら盛大に喜びそうなことを考え出すリリムだが、そもそもそれは初めて会った時から思っていた。
召喚の儀を始めて、最初は不安しかなかった。それもそのはずである。リリムからすればどんな人物が召喚されるか分からず、もしかしたら召喚直後に激昂して暴れだす可能性だってあった。
だがいざ召喚が済んでみるとそこに立っていたのは線が細く中性的な顔立ちの男性だった。
その男性を見た時、不覚にもリリムはドキッとしてしまったことを覚えている。端的に言ってストライクゾーンど真ん中という感じであった。まぁ、これではいけないと思い直し喋り始めたらいつの間にか寝ていた残念なイケメンではあったのだが。
(しかも結婚だなんて・・・)
そう。一番の問題はそこなのだ。ハッキリ言って最初はからかわれているのだとしか思えず不信感しかなかった。だが、結婚を申し込んできた瞬間や要所要所で想いを直球でぶつけてくる時の態度はとても嘘をついているとは思えなかった。
しかしいくら容姿が好みの男性で、その想いも本物だからといって出会ったばかりの男性と婚約するなどリリムには考えられなかった。OKを出すにしても、もっとちゃんとお互いのことを知ってからだろうと思うし、そう簡単に手篭めにされるつもりはない。彼自身が言っていた通り、すぐに答えを出すつもりはなかった。
OKを出すことを前提に考えてる時点で答えは決まっているようなものなのだが、リリムはそれに気づいていない。チョロい。
その後も話し合いの最中に奏翔に言われた口説き文句を思い出しては悶えていると、お風呂から上がる頃にはすっかりのぼせてしまうリリムであった。