プロローグ
「はぁ~・・・ ねむい・・・」
そこは日本。
とある街の中を一人の青年がダラダラと歩いていた。
青年の名は蓮生 奏翔。
彼は現在大学から帰る途中なのだが、その服装は上半身はシャツの上に何やら黒いパーカーを羽織り下半身はジャージという、どう考えても身なりに気を配るような者がする格好ではない。
一応大学は私服可の所に通っているのでこの格好でも問題ないと言えばないのだが、やはり周りから見ると多少、、、いやかなり浮いていた。
奏翔の周りの人間はいわゆる「リア充」という者たちばかりで構成されており、奏翔以外の者は皆華々しい大学生活を送っていると言っても過言ではないだろう。
何故奏翔は周りの者達のように大学生活をエンジョイしようとしていないのか?それはひとえに「興味がないから」という理由に帰結する。
「オシャレ」も「ノリの良い人間関係」も「賑やかな大学生活」も奏翔には興味がなかったのだ。
では奏翔が興味を持つものとは一体何なのか?それは・・・
『漫画』と
『ゲーム』と
『ラノベ』である。
ここで誰もが気づくことであろう。
そう、彼「蓮生 奏翔」はオタクというやつである。
生粋の・・・とまでは言わないが、オタクはオタクである。
実はこの奏翔、顔は中性的なジャニーズっぽい造形であり、確実にイケメンという部類に入る容姿の持ち主なのだが、リア充のノリに興味がなく(というよりアウェイ感からついていけず)またリア充の女子側からしてもイケメンではあるが「うーんオタクかぁ」となってしまい男子からは「アニメより現実の女の子のほうが良くね?」と言われ見事にぼっちが完成したのだ。まさに宝の持ち腐れである。
さて、一通り彼のことを説明したところで話を戻そう。
前述した通り彼は現在下校中であるが、その足取りはおぼつかなく目は今にも閉じてしまいそうだ。
原因は明らかだ。
奏翔は前日に徹夜をしていた。
これが勉学に勤しんでというならばクソ真面目な学生ということで済むのだが、勿論そんなわけがない。
次の日は1限から出なければならないというのに漫画、ゲーム、ラノベの趣味フルコンプして気がついたら朝という定番中の定番のポカをやってしまったのである。そう、彼はアホなのだ。
「ねむい・・・ もうこうなったら家についた瞬間寝てやる。玄関だろうがどこだろうがそのまま寝てやる・・・!」
謎の宣言をしながらマンションのエレベーターに乗り込む奏翔。
奏翔が住んでいるのはマンションの5階であり、エレベーターから割りと近くの部屋なので移動もラクラクであった。
ゾンビのようにノロノロと歩いてようやく家のドアの前までたどり着くことが出来た。あとは鍵を開けてドアを開ければそこは『家』だ。
「ククク・・・ 俺は・・・俺は寝るぞっ!!ジョ○ョーーーーーーーー!!!!」
眠気のせいか確実におかしなテンションになってしまっている憐れな青年が一人。
幸い周りに人はいないようで正気を取り戻した後に身悶えするハメにはならなさそうだ。
そうして、奏翔はドアの鍵を開けて力強くドアノブをひねりドアが開くと同時に『玄関』の中に踊り入っていった─────。