それが可能な一つの存在、創造主だ
「さて、貴様らも気づいていると思うが、我を見てどう思った?」
「それは、、」
悪。そう、憎悪の塊?負のエネルギー?
困っている人を見ると、ほんの少し感じたあの嫌な感覚をとても大きくしたようなオーラ。
しかし、だからこそ、その知的なしゃべりにギャップを感じる。
「そう、我は貴様の感じたとおり、負のエネルギーから出来ている。
嫉妬、憎悪、怒り、悲しみ、、
しかし、それは貴様ら人間が生み出した負のエネルギーなのだ」
「な。なんだって、、?」
これだけの負のオーラが、この魔王が作りだしたものではなく、人が作り出したもの!?
自分と同じく、アリサとマリヤもそれは受け入れがたいことのようだった。
「そ、そんなわけないじゃない!」
「そうよぉ!そんなものが人類が生み出したものだなんて、、!」
「不思議に思わなかったか?
この世界、国がたくさんあるというのに、戦争、争いがひとつもない」
「戦争?」「争い?」
アリサとマリヤは首を傾げた。え?知らないのか?
魔王が説明する。
「争いとは、ある人が他の人を殺して財産を奪うことだ。
そして、それが国同士になったものが戦争。もうこうなると、殺したくないものも同じ国ならば人殺しに参加しなければならない」
「そんなこと、、!」
「ひどいっ!」
二人は憤っている。
そう、魔王の説明に間違いはない。
が、しかし、僕は二人の反応に違和感を感じた。
「ちょ、ちょっと待って!?二人共、もしかしてこの世界に戦争というものはないのかい!?」
「え?何を言ってるの?
人類は考えるための頭と知恵があるのよ?
そんな不条理なことをするなら、自分を高めたほうがいいに決まってるじゃない!」
「そうよ!魔法や理論を極めていけば自分で生きられるのに、、。
もしそんなことをして繁栄した世界があるとしたら、滅びる運命にあるわ!長続きなんてしないわよぉ!」
「そうか、、」
前世で漫画の歴史本などを読んでいたから知っているが、元の世界ではそれが当たり前だった。だがここではそうではないらしい。
なんとなく落ち込んでいると魔王が、びっくりするようなことを言ったのだ。
「そこの勇者は転生者のようだな」
「な、なぜそれを!?」
「長く魔王をしているとそういう者と会う機会もある。つまり他の世界から来た者だな」
「つまり、ユーは別世界から来た王子様だった、、?」
「かっこいい、、」
「そ、そうなの、、?」
僕達が惚気ていると、魔王は咳払いをして話を続けた。
「多くの転生者たちから話を聞くと、他の世界では戦争や争いがが当たり前だという。
だが我も何万年も生きているが、その間この世界で戦争などという話は聞いたことはない。
その理由を探ってみたら、どうやら我が人類の代わりに負のオーラ、ストレスをあつめているからだということが分かったのだ」
「ストレス?」
「精神的な乳酸のようなものだ。
イライラ、絶望、悲しみ、、。
それがあると精神が汚染されてさっき言った『争い』をするのだ」
「そんなっ!?」
「私たちはそんなことしないはずよぉ!」
二人が反論するが元々この世界の住人ではない僕はなんとなく腑に落ちていた。
そうか、、この世界の住人が戦争をしない理由。それは優秀だからというわけではなく、ストレスを魔王が回収しているからだというのか、、?
しかし、魔王が皆のイライラを集めている、、。
「それって、、」
まるで、魔王が世界の掃除屋のような役割をしている。
「そう、数百年単位の人の負のエネルギーが集まり、そこで毎回のごとく私が生まれるのだ。
そして勇者に私は討伐される」
まさか、僕は、勇者は、、この世界の、、!
「そう、ゴミ処理役、というわけだな。
我がストレスというゴミを一つに集めて、貴様、勇者がそれを消滅させる。
勇者のレベルアップの力はそれ自体はストレスを打ち消すものとはなりえない。
勇者の『希望』こそが人類の闇を打ち払うためのツールなのだ。
そのための敵、そう物語を盛り上げるためのモンスターや守護者、そして最終目的の我という存在、、。
ゆえに、我は、勇者と同じく無くてはならない存在。
倒されなくてはならない存在なのだ」
「っ、!!」
それが本当ならば、なんて皮肉なのだろう。勇者と同じくらい重要な善人を、悪人として扱っているということなのか、、!
しかし僕は魔王のそのやけに断定的な口調が気になった。
倒されているのならば、毎回魔王は別人なのではないか?
でも先ほどから魔王はまるで長く生きているみたいなことを言っていた。
まさか、同一人物だとでもいうのか?!
「魔王は、、その役目を何度も、、」
「そう、このサイクル。何万年もの時間、、。
数百年感覚で繰り返し、それを数百回以上繰り返しているのだ」
途方もないスケール。だが、そんなことを繰り返して何になるのだろう?
「だが、止めることはできぬのだ。この世界のシステムによって私は生まれるのだから」
そう、法則とかさっき魔王は言っていた。
「魔法陣、そこの魔法使いのほうが詳しいであろう?
世界の龍脈や川、地形による魔法陣によって負のエネルギーが集まり、自動的に、いや強制的に我は生まれるのだ。
そして、ご丁寧にこの城、我を勝手に崇め奉る守護者たちもな」
「信じられないわねぇ、、」
マリヤは首を傾げる。
「マリヤ、魔王の言ってること、どう思う?」
「うん、理論的には可能なのぉ。理論的にはぁ。
だけど、そのような世界規模とも言える魔法陣を作ることは不可能よぉ。
地脈なんてどうやって操るというのぉ?」
しかし、魔王は言った。
「だが、可能な存在が一人いる」
「それは、、!?」
「そう、この世界を作り出した創造者だ」




